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本当のところ新型コロナウイルスはどれだけ問題なのか(スウェーデンの医師の見方)[1]

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著者Sebastian Rushworth, MDの承諾を得和訳

はじめにお断りしておきますが、本稿は、スウェーデン国民でありストックホルムにある大病院の救急病棟で勤務している医師である私の経験に基づいて書かれており、科学的裏付けに基づくものではなく事例報告と言うべきものです。多くの人々に知られているように、スウェーデンは新型コロナウイルスの流行に対しておそらくは世界でも最も緩やかな対策を行ってきました。他の国と違い完全なロックダウンを行いませんでした。不要不急でない商業活動も営業を継続し、人々は依然と同じようにレストランやカフェに行っていました。子供たちは通常とおり登校し公共の場でマスクをする人もほとんどいませんでした。

3月中旬、新型コロナウイルスはストックホルムを嵐のように襲いました。ある日私はいつものように救急外来で、虫垂炎や腎結石の患者を診ていました。翌日にはそれら通常の患者はいなくなり、病院を訪れる全ての患者は新型コロナウイルスの感染者によって占められるようになりました。どんな疾患でやってくる患者も、検査するとすべて新型コロナウイルス陽性でした。鼻血で受診する人も新型コロナウイルス 陽性でしたし、胃痛で訪れる患者もそうでした。

その数か月後、すべての新型コロナウイルスの患者は消えてしまいました。新型コロナウイルスの流行が始まってから4か月が経ちますが、この1か月間に1人の新型コロナウイルス患者も診ませんでした。ある患者が咳や熱があるので検査をしてもいつも陰性です。感染が最も多かった3か月前は、人口1000万人のスウェーデンで、1日100人もの人々が新型コロナウイルスで亡くなりました。ところが今は新型コロナウイルスの死亡者数は国全体で毎日5人程度であり、引き続き減少傾向にあります。新型コロナウイルスに感染して死亡する人々において、感染から死亡までの時間は概ね3週間ありますが、このことを踏まえると、今はスウェーデン国内に新型コロナウイルスの感染者はほとんどいないことになります。もし、感染者の0.5パーセントが死亡する(これは実際より高くみつもっていることは後で述べますが)としたら、3週間前には毎日1万人中1人が感染していたことになりますが、これは極めて小さい数字です。

人口1000万人のスウェーデンにおいて新型コロナウイルスで亡くなったのは6000人未満でした。この国の毎年の死亡者数は約10万人です。新型コロナウイルスで死亡した人々の70%が80才以上だったことを踏まえると、6000人の死亡者のうちかなりの人々が今年中に別の原因で亡くなったことでしょう。このことは、死亡に対する影響という点では新型コロナウイルスはとても小さいことを意味します。

以上の理由により、新型コロナウイルスを他の主要なパンデミックと比較すること、例えば1918年のスペイン風邪と比較することには無理があります。1918年のスペイン風邪では、何千万人もの死亡者が出ました。新型コロナウイルスの死亡者数がスペイン風邪の死亡者数に近づくことはないでしょう。それにもかかわらず、多くの国では新型コロナウイルスに対応するために、経済活動を全面的に停止し、子供たちが学校に行くことを止めて、多くの人々が仕事を失うことになりました。

メディアの主張によれば、抗体を獲得した人々は全体のごくわずかにすぎず、集団免疫が獲得されたというのはあり得ないとなっています。それは本当でしょうか。もしも集団免疫が獲得されていないとしたら新型コロナウイルスの患者はこの国に今も多くいるはずですが、一体どこにいるのでしょうか。そしてなぜ感染率が劇的に下がっているのでしょうか。スウェーデンの大部分の人々が今では普通の暮らしを送っており、ソーシャルディスタンスもマスク直用もしていないことを踏まえると、感染率はもっと高くなっているはずです。

