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東芝の新体制の矛盾 ~臨時株主総会での株主の議決権行使に注目~

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東芝に対して個人株主が歴代役員28人に訴訟を起こすよう請求しました。しかし、訴訟を起こすかどうかを判断する監査委員会に前社外取締役が残っている矛盾した構造のなかで正しい判断を下せるかどうか疑問です。この問題に対して、臨時株主総会での取締役選任議案にたいする株主の議決権行使を注目したいところです。スチュワードシップ・コードの真価が試される時です。
(一般社団法人 実践コーポレートガバナンス研究会ブログより転載)

 

本日(9月11日)に新聞報道では、個人株主が9月8日に室町正志会長兼社長ら歴代役員28人に総額10億円の損害賠償を求める訴訟を起こすよう東芝の監査委員宛てに訴訟を起こすよう求めたことが明らかになりました。この場合、監査委員会は60日以内に判断し、訴訟しない場合はその理由を株主に書面で説明することになります。提訴する場合は監査委員会で選定された監査委員が会社を代表して28人の役員に対して損害賠償請求を提訴することになります。
 しかしここで問題なのは、東芝が粉飾決算を行っていた時期の前取締役会のメンバーであった伊丹敬之氏が現在の監査委員会の監査委員として残っているということ、さらに9月30日の臨時株主総会でも社外取締役候補になっているということです。これは、明らかに矛盾を孕んだ構造です。伊丹氏がその28人の中に含まれているかどうかは、筆者は承知しておりませんが、含まれていなくてもその責任の一端をとるべき立場の人です。今回のような組織ぐるみの粉飾決算の場合、このような訴訟は十分予想されたにも拘わらず伊丹氏を社外取締役として留任させ、なおかつ監査委員に任命したこと自体、東芝の経営改革に対する本気の無さがうかがえます。
 このような構図の場合、監査委員会が訴訟を決めたとしても、その後の裁判の過程で安易な和解をすることは十分予想できます。その場合、株主代表訴訟は行えないことになります。そうすると会社は毀損された価値を十分に回復できないことになります。
 ここで注目したいのは9月30日に予定されている臨時株主総会において機関投資家を初めとする株主が取締役選任議案に対してどのような対応をするかという点です。ここで、昨年2月に策定されたスチュワードシップ・コードの真価が試されることになります。
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