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北朝鮮攻撃時の米中の権謀術数

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情報メモ35

2018.2.2

 

  • 北朝鮮攻撃の三つのステージ

朝鮮半島情勢は、矢張りアメリカによる北朝鮮攻撃があると思われる。

アメリカが北朝鮮を攻撃する際の戦争手順は、次の三つのステージがあると思われる。

第一ステージは、先制攻撃による金正恩・側近、核ミサイルシステム、ソウルに照準した野砲などの重要目標の殲滅

第二ステージは、地上侵攻による北朝鮮陸軍・特殊部隊(100万以上)の殲滅北朝鮮全土の占領。北朝鮮の占領には膨大な数の「陸軍・海兵隊」が必要となる。

エリック・ケン・シンセキ米陸軍参謀総長(大将)は、米上院軍事委員会の公聴会(2003年2月)で、イラク戦争における運用兵力の規模を巡って「イラクの戦後処理には『数十万人」の米軍部隊が必要』との見解を述べ、少数精鋭論を唱えたラムズフェルド国防長官らと対立した。このためシンセキ大将はラムズフェルド国防長官により退任・退役に追い込まれた。

政権内では結局ラムズフェルドらの意見が通ったが、イラク戦争は占領後にその計画の不備を露呈し、結果的にシンセキの見解が正しかったことが証明される形となった。2006年11月には、イラクを管轄する中央軍(CENTCOM)の司令官であるジョン・アビゼイド大将が、上院軍事委員会の公聴会で「イラクを確保するためにもっと多くの兵力が必要と言ったシンセキは正しかったか」との上院議員の質問に対し「シンセキ将軍は正しかった」と応じるなど、現場の将官からもシンセキの見解が正しかったことを示す証言が次々となされるようになり、今度はラムズフェルドが更迭されることとなった(2006年12月)。

第三ステージは、新たな北朝鮮の国家建設乃至は韓国による併合である。これが、北朝鮮攻撃の完結した形であろう。

  • アメリカの権謀術数

しかし、筆者は、アメリカ第一から第三までのすべてのステージを、責任を持ってやり遂げることはないかもしれないと考えている。すなわち、アメリカは、「手抜きをして」第一ステージを主導的に実施するに留め第二・三ステージは中国と韓国の主導にさせる可能性がある。

アメリカは、イラクやアフガンで懲り、第二・三ステージを「手抜きする」のではなかろうか。特にイラクでは、第二ステージにおけるイラク陸軍は殲滅できたものの、イラクの占領では手を焼いた。レジスタンス組織の反抗が苛烈を極めた。全参加国軍合わせて即席爆発装置(IED)攻撃で、死者は1770がでた。その内米軍は1687名(約40%がIEDによる死者ということになる)と言われる。

アメリカの基本戦略の一つに、「ユーラシア大陸にアメリカに挑戦する大国を出現させない」がある。この戦略に基づき、アメリカは、朝鮮半島動乱を利用して、改革開放路線採用以来台頭を続ける中国の力を削ぎ落すことを考えるだろう。

アメリカは、北朝鮮に対する先制攻撃により、「ハチの巣を突く」ように、朝鮮半島周辺を大混乱に陥らせて、中国をこの動乱に介入させ、北朝鮮軍との戦闘や北朝鮮全土の占領――その後の新政権の樹立を含む――などで、中国に一定の軍事的な出血と経済へのダメージを強要すると言う訳だ。

アメリカが北朝鮮を先制攻撃する場合、韓国は千載一遇のチャンスとばかりに、祖国統一を目指して韓国陸軍を北上させるだろう。そうなれば、北朝鮮内で、韓国陸軍と中国陸軍が衝突するかもしれない。それは、アメリカの思う壺であろう。中韓間に、決定的な不信感を植え付け、対立の構図を作る

先の朝鮮戦争における、スターリンの陰謀――米中衝突を画策し、欧州正面安泰――のことを考えれば、単純なシナリオの戦いはないだろう。いずれにせよ、極東で戦火が起こる可能性は高いと思われる。

  • 中国の権謀術数

一方の中国も、それほど軟ではない。長い、長い、中国の戦乱の歴史に育まれた、中国の謀略のノウハウは、アメリカの上を行くものと思う。

中国は、アメリカの権謀術数を読み切って、密かに韓国に対して「中韓合作」をこう呼びかけるだろう。

 

「文大統領よ、北朝鮮への攻撃はアメリカ抜きで『中韓合作』でやろう、アメリカの海空主体の攻撃で、金正恩を殺し、核ミサイルを除去した後に、中国は北から、韓国は南から攻撃し、北朝鮮軍を殲滅し、全土を両軍で占領しよう。また、その後の新たな北朝鮮は、韓国主導で併合してくれても良い」

 

中国が、「新たな北朝鮮は、韓国主導で併合してくれても良い」という言葉の裏には、「その場合は、韓国は中国の影響下に入ってもらう。在韓米軍は追い出してくれ」という条件が隠れているのだ。

  • むすび

いずれにせよ、わが国周辺は、米中の覇権争いと、北朝鮮の核ミサイル開発問題(ICBMが数カ月以内に完成)が相俟って、波が高まることは確実のようだ。日本は、戦後放置してきた安全保障の欠落部分を、可及的速やかに「身支度」することが喫緊の課題だろう。

 

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