中国の「真珠の首飾り」戦略(その2)――主な「真珠(海軍拠点)」の紹介
前回、中国の「真珠の首飾り」戦略について説明したが、今回は、この戦略に基づき展開している主な真珠の「珠」――海軍拠点――について簡単に説明する。
☆ グワダル港(パキスタン)
中東からアジアへ向かう船舶の多くは、ホルムズ海峡を抜けた後、すべてグワダル港の南約74kmの海域を通過するので、同港はホルムズ海峡の出入りを制する戦略上の要点である。中国がグワダル港を軍事拠点化すれば、シーレーン防衛だけでなく制海権・海上優勢確保の橋頭堡としても重要な役割を果たす。一方、インドや日本などは、石油輸入のためのシーレーンを脅かされることになる。
また、中国は、陸路石油などを新疆ウイグル自治区やチベット自治区に送る鉄道と石油パイプラインを建設する計画についてパキスタンと協議中。
☆ カラチ港(パキスタン)
中国海軍にとってカラチは最も寄港回数の多い港だ。また、カラチには中国から引き渡されたフリゲート艦が3隻配備され、4番艦は中国支援の下でパキスタンが建造を担当するなど、関係を深めており、カラチは中国の「真珠」としての有力候補。
☆ ハンバントタ港(スリランカ)
同港はスリランカ有数の大規模港で、その沖合を大型タンカーだけでも1日に約200隻が通過するシーレーンの要衝。
2008年より第1期工事が始まり、第3期工事までが予定。全てが完成すれば南アジア最大の港となる。建設は中国の企業が請負い、総工費の85%は中国からの支援。中国軍艦艇も燃料補給や修理に利用できるような整備拡張工事が進められており、2022年には完成予定。
☆ チッタゴン港(バングラデシュ)
中国にとって、バングラデッュはミャンマー同様陸路経由で、インド洋へのアクセスを確保するとともに、対インド戦略上で重要な国。
チッタゴン港は、バングラデシュ国内最大で、世界でも有数の天然の良港。バングラデシュは、同港の軍事関連施設の改修支援の代償として中国海軍の施設を受け入れ、同港の利用を認めた。
2009年、チッタゴンからミャンマーを抜け、中国南部の雲南省・昆明を結ぶ900kmにおよぶ高速道路建設について、中国・バングラデシュ・ミャンマーの3カ国で合意。
☆ シットウェ港(ミャンマー)
シットウェは、深水のある港を備えた海上通商の拠点。同港は、中国からインド洋経由で中東と繋ぐシーレーン防衛の橋頭堡として活用できる。中国は、ミャンマー軍事政権に対して武器輸出を行うなど、軍事関係を強化。
シットウェ沖に海底ガス田が発見され、全量が中国へ輸送されることで合意済み。中国は、この海底の天然ガスに加え、中東・アフリカからの天然ガスと石油を、同港から約1,956km伸びる石油パイプラインで雲南省・昆明までの運ぶ計画。
☆ チャウピュ港(ミャンマー)
チャウピュは、中国にとってインド洋戦略の拠点としてだけではなく、インド洋と中国内陸部を結ぶ物流の拠点としても重用。中国とミャンマーは、の共同開発で深海港、工業団地、雲南省昆明に向けた石油・ガスパイプライン敷設などを共同開発中。ガス用パイプラインは既に2013年7月に完成し天然ガス供給を開始、原油用パイプラインも間もなく完成予定。
☆ チャンギ海軍基地(シンガポール)
シンガポールは国家そのものの位置が、直接マラッカ海峡を制し、南シナ海にも近い戦略的な要衝。チャンギ海軍基地のバース長は全6.2kmと長く、空母も接岸可能。
中国とシンガポールは両国海軍の交流や寄港に関する防衛協定を結んでおり、多国間演習IMDEX-07への参加(2007)とアデン湾での海賊対処任務からの帰国途上(2009)などを含め、中国海軍の艦船はチャンギ海軍基地へ4度寄港している。
一方、米国はチャンギ海軍基地の利用を保証する米‐シンガポール間の覚書(1990年締、1999年改訂)中国よりも親密な関係を築いている。
中国・同海軍としては、巻き返しを図っているところで、今後、海軍艦船のチャンギ海軍基地への立ち寄りが増える見通し。
(おやばと掲載記事)