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Identity Politics , そして Liberal Order の行方

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目次

序論   Identity Politics , WTO and Silicon Valley ・・・P. 2

第 1 章  Identity Politics と 民主主義    ・・・P.4

(1)Identity Politics と米民主党の変質
・トランプ政治とIdentity Politics
・変質する米民主党
(2)Identity Politics は民主主義の危機
- Francis Fukushima氏の反論

第 2 章 リベラルな国際秩序の行方        ・・・P.7

(1) 戦後「国際秩序」生成の生業
・戦後国際秩序としての国連誕生
・国連常任理事国
・冷戦の終焉
・J.アタリ氏の信念
(2)「多様性を受け入れる秩序」
・リベラルな秩序
・JFKの示唆

おわりに 安倍晋三氏の自民党総裁3選に思う   ・・・P.12
・民主主義政治の基本は‘プロセス’
・創刊175年の英経済誌 `The Economist ‘

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序論  Identity Politics , WTO and Silicon Valley

ドナルド・トランプ氏が米大統領として世にその存在を示したのが2017年1月。爾来、僅か1年8カ月、米国政治の風景は様変わりとなってしまいました。勿論、新たな大統領の登場は、新たな政治方針と政策を以って政治に臨むわけでしょうから、当然の結果として政治は変化を遂げ、進化をも示す処です。然し、殊トランプ大統領について言えば、これまでの米大統領に見る姿、つまり戦後一貫して、自由経済を支え、そして世界秩序を堅持してきた、言うなれば世界に対する‘責任’を矜持ともしてきた大統領の姿はなく、あるのはAmerica first、つまり自国利益を求めて進む姿であり、対外的にはAmerican retreatを映す処となっています。元よりこれが、米国の政治、経済、そして産業の在り方に強い変化をもたらす一方、世界経済運営の枠組みすら否定するほどになってきています。その変化はずばり‘後退’の変化と云う他なく、そうしたトランプ氏については、米国の役割、つまり国際秩序の堅持に異議を唱えた初の大統領として明記されていく事になるのでしょう。

尤も彼だけが異質と云うわけではありません。1971年8月のニクソン・ドクトリンでは、国際金融システム、金ドル交換制度の停止、輸入課徴金の実施と云う、国際秩序に背を向けた例もあるのですが、ただ基本的な違いは後述するように、大統領選を通じて、今もそうですが、いわゆるタブーとされてきたraceへの意識、Identityを鮮明として、言うなれば「人種政治」を訴えた事が功を奏する処、それを「米国第一主義」と結び付けた政治、貿易、更に産業運営が行われている点にあると云うものです。そうした米国の変化を伝えるkey words として挙げられるのが、Identity Politics (政治)、WTO(経済)そしてSilicon Valley (産業)の三つです。

まず、Identity Politics です。これはトランプ大統領の言動に刺激され、人種を意識した、これまでのliberal democracyとは次元を異にする政治、弱者集団の声を代弁する「人種政治」(アイデンティティ政治)とされる動きです。とりわけ米国のDemocratic Party(民主党)がこのIdentity Politicsに舵を切りだしたと云われていますが、極めて注目される変化です。元よりこれが米国の政党政治に強い影響を与えると共に他諸国でのポピュリズムにも強く反映する処です。因みに9月9日、スエーデンで行われた議会選挙では「反移民」を掲げる極右・民主党が躍進。更にリベラル思想の旗手とされるドイツで排他主義が広がってきたこと、元よりこうした政治潮流が欧州全体の政治危機に繋がると、その危うさが伝わる処です・・・・

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