乳がんスクリーニングは効果があるか vol.1
紀の川市はこのほど、今年度新規事業の「がん検診向上」を図るため、中村愼司市長直筆の手紙の複写914枚を対象者に発送した。主に国保加入者やその扶養者などの中で、 今年度満40歳になる男女。中村市長は「那賀病院とも協力し、今後本市だけでなく、県、また世界を動かすくらいに、がん検診向上推進に努めていく」 と話している。
同事業は、ことしが全身麻酔を使い世界で初めて乳がんを摘出した華岡青洲生誕250年を記念して企画。
手紙はB5の便せんに市長が考えた言葉がつづられている。 担当の健康推進課によると 「このような取り組みは、県内で初めて」という。封筒には、そのほか、青洲の功績を紹介したチラシと、集団検診の日程表などが同封された。
同市は、国保加入者などの対象者から算出した検診率が4割を越えるなど、乳がんの検診率は全国的にも高水準。しかし、検診申し込みに対し、「がんが見つかるのが怖い」などの理由で申し込んだにもかかわらず受診を断る人が約3割いるのが現状という。
同課は今後、がん初検診者向上と、検診申し込み者の受診率100%を目指した啓発を図るという。
がん検診とは早期のがんの
なるべく早い段階に見つける検査で、
がんスクリーニングとも呼ばれます。
スクリーニング検査は、
国や地方自治体が「やろう!」と決めて導入するのですが、
やって意味があるかどうかを、どのようにして決めるのか、
といった話をしてみたいと思います。
国全体としてみれば貴重な労働力が病気にならないことが、
国を維持するためには大切なので、
がんや、心臓疾患系の障害をなるべく早く見つけて、
早いうちに治療をすることを考えます。
とはいっても1ミリに満たない
小さながんを発見するための高価な検査を
国民すべてに行うのは労力もお金もかかりすぎます。
また、検査を受ける側も
1日がかりの検査をしょっちゅうやられていたのでは
たまったものではありませんから、
スクリーニングはなるべく簡単に、
時間もお金もかけずに、
かつ精度が高い検査がのぞまれます。
検査の正しさ(有効性)はどうやって測るのかといえば、
「妥当性」と「信頼性」の2つの指標でみます。
妥当性とは本当に病気の人をきちんと病気だと認識できるか、
そして正常な人を正常だと認識できるか、ということです。
信頼性というのは、
何回か検査をしたときにどれだけ同じ結果が得られるか、
ということです。
ある人がはかると陽性、違う人がはかると陰性、
というのでは結果がてんでばらばらです。
信頼性とは正しい(真実の)数値を
誰がはかっても同じような結果が出る検査の能力であり、
再現性と呼び替えることができます。
妥当性も信頼性も高いのが良い検査ですよね。
(講談社新書「厚労省と新型インフルエンザ」木村盛世著よりP.156一部改編)
それでは妥当性に関してもう少し、見てみることにしましょう。
妥当性が低い、言い換えれば
正しい値が検査で出てきにくい、ということです。
それ故、妥当性というのは検査の生命に関わる
もっとも大切な特性です。
ですから、スクリーニング検査は
この妥当性がいかに高いかがとても重要なのです。
少し専門的になりますが、
妥当性をあらわす物差しとして、
「敏感度」と「特異度」という2つがあります。
敏感度とは、本当に病気を持っている人たちの中から
どれだけ検査で陽性(+)と出すか、ということであり、
特異度とは本当に病気を持っていない人を
どれだけ正しく陰性(-)と示すか、
という検査の能力のことです。
敏感度も特異度も高ければ高いほどよいのですが、
残念ながらどっちも完璧という検査は無いのです。
一般的に特異度が上がれば敏感度が下がる
というシーソーのような関係になっているので、
100パーセント妥当なスクリーニング検査は存在しないのです。
(講談社新書「厚労省と新型インフルエンザ」木村盛世著よりP.160一部改編)
それでは次回は、スクリーニング検査が実際どれだけの人を救えるか、
ということについての話をすることにしましょう。