感染状態を把握するために抗体検査を使うのは行うのが容易で安価だからです。実際には、ウイルスに対する防御反応の中心的な役割を担うのは抗体ではなく、T細胞です。しかし、T細胞を計測することは抗体を計測することより難しいので診療においてはT細胞の計測は行いません。新型コロナウイルスへの対応はもっぱらT細胞が担い、抗体ができなくても新型コロナウイルス感染症への免疫ができていることも十分にあり得ます。個人的には、これが実際に起こったことだと思っています。私の勤務する救急病棟の勤務者全員が抗体検査を受けましたが、陽性になったのはごくわずかでした。膨大な数の感染者と接触したにも関わらず、特にパンデミックの初期段階では感染がどの程度蔓延しているかもわからないままに誰も防護服なしで対応していたにも関わらず、このような結果だったのです。

感染してひどい症状になったり家族を失ったりした人々にとって新型コロナウイルスが恐ろしいものであることを私は否定しません。しかし、がんやインフルエンザやオピオイド乱用によって亡くなった人々の家族にとって、がん等が恐ろしいものであるのと変わりがありません。それにも関わらず、新型コロナウイルスに対する各国の対応は(スウェーデンを除いて)このウイルスのもたらす脅威の大きさに比べて、全くバランスを欠いたものになっています。

スウェーデンは一時しのぎの対策をすぐにやめることによって、短期間の間に感染の蔓延を終わらせました。いわば、バンドエイドをすぐにはがしました。その一方で、世界の他の国々は時間をかけてゆっくりとバンドエイドをはがそうとする道を選びました。この結果、スウェーデンの新型コロナウイルスの死亡率は現時点では世界でも最も高い国の1つになりました。しかし新型コロナウイルスの蔓延はスウェーデンでは終息しました。人々は通常の生活に戻り、ほとんど誰も感染しなくなっています。完全に諸活動を停止した国々は、活動を再開すると感染率が急上昇するでしょう。もしもこれが真実ならば、活動を停止する意味はありません。どの国々も結局は同じ数の死者を出すことになるからです。死亡者の総数を減らすために諸活動を停止することは、ワクチンが利用可能になるまで停止し続ける意志がある場合にのみ意味があります。それには何年もかかるかもしれません。どの国もそんなに長く待てないでしょう。

新型コロナウイルスによるスウェーデンの死亡者数は現在のところ6000人未満です。7000人を超えることはまずないでしょう。スウェーデンでは、インフルエンザの流行年[Y1] はインフルエンザで年平均700人が死亡しています。このことは、新型コロナウイルスがインフルエンザより10倍ひどいことを意味するのでしょうか? そんなことはありません。インフルエンザは何世紀にもわたって存在しているのに対して、新型コロナウイルスはまったく新しいものです。平均的にはインフルエンザに対しては、ほとんどの人は以前に類似のインフルエンザに感染したことがあるか、ワクチンを接種しているため、すでにある程度の免疫力を持っています。したがって、実際のところ、新型コロナウイルスの致死率はインフルエンザと同じかわずかに高いだけである可能性が非常に高く、これまでの違いの全ては、このパンデミックの登場時において免疫を持っている人がいなかったためです。

この結論は、スウェーデンの死亡者数を理解するのに役立ちます。ソーシャルディスタンスがもはやほとんど維持されていないにも関わらず活発な感染がほとんど起きていない水準にまでスウェーデンが達したとすれば、このことが意味するのは、少なくとも人口全体の50%(500万人)が既に感染しており免疫ができたということです。ウイルスの再生産数が2だと仮定するとこの数字は納得のいくものです。もしも感染者が5日間で2人にうつしていけば、最初の感染者がたった1人でも、わずか4ヶ月の間には、数百万人が感染することになります。もしも500万人のうち6000人だけが亡くなるとすれば、致死率は0.12%となり、昔からある通常のインフルエンザとほぼ同じになります。昔からインフルエンザのことは誰も恐れていないし、社会活動を停止したりしません。


[1] Sebastian Rushworth M.D.が書いた“How bad is covid really? (A Swedish doctor’s perspective)” を和訳した。https://sebastianrushworth.com/2020/08/04/how-bad-is-covid-really-a-swedish-doctors-perspective/


 [Y1]原文はaverage influenza year

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