医療改革を成長戦略の柱に (上) ~「株式会社参入規制」の全廃を<ドイツ・南ア・米国の現状>
ドイツ、南ア、米国の現状
アベノミクスの「第三の矢」である成長戦略において、医療分野を「柱」にする意気込みは感じられない。また、「国家戦略特区」構想などには、政府の意思で経済を先導すべしという姿勢がにじみ出ている。
しかしながら、成長戦略の鍵を握っているのは政府ではなく、医療分野では医療機関(病院)と消費者(患者)である。もっとも効率的にコストを抑え、サービスの質を高められるのは、サービスの供給者である医療機関であり、サービスの質や利便性を的確に判断できるのは消費者自身なのである。政府に監督責任はあるものの、人々が望む医療サービスを納得できる金額で医療機関が提供し、消費者が選択できるようにすべきである。
言い換えれば、市場機能を通じて行なうべきものと言える。この市場の機能を全面的に活用するため、参入規制や提供するサービス範囲に対する規制などを全廃すべきである。
本稿では、上下二回に分けて、医療の市場化・産業化を妨げている最大の岩盤規制である「株式会社参入規制」に絞り、ドイツと南アフリカ、米国、アジア諸国における株式会社形態の病院の動向を解説し、わが国で採られるべき政策のあり方について提言したい・・・。
(2014年1月6日、時事通信社発行「金融財政ビジネス」第10381号p12~16所収)