習近平独裁とアフリカ

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恒例の北戴河会議で習近平独裁に対する批判が騒がしいと思われていた。不満分子も多いのであろうが反腐敗運動が依然として効いており、うっかり批判しても習の最も信頼する王岐山に取り押さえられてもと言う警戒もあり、手が出せないという事情もあると思われる。

一方、習が自ら運動の先頭に立っている一帯一路戦略に別の意味での批判が起こりつつある。習自身はそれ程器用な人とも思えないが、独裁宣言以来高級官僚の忖度をはじめいろいろな指導に乗って彼自身は身動きもままならず、とむしろ同情されているようにも見えた。

たとえば各国首脳と会うにも一切笑顔を見せないとか反対に大歓迎の様子を見せたり、北京、上海などでトイレ革命が行われているが、自らその現場に立ち会ってみたり独裁者になるのも大変なことだと世間は見ている。問題は独裁体制を取ると官僚は必然的にすべての問題に対し彼の意見をとるように仕向けることだ。彼にとって幸いなことはspeech writerが優秀であったことで、中華民族の夢の実現とか一帯一路戦略で世界制覇をめざすとか一般国民受けのする演説で自らの評判を作り上げた点にある。

従来は誰と会うにせよかなりきつい顔で握手していたが9月3日北京で開幕した「中国・アフリカ協力Forum」で習近平は開幕演説で600億ドルの経済協力を表明した。米国との貿易戦争の影響を指摘するマスコミもあるが国の数の多さから見れば国際社会で大勢力となっているアフリカ諸国を同盟軍と見なす方式は中国共産党の従来からの方針だ。アフリカへの影響力を深めようと習近平は開幕演説で600億ドルの経済協力を表明した。更に自身が主導する一帯一路にアフリカ諸国の参加を求めた。米国との貿易戦争を機にアフリカのみならずラテンアメリカやアラブ諸国とも関係強化をねらっているが、アフリカとの首脳会談も同じ中国外交の延長線上にある。それにしても習のこの会合で見せた笑顔は薄気味悪い程のものであった。一方日本に対しても急に友好を前面に出し経団連の中西会長に李克強首相は両国の経済関係を発展させることで世界経済の回復を後押しできるなどと話した。日本側から見るとこの積極的対応に違和感を抱くが、中国側では米中貿易摩擦で、目下中国は大変な状態なので技術のある日本を巻き込み利用したいと率直克つ現実的な対応だ

過去にも中国は難局を迎える度に日本に経済・技術交流を持ちかけ両国の友好ムードをもりあげた。しかし日本に協力させ難局を乗り切ると友好的な態度は消えてしまうことも日本側は熟知している。

米国との貿易紛争に備え中国の習政権はアフリカ貿易の拡大に逃げ道を見つけようとしているように見える。1~7月の貿易額は前年同期比20%増と伝えられている。一方アフリカ諸国は過剰債務で港湾使用権などを中国企業に譲渡せざるを得なくなったケースなども十分知っており警戒している。そのため中国は無償資金協力など従来の3倍もの資金を使ってこれらの懸念を払拭しようとしている。実際に中国の幹部はアフリカからの輸入拡大は米中貿易戦争のリスクを分散させると確信しているようだ。中国からアフリカへの輸出は自動車や自動車部品が多いが一方でいまだに過剰に悩んでいる太陽光発電設備の輸出なども目論んでいる。一方アフリカ側は中国から大量の工場製品を輸入しているという不満があり中国側もアフリカでの現地生産強化も実行せざるを得ない。すでにアフリカにとって中国は最大の貿易相手国だ。但し中国への依存に警戒する声もある。IMFは中国が問題のある債務を他の国に増加させ、返済の負担が増え、他の支出が抑制されると警告している。ジプチには中国の軍事基地があるが中国の融資に過度に依存しているとの指摘もある。習政権は「債務のわな」という警戒に対し、発表した600億ドルの経済協力のうち無償資金融資や無利子融資などは全体の1/4の150億ドルで3年前の無償資金協力50億ドルの3倍となっている。

ガーナの場合、金産出国だが、中国政府もこれに目をつけガーナ政府も巻き込んで中国から大量に労働者を送り込み金の採掘権もとった。もともとガーナ人に権益を与えていたが、ガーナ政府とどのような交渉をしたのか、中国人にも権益がゆくようになった。そこで中国側は最新の機械を入れ大がかりな金採掘を行い、ガーナ政府ともめるようになった。そこで中国側は得意の裏口工作でガーナ政府の関係部局を籠絡し金の採掘を継続した。この頃から中国の大使館など在外公館はアフリカ各国に最も立派な公館を配備し、アフリカ各国で最も立派な建物は中国大使館と言われるようになった。このようにアフリカ各国に大金をばらまいてきたが財源の問題もありここに来て雲行きもあやしくなってきた。

 

#中国株の下落

中国株の下落に歯止めがかからない。9月17日の上海総合指数は2651まで下落2年前の[人民元ショック]後の安値を更新した、約8

割の株が下落し、一帯一路などで世界中にばらまいた資金も枯渇したのではと言った悲観論もある。従来からCITIC傘下の政府系金融機関が株式下落時テコいれしていたが、最近はあまり活発に株式市場に介入していない。資金繰りが厳しいのかもしれない。これに拍車をかけているのが米中貿易摩擦で中国側に米国の関税引き上げに対抗する手段はない。

日本のマスコミではトランプ政権批判から貿易戦争とかいかにも戦争開始のごとき論調が主題となっている。元はNY TimesとかWS

Journalとか米国北部を根城に民主党寄りの新聞でトランプ批判は当然のことだ。問題は前任のオバマ前大統領が何もせずに中国が意のままに振る舞うことを許してしまったことにある。オバマだけの責任ではないがコンドリーザライス、スーザンライスなどの安全保障補佐官、(その後、二人とも国連大使となった。黒人女性で似ているが姉妹ではない。)

さらにはキッシンジャーなど、中国が経済発展すれば、自国同様民主化すると誤解してしまったことにあるが、トランプ政権としてはまず中国に貿易赤字と技術交流・過剰な補助金政策などで問題がある点を一つずつ片付けてゆこうとしているように見える。

中国のアフリカ侵攻については米国議会でも問題になっており、今年3月下院外交委員会の小委員会で「アフリカにおける中国、新たな植民地主義か」と題する公聴会が開催された。今回の中国主催のForumでは中国は「アフリカの政治腐敗に反対する」但し内政干渉せず、援助には一切の政治的条件をつけない」としているが重商主義時代の欧州からの入植者が行ったことと同じことをしているわけで今後の中国の行動を十分に見守る必要がある。

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