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『我が国の歴史を振り返る』 (1) 日本史と世界史に“横串”を入れる

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元陸上自衛官の宗像久男(むなかたひさお)と申します。「『我が国の歴史を振り返る』(1)日本史と世界史に“横串”を入れる」をスタート致します。

本シリーズの狙いは、「我が国の歴史」、中でも「我が国の『国防』の変遷」をメインテーマに、我が国と西欧列国や周辺国との関係を中心に振り返り、探り、史実をあぶり出し、「なぜ我が国が江戸、明治、大正時代を経て激動の昭和時代を経験せざるを得なかったのか」を探求すること、そしてこの「歴史」から教訓や課題を学び、その延長で「現在そして未来はどうあるべきか」などを考えることにあります。

もとより、私は歴史学者ではありませんし、若い時分は「歴史」を受験科目として勉強しただけで、「歴史」にはあまり興味がありませんでした。よって、今なお、このような大胆な企ての担い手として資格があるかどうか自問自答しておりますが、まず、そのような私が「歴史」に興味を持ったきっかけを話しましょう。

長年、幹部自衛官として我が国の防衛の第1線で若い隊員達と汗と泥にまみれて勤務した経験を有する私は、「憲法9条を守れ!」とか「憲法があれば、我が国の平和と独立を維持できる」との考えがどうしても理解できませんでした。この一種の“宗教”とも言えるような考えが戦後、なぜ日本の中に根付いているのか、との疑問を追求するうちに、憲法の制定過程や終戦後のGHQの占領政策に興味を持ち始めました。

そのような時、「侵略したのはアメリカであり、アメリカに日本を裁く資格はない」と東京裁判や占領政策を真っ向から批判する米国側の一冊の本に出会いました。米国人ジャーナリストのヘレン・ミアーズ女史が書いた『アメリカの鏡:日本』です。「当時、もし日本国民に読まれていたら、マッカーサーの日本統治は崩壊していただろう」と評される本書は、我が国が占領下にあった1948年に出版されるや、マッカーサーの逆鱗に触れ、発売禁止・翻訳禁止の烙印を押されてしまいました。そして、1995年ようやく翻訳されて私達も読めるようになり、その頃、私も本書に出会ったのでした。

本書から受けたショックを今でも鮮明に覚えておりますが、これがきっかけとなって、学んできた「歴史」に疑問を持ちつつ、終戦後の占領政策、大東亜戦争、昭和初期、大正、明治、江戸、そして初めて欧州人と関わり合いを持った戦国時代まで「歴史」をさかのぼって研鑽し、また「歴史」を“時代を追って辿る”ことを繰り返すようになりました。よく「歴史にifはない」と言われますが、私の場合は、逆に「if」とか「why」の連続でした。

巷には、歴史学者のみならず、作家、マスコミ人など様々な有識者によって記された歴史書や歴史小説が溢れております。手当たり次第にこれらを読みあさっているうちに、“様々な視点で書かれた”「歴史」に出会いました。

歴史学者の岡田英弘氏は、「歴史は物語であり、文学である。歴史は1回しか起こらない。くりかえし実験できないので科学の対象にならない」として、「それを観察する人がどこにいるかの問題がある」(原文のママ)のを“もっと重要なこと”と指摘しておりますが、「歴史の見方」は、「立つ位置」により全く違ってくることがわかりました。

岡田氏はまた「外部の世界がない、内側だけの歴史などというのは歴史ではない」と断言しておりますが、学校の課目が「日本史」と「世界史」に分けられ、「日本と動き」と「世界の動き」を別々に教えていることにも問題がある、と気がつきました。

最近、ようやく文部科学省もこの問題を認識し、世界史と日本史を統合して「歴史総合」を必須科目にして2022年から導入を目指しているとのこと、さらに「一面的な見解を配慮なく取り上げるような偏った指導をしないような規定も明記する」とのようです。「遅きに失する」とは言え、これで歴史教育が少し改善されるのではないかと期待しております。

このシリーズは、「歴史総合」を先取りして、「日本史」と外部の世界たる「世界史」の間に“横串”を入れて「歴史」を振り返ってみようとしております。そして、私達の頭の中にいつの間にか出来上がっている「先入観」にあえて棹さし、これまで常識のように思われてきた個々の事象について「このような見方もある」とか「このような事実が見落とされてきたのではないか」などと逆らってみたいと考えております。また、「歴史」の“繋がり”を重視し、「軍事」を含めて個々の事象にあまり深入りすることは避け、「我が国の歴史」をコンパクトに振り返りたいとも考えております。

とは言え、毎週1回の発信で1年以上かかると見積もっておりますが、経過によってもう少し長くなることも頭に入れております。本歴史シリーズが、皆様が学んできた「歴史」に少しでも「疑問」を持つきっかけにでもなれば望外の喜びです。

読者の皆様からのご意見や質問などはいつでも大歓迎致します。一緒に「我が国の歴史」を学んで行きましょう。

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