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韓国の“二股外交”

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朝鮮半島の地政学第1則「大陸国家・中国への従属性」から派生する、「韓国の“二股外交”」について説明したい。

  • 朴槿惠大統領の“二股外交”

韓国の朴槿惠大統領は、米国と中国を両天秤にかけながら狡猾に“二股外交”を展開している。朝鮮戦争以来60年も続いてきた米韓同盟から少しずつ距離を取り始め、かつての敵であった中国に接近し始めている。朴大統領は中国・周主席の顔色をうかがい、米国の要求を無視するようになった。米国がこれに対して怒りをあらわにし始めたのは2013年9月のヘーゲル国防長官の訪韓からだった。この時、米国防長官は、韓国は米国のミサイル防衛(MD)システムへの参加や、米日韓の三国軍事協力体制を呼びかけた。これに対して朴大統領は、「日本の従軍慰安婦」を持ち出して、全てを断った。更に青瓦台(大統領府)は、まるで中国におもねるかのように、「米国の要請は拒否した」と内情を暴露する挙に及んだ。ヘーゲル国防長官は、“コケ”にされたのだ。

因みに、朴大統領が“エクスキューズ”として持ち出した従軍慰安婦――旧日本軍が性奴隷として約20万人の朝鮮半島出身女性を拉致、強制連行した――は、朝日新聞の捏造記事から始まった。このことは、昨年8月になって朝日自身が慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言を報じた記事を取り消し、謝罪と反省を表明し、捏造と断定された。まことに遅きに失し、国益を著しく毀損した犯罪である。

その後アメリカは、バイデン副大統領が訪韓し(13年12月)「米国の反対側に賭けるのは、いいやり方ではない」と警告し、更にケリー国務長官が「日本と韓国は歴史問題を棚上げせよ」と述べ、ストレートに「離米従中」を「反日」で誤魔化すのをやめるように釘を刺した。

  • “二股外交”の背景

韓国が二股外交を展開する背景として、筆者は二つの理由があると思う。第一は、朝鮮半島の地政学・第一則「大陸国家中国への従属性」から説明できる。第一則で述べたように、朝鮮半島は大陸国家中国への従属性が強い。このことは、前回「冊封・事大主義・小中華思想」で説明したように、歴史から見ても明らかである。しかしながら、中韓関係は朝鮮戦争の経緯から、歴史の流れから見れば例外的に朝鮮戦争以降は敵対関係にあったが、冷戦崩壊後の1992年になってようやく中韓国交正常化が行われた。

私自身、中韓関係の地政学的な従属関係の強さを垣間見る機会があった。これは、韓国国防部のある人物から聞いた話であった。防衛駐在官時代(1990年から93年)の間に韓国はソ連次いで中国と国交正常化を行った。これにより、朝鮮半島の戦略環境は“コペルニクス的変化”を遂げた。韓国は中国との国交を活用し、北朝鮮を背後から牽制する道(可能性)が開けた。しかし、大国の中国が韓国の意のままになるはずもなく、地政学的には韓国はむしろ中国の影響下に“取り込まれやすい”傾向にあり、韓国は新たな戦略環境の中で、米国と中国の間で困難な舵取りを余儀なくされることになった。

中韓国交正常化の直後に、盧泰愚政権はすぐさま、軍事同盟・外交戦略の将来のあり方について検討を開始した、という秘話を私は聞いた。韓国は現行の①米韓軍事同盟関係に加え②中国との同盟、③米、中、日を含む等距離軍事・外交関係の3案について国防部を中心に真剣に議論したそうだ。「②中国との同盟」というオプションは、地政学(大陸国家中国への従属性)と過去の中国歴代王朝に対する冊封の歴史に由来すると見られる。韓国の中国に対する思い入れの深さを窺い知るような気がした。ちなみに、検討結果は①であったそうだ。ところが、当時から20年以上過ぎた今日、朴政権は限りなく「②中国との同盟」の方向に進みつつある。

二股外交の第二の理由は、米中パワー(政治・軍事・経済の総力)バランスの変化である。日本・朝鮮半島を含む北東アジアは「昇る中国」と「沈む米国」の狭間にある。米中のパワーの均衡点は下図のように徐々に東に移動していると見られる。米国は財政赤字削減の一環として、5年間で約20兆円以上を削減することになると見られる。一方の中国は、過去20年以上にわたり軍事予算を2桁の割合で増やしている。

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この結果、図のように米国と中国の軍事バランスの均衡点は、東に移動しつつある。冷戦時代頃まで、パワーの均衡点は朝鮮半島の非武装地帯(DMZ)付近にあったものが、中国の台頭とともに東に移動し、やがて釜山、日本列島(第一列島線)と移動していくだろう。その結果、まず韓国が中国のパワーが米国よりも上回る圏内に入るだろう。2010年に起こった、韓国海軍哨戒艇の撃沈事件やヨンビョン島砲撃事件などは、朝鮮半島においては既に米軍よりも中国軍のパワーのほうが上回っていることを裏付ける証左かもしれない。今後、中国の経済発展が継続し、米国の軍縮が続けば、やがて日本も中国の勢力圏に入る日が来るかもしれない。

韓国にしてみれば、これまで北朝鮮の脅威を防衛するためには、米国に頼らざるを得なかったが、今後は中国が背後から“羽交い絞め”するような格好で、北朝鮮を牽制し、韓国に安全と平和をもたらすことが可能となった。

  • 磁石で吸い寄せられるように

このような訳で、朴大統領が、米国と中国を両天秤にかけながら狡猾に“二股外交”を展開する余地が出てきたのだ。朝鮮半島の地政学・第一則「大陸国家中国への従属性」から見ても、今後米中のパワーバランスが、図のような傾向が継続すれば、韓国は磁石に吸い寄せられる鉄片のように限りなく中国の属国に転ずる可能性があるのではなかろうか。

(おやばとより)

 

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