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またまた中国貿易統計に水増しか

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昨年4月に貿易統計の水増しが騒がれたが(拙稿2013/8/1中国統計に対する不信、参照)昨年末発表された11月の輸出額は前年同月比12.7%増えている。香港から本土へのホットマネーと見られているが、GDPの年度目標達成の為の地方政府の水増しかも知れない。

一般的には10・11月は欧米向けクリスマス用品の輸出が増えるがこれほど大きな伸びは考えられない。(中国の11月の輸出は2,022億ドル=12.7%増、輸入は1,684億ドル=5.3%増)更に、この発表の直前に国家外貨管理局は架空貿易や域外からの異常な資金流入に対する監視を強化するとの通知があり、これによって水増しが騒がれるようになった。前回の水増し騒ぎでは広東省の貿易額が前年同期比37.7%増、深センが80%増という常識では考えられない数字が出て疑惑を生んだが、今回も香港向け輸出が異常に伸びている。地方政府の年間目標達成のための水増しの可能性もあるが、今回も当局が水増し是正に踏み込めば12月以降の輸出は大幅に減るのであろうか。

1. ホットマネー流入の副産物 金の中国への流入

金の価格は昨年一年で30%も大幅に下落した。そこに目を付けたのが中国人だ。米国の金融緩和策の転換を見込み欧米の投資家が手放した1000トンの金は中国に向かった。中国の需要急増というより利ザヤ稼ぎが目的だが元々インドと共に金選好の強い国民性もありインフレ対策も兼ね常時ある程度の需要はある。香港の貿易統計では香港経由で本土に移動した金は2013年1~10月で1263トンとなっている。一方中国企業によるニセの貿易決済は、単価の高い品目を実際価格より低い価格で輸出し差額を香港などで留保したり、金利差を利用して高い価格で輸出し差額を中国内で運用すると言ったものだが、金の輸入の場合は中国本土の本社がL/C(Letter of Credit:信用状)を発行、香港にある支社はそのL/Cを担保に香港の銀行からドルで融資を受け、中国本社は同額の人民元を預金し金利を稼ぐ(ドル金利の方が安いので)、その間に金の価格を見ながら安値で金を購入するという手口のようだ。いずれにしても過剰なマネーの流入で不動産市況の高騰などバブル退治に懸命の中国政府は取引の規制を狙うが、中国側税関も中国企業と癒着しているのかうまく行かない。
世界最大手の宝飾品販売の香港の周大福(Chow Tai Fook、ユーロモニターによれば2012年ジュエリー類世界シェア1位)の昨年上半期の純益はほぼ倍増の92.3%と報じられている。中国本土と香港・アジア地区売り上げは半々で、現在の店舗数1954店をさらに拡大すると強気だが、これも前述の中国人の金選好の強さを示している。(同社は鉄鉱石の採掘開発を行う本土の恒実砿業と資本提携するなど多角化を図っている)香港紙によると輸入された金の一部は政府の外貨準備の一部に回されたとも伝えられているが、実態は不明だ。

2. 政府も次々とホットマネー対策を打ち出すが

政府による流れ込む資金の監視や分析はいくら手を打っても難易度が高く効果がないが個人の海外金融資産も申告するよう、今年から実施された。但し世間で言われているように高官の海外金融資産まで手を付けるわけにも行かない事情もあり暫くはいたちごっことなろう。ホットマネー問題を複雑にしているのは貿易金融の高度化もあるがネット取引を通じて世界中に送金できる「ビットコイン」の出現もある。依然として全貌は不明だがビットコインの利用が最大の国は中国とも言われている。世界の取引の約半分とか1/3とか言われている。人民銀行が盛んに警告を発している。但し人民元の外貨との交換はできず、資本移動も規制されているので全ては闇の中だ。投機好きの中国人のことなのでかなりの範囲に広がっていると見るべきであろう。余談だがロンドンの中心部にあるChina Townは世界でも最も古く大きい中華街で、お世辞にも綺麗とは言えないが雑然とはしているが美味しい中華料理を楽しめた一角だ。最近この街(Gerrard Street)が賭け事街? に変わりつつあるようだ。いつの間にかbetting shopが軒を連ねるようになった。2~30年前、中国中どこに行っても(特に空港とか駅等)中国人がカードなどで時間つぶしをしていたが当時は他に娯楽もないのでと考えていたが、最近になっても同じ傾向は続いている。マカオを始めカジノは中国人で一杯だし彼らは世界的にも賭け事に熱中する性格なのかも知れない。

3.2014年末からGDPの計算方法の変更か

統計局は早ければ14年末から研究開発費用、住宅サービス、労働報酬、財産性収入、中央銀行が算出するサービス(金融仲介、金融政策、金融機関監督)などの計算方法を変更するとのことだ。詳細は不明だが更にGDPを増加させようとの思惑らしい。もともと、中国の統計に対する不信はあるが国営/公営企業が大半でむしろ統計の嵩上げが噂さされてきた。(インドの場合は反対に無数の登録されない企業活動があり、GDP統計は低めに出ると言われている。)
最近指摘されているのが2000~2011年の間、不動産価額を修正していた為、その間の実質消費者物価指数(CPI)の上昇率は統計局発表のデータを1%上回っている。これによって約1兆米ドルのGDPが過大評価されたとの説がある。2012年の実質成長率は6%前後との見方だ。この場合、統計局を一方的に責めるわけにも行かない。問題は法というものに対する概念があまりにも違うことにある。
中国税関情報センターの発表では2013年上半期の架空貿易は644億ドルとしている。架空取引の水増しを除いた貿易総額は前年同期比5.1%増の1兆9,332億ドルとなり、税関発表の8.6%増の1兆9,976億ドルと比べれば貿易総額の増加率を3.5ポイントも架空取引で押し上げたこととなる。

4. 工業製品指数でも水増しの疑い

公表されている工業統計の中に工業増加値(工業製品の総生産額から人件費、材料費等コスト分を引いたもの)という指標がある。この前年同期比伸び率により製品の付加価値の増減をはかるものだが日本総合研究所などの調査でも地方が中央への報告のため水増しが行われているのではないかと言われている。国家統計局が発表する全国値と地方政府発表の値との乖離がひどいので指標そのものが疑われるとしている。実際に伸び率が高いほど好況と判断されるので、昨年前半は中国の景気減速、hard landing 必至とのムードに包まれており、政府もこの動きを封じ込めるため人民日報日本語版では(中国危機説)は滑稽!的外れ、中国経済は減速していないなどと強力な宣伝を行った。其の為にも経済成長は全てを潤すとしてGDPその他の数字が嵩上げされた可能性もある。

本稿を書いているときに中国税関から1月の貿易統計が発表された。
輸出は前年同月比10.6%増、輸入は10.0%増と予想を大幅に上回る数字だ。春節が1月末なので原材料などの調達を連休前に行ったとしても輸入は分かるが輸出は各地向けとも大幅に伸びている。輸出を装って投機資金が入った水増し輸出の再燃かと判断する向きが多い。1月下旬に債務不履行となった中誠信託の理財商品は山西省、中国工商銀行、中誠信託3社で買い取ることとなったようだが、(当然中央政府の指示と思われる)、更に2月12日には吉林省信託の発行した理財商品が債務不履行と伝えられている。本件も政府が裏から処理するのだろうが、この種の問題は今後続々と発生するであろう。
今年も矛盾だらけの中国経済から目が離せない。
以上

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