トランプ大統領 Green Land購入に動く
他国の領地を購入することは戦争以外で領土を広げる手段でもある。1603年ジェファーソン大統領は1500万ドルでルイジアナを購入した。1667年ジャクソン大統領は700万ドルでアラバマを購入した。1803年ナポレオンはカナダ南東部を購入しフランス領に編入した。1848年米国はメキシコからカルフォルニア州そしてネヴァダまで購入した。1861年米国はアラスカをロシアから購入した。1917年米国はデンマークから2500万ドルでヴァージン諸島を購入した(現在の米領ヴァージン諸島)。
今年8月トランプ大統領はデンマーク訪問に当たり「Greenlandを購入したい」と発言した。購入構想は初めてではない。(1946年ハリー・トルーマン大統領がGreenland購入を打診している。)今回もデンマーク側は強く反発している。フレデリクソン首相(女性)は「驚くと同時に失望した、侮辱的提案」で売る気は全くない。外交筋は「トランプは外交の基本をわきまえず、娯楽のつもりなのか」と激しく反発、九月初旬にマルグレータ女王2世の招待でコペンハーゲンを訪問する予定であったトランプ大統領は旅行を延期した。思いつきでは発言したのかあるいは不動産resort開発でGreenlandにトランプタワーを建てる目的か、欧米のメデイアも驚きでまじめにとりあげなかった。ところが米国筋の評論家の説では米国は本気だとしている。金額は1兆ドルとの説もある。NATOの安全保障を巡っての戦略討議ではNATOの軍事的要衝としてロシアと中国の軍事的脅威から安全をいかに維持するかが議論されている。一般にはデンマーク一国では無理なのではないかと言う懸念がある。
Greenlandがデンマークに編入されたのはそれほど古くなく1953年までは植民地であった。国土の85%が氷河、住民はイヌイットでデンマークへの帰属意識は殆ど無い。似た国情のアイスランドも14世紀以来デンマークの支配を受けてきたが1944に独立している。デンマーク政府はGreenlandに対し年7億ドルを補助しているがこの財政負担がきつい。デンマークとGreenlandでは所得格差のほか住民の民族も言葉も異なる。一人あたりのGDPはデンマークが5.3万ドルに対し一方は犬ぞりの狩猟と漁業だから所得は低い。自然環境からアルコール依存度も高く麻薬などの問題も多い。NATOの一員としてのデンマークはGDPの1.35%しか防衛費負担をしていないので米国などは常に不満を表明している。更に重大な戦略的目標は地球温暖化で同島の氷河が溶け始めているが地下に眠る大油田とレアアース鉱脈がある。同島の面積は日本の5/6倍あるが住民はイヌイット系のエスキモーを中心に5万7千人しかいない。現在エビの漁労が盛んで日本の水産会社駐在員も5名いるとのことだ。資源確保の観点から豪資源会社は同島の一部鉱区と契約し2007年から操業している。一方nationalismを刺激してカネを餌に中国から狙われる危険性も大きい。中国の得意技(借金の罠)だ。米国は同島にレーダー基地を設置しておりNATOの安全保障を前面に打ち出している。筆者は半世紀前にデンマークチーズの日本向け輸出をやったことがあり、当時は暗号電報だけがcommunicationの手段で大きなアクメ、ベントレイの暗号台帳を担いで売り込みをやっていた。日本向けのわずかな数量に付き合ってくれたデンマーク側の関係者に御礼申し上げたい。筆者はこのチーズのほか乳製品などデンマ-ク産品の輸出に貢献したとて、デンマーク女王よりKnight爵位をいただいた。この記事もデンマーク協会の情報をbaseとしている。