商品市況

0
Shares
Pinterest Google+

1.銅スクラップ
従来は銅地金の相場をLME(London Metal Exchange)中心に追いかけていたが、銅スクラップなど銅製品の原料となる銅スクラップの対中輸出にブレーキがかかっている。中国景気の減速もあり日本では対中輸出量が1~6月15%減少し、輸出品価格もさがった。銅スクラップは家電製品や建材に使う伸銅品の原料となる。中国の場合日本や米国から輸入しプラスチックなどを選別し再利用してきた。日本の全輸出量のうち中国向けは22万5598トンと80%を占めた。だが、中国も景気の減速に加え環境規制も強化しつつあり状況は一変しつつある。中国政府は昨年末から銅分が低い廃電線など低級な「雑品スクラップ」の輸入を禁止した。最近は中国政府も環境配慮の規制を次々と打ち出しており、日本では被覆電線を分解・処理する業者がすくない。そのため、モノがあふれ中間処理業者の許容量を超えている。被覆電線の輸出向け取引価格は6月上旬時点でキロ2千円程度と17年同期より11%安い。7月は銅の建値が上昇したがリサイクル業者の間では7月下旬時点での価格は195円程度と言われている。中国は7月から新たな措置に踏み切り上級銅スクラップの輸入を許可制にした銅分が8~90%と高くプラスチック性の皮膜線などを除いた物が対象となる。輸入ライセンスは転売を目的とする中小の流通業者には発行されないようだ。この場合日本からの輸出は更に減る可能性が強い。国内の回収業者は余剰分を東南アジアなどにふりむけている。1~6月にマレーシアに輸出された銅スクラップは5万2800トンと前年同期比5.3倍,フィリピン、タイ向けも急増した。全体に占める中国の割合も47%に縮小した。しかしプラスチックを含む再生資源が環境に及ぼす影響について東南アジアでも注目されており、マレーシアなどが今後銅スクラップの輸入を受付けなくなることもあり得ると業者はみている。コストがかかる産廃処理を中国に任せていたがここでもリサイクル体制の再構築が必要となる。

2.穀物・非鉄
米中の制裁関税でもめているが穀物や非鉄の国際価格が下落している。大豆は対中輸出の回復が遠のき8月に入り2ヶ月ぶりの安値をつけた。需要減を懸念した売りが広がったためだ。大豆の米シカゴ先物の8月1日の終値は前日比2%安の1ブッシェル8.47ドルと5月下旬以来の安値となった。米農務省の現在までの輸出成約量を見ると中国向けは前年同期の5割にとどまる。中国が世界需要の半分を占める銅も下落した。対中関税で電子部品向け需要の減退が懸念され銅についてもLMEの3ヶ月先物は前日比2%やすく、2ヶ月ぶりの安値圏にある。

3.東南アジア:膨らむ小麦消費
商品市況とは直接関係ないがコメを主食とする国が多い東南アジアで小麦の消費が急増している。世界2位の輸入国インドネシアの輸入量は首位のエジプトにせまる。背景には日本企業が火を付けたパンやラーメンの人気がある。東南アジアの輸入増は長期的には相場の下支えとなりそうだ。米農務省によると2019~20年度のインドネシアの小麦輸入量は前年度比3%増の1150万トンと2019~20年度の2倍に達する見通しだ。首位エジプトは1250万トンと10年で2割増えるが両国の差は縮小している。東南アジアではベトナムの輸入量も400万トン、タイも310万トンと10年で倍増している。フィリピンは720万トンと2.2倍、この間世界の伸びは3割にとどまる。小麦は乾燥に強い反面、湿気や雨の多い地域で生育しにくい。東南アジアではコメを主食とする国が多いが急激な人口増と食の洋風化が小麦の輸入を押し上げている。国連食糧農業機関によるとインドネシアの人口は約2億6千万人と10年で1割増えた。更に日本の大手パンメーカーが東南アジアに進出し、パン食が人気を集めた影響が大きい。
敷島製パンは現地財閥サリム・グループと組み現地にパン工場を設営している。山崎製パンと三菱商事はインドネシアのコンビニエンスストア大手を運営するアルファグループと合弁会社を設立。日本流の柔らかい食パンの販売が好調だ。パンだけではない、東南アジアでは米粉を原料とする麺の「フォー」が伝統食の一つだが最近は小麦を原料とするラーメンの人気も高い。世界ラーメン協会によると、インドネシアの18年の即席麺消費は約125億食と中国に次ぎ2位、同国の小麦需要の8割は製麺・製パン向けだ。インドネシアのコメ消費は近年3800万トン前後で頭打ちだ。タイも16年頃を境に伸びがとまり、食の多様化が進んでいる。米国、ロシア、ウクライナなど小麦の増産予測があり小麦相場は下落気味だ。但し、東南アジアの消費拡大が長期的には世界需要を拡大し市場に影響を与える存在となることも間違いない。

4.バラ積船
中国経済の減速によるバラ積み船の荷動きに対する影響だが、大型バラ積み船の主要貨物は鉄の原料となる鉄鋼石だ。最大の輸入国である中国は国内景気刺激策で過去にないようなハイペースで粗鋼生産をふやしている。何らかの要因で政策が変わればすべてが変わってしまう危険性はあるがまずはこの流れが続くとみたい。大型バラ積み船の指標となるケープサイズの市況は8月1日現在1日2万5千ドルだが、専門家はバラ積み船の下期についてバラ積み船で運ぶ貨物は鉄鉱石や石炭など経済活動の基礎を支えるインフラに必要な物がメインだ。世界的に景気が悪化すれば最終的には市況に反映される。足下の実需は底堅く今年初めはブラジルの鉱山ダム決壊事故や3月の豪州のサイクロンの影響で鉄鉱石の出荷が滞り市況は低迷した。
但し出荷が回復すると荷動きもすぐ戻り市況も改善されたので強気の判断をしている。7月に3万ドル超えの反動で目下調整局面にあるが需要の底堅さから年内にもう一度市況の山がでるとの見方もある。1~3月は鉄鉱石の主要生産国のブラジルが雨期に入って出荷が滞り例年市況が下がる。このため下期全体では1日1万6500ドルとNYKでは見ている。強気の背景は中国などが景気対策で鉄鋼の増産体制をとっておりまた、別の問題となっている。この点については別稿で触れたい。

Previous post

日本の安全保障を巡る二つの論理   ― 日米同盟の論理、日韓対立の論理

Next post

『我が国の歴史を振り返る』(2)日本及び日本人の4つの特色