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北朝鮮側平昌五輪参加団の裏のミッション

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2018.2.6

 

○ はじめに――諜報・謀略の海上拠点・万景峰号の来韓

いよいよ、北朝鮮の諜報・工作活動への意欲が顕になってきた。北朝鮮が平昌五輪に合わせた芸術団派遣で、貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」を使って6日に韓国入りすると突然、通告した。このことは、当初からの北の計画で、開会式土壇場になれば韓国は断れないと踏んでの「制裁に風穴を開けるための強行突破」であろう。

万景峰号は北朝鮮の諜報・謀略工作の海上拠点なのである。まだ、接岸する港は南北で協議中のようであるが、筆者が判断すれば、平昌から最も近い束草(ソクチョ)市(江陵市から約60㎞)の埠頭ではないかと思われる。

○ 万景峰号は北朝鮮の対日諜報・謀略工作の海上拠点としての実績

万景峰号は朝鮮総連が建造し、北朝鮮に寄付したものである。この船は、北朝鮮の対日諜報・謀略工作の海上拠点となり、密輸(核・ミサイルの部品・工作機械など禁制品の移封持ち出し)、現金(在日朝鮮人からの徴収・献金)輸送、スパイ、拉致、不法入出国などに数多くかかわり「犯罪のデパート」と言われたほどだ。

日本には、北朝鮮エージェントと目される野中廣務議員などが目を光らせており、積み荷検査も乗下船者もノーチェックだった。

万景峰号は、現在、日本政府の対北朝鮮制裁の一環として往来できなくなっている。万景峰号は、名目(建前)の上では、北朝鮮・元山にある海運会社が所有となっていたが、実質的には朝鮮労働党の情報機関の統一戦線部(朝鮮総連の指導・監督)がコントロールしていた。 同部は「対南(韓国)工作」を中心的に担うとともに、最近まで、朝鮮総連の指導も担当し、同部傘下の「アジア太平洋平和委員会」は、日本政府や、自民党・社会党などの政治家との窓口の役割を担った。

 

○ 北朝鮮側平昌五輪参加団の裏のミッション――平昌五輪・パラリンピックを通じた北朝鮮の諜報・謀略工作を推理する

  • 諜報・謀略工作の編成

 平昌五輪・パラリンピックで、北朝鮮から平昌五輪(2月9日から25日)に参加する勢力は、代表団に金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長を代表とする高官級代表団22名、三池淵管弦楽団140人、応援団230人、テコンドー師範団30人、選手団47人で、合計469に上る。また、パラリンピックにも合計150が来韓する予定。

諜報・謀略工作にかかわる要員は、任務の軽重はあるものの、全員がミッションを与えられていると考えるのが妥当であろう。

それに加え、次のような諜報・謀略工作要員がこれに戦列に参加するであろう。

  • 万景峰号内に潜伏している諜報・謀略工作要員――万景峰号の定員は350名となっているが、三池淵管弦楽団の140人の宿泊・収容の他に、なお200ほどの要員を収容・搬送できる。これらの要員は、文在寅政権の「寛大な措置」で、船から出入り自由となるだろう。
  • 日本から、○○○傘下のスパイやスリーパー(潜伏内通者)
  • 韓国に潜入しているスリーパー(潜伏内通者)

 

  • 来韓が予想される北朝鮮の情報機関

今次五輪に来韓し、諜報・謀略工作に関わる北朝鮮の情報機関は、大別すれば①朝鮮労働党中央委員会政治局傘下の情報機関と、②人民武力部総参謀部傘下の偵察局が主体であろう。

平昌五輪・パラリンピックで来韓する北朝鮮代表団は、殆どが上記の情報機関から派遣された工作員と考えるべきであろう。

朝鮮労働党中央委員会政治局傘下の情報機関としては、次のようなものがある。

  • 対外連絡部――対韓国工作
  • 35号室――韓国及びその他の諸外国(日本、アメリカ、東南アジアなど)におけるテロ活動、情報収集、抱き込みなどの工作活動
  • 統一戦線部――韓国との対話を担当するなど、「表の顔」を持つ情報機関で、南北会談の主管、朝鮮総連などの海外同胞(朝鮮人)の工作事業、韓国に対する心理戦、宣伝工作、韓国の左翼勢力の指導を任務とする。
  • 作戦部――平時の任務は、工作員に対する基本教育訓練、工作船及び潜水艇による工作員の派遣・復帰、韓国におけるテロ工作及び侵入ルートの開拓など。有事の際は、韓国に侵入し、ゲリラ活動を行う。

 

人民武力部総参謀部傘下偵察局の任務は、軍事作戦のための情報活動であり、「武装工作員の養成及び韓国への派遣要人暗殺、破壊、拉致、軍事偵察、情報収集、固定スパイからの報告内容の再確認を行うこと」、となっている。

 

  • 諜報・謀略工作の具体的ミッション

 諜報・謀略工作の具体的ミッションとしては、以下のようなものが考えられる。

  • 韓国世論工作――反米・反日感情を醸成

朝鮮民族の一体感(南北親和)と反米・反日感情を醸成し、韓国から最大限の経済支援を引き出すとともに、韓国と日米との関係を分断し、トランプによる対北朝鮮軍事攻撃の「盾」として利用する。

この際、35号室や作戦部のテロのスペシャリストを用いて、日本人のテロに及ぶ可能性も排除できない。

  • 経済支援の獲得

制裁で苦境に陥っている北朝鮮は、先ず韓国の制裁を骨抜きにし、次いで欧州など日米以外の国々に人道支援を呼びかけ、制裁解除の世界世論を醸成する。

当面、万景峰号に積めるだけの現金(韓国政府の秘密資金、朝鮮総連からの献金)物資(制裁の禁制品特に核ミサイル用の資機材など)、金正恩用の贅沢品など)を掻き集めるだろう。

  • 平昌五輪・パラリンピック後の対米対応についての調整
  • 韓国政府とは、高官級代表団が秘密接触し、米国が延期した米韓合同演習を強行する場合の対応など、対米対応の大綱などについて調整。
  • 米国が延期した米韓合同演習を強行し、北朝鮮を軍攻撃する場合の対応については、秘密裡に韓国に潜入しているスリーパー(潜伏内通者)や、北朝鮮シンパに対し、特に北朝鮮特殊部隊が韓国内に侵入した際の協力要領について綿密に調整・指導
  • アメリカの先制攻撃が明白になった場合の対応。その場合は、北朝鮮が先制攻撃して、電撃的にソウルを占領し、韓国政府とソウル市民を「人質に取る」戦略に基づき、韓国に潜入しているスリーパー(潜伏内通者)や、北朝鮮シンパの作戦協力を綿密に指導。
  • 朝鮮総連などに対する指導
  • 日本の朝鮮総連からの使者に対する指導。とくに、献金の増額策の徹底と、米国の北朝鮮に対する攻撃の場合の日本国内での対応要領の指導。
  • 日本国内の潜伏スパイに対する指導。特に、在日米軍基地の監視の強化によるアメリカの対北先制攻撃の兆候の早期把握について指導。

 

○ むすび――平昌五輪・パラリンピックは「弾を撃ちあわない戦争」

 筆者は、北朝鮮の平昌五輪・パラリンピックを舞台に展開する北朝鮮の諜報・謀略工作は、「弾を撃ちあわない戦争」だと考えている。

問題は、韓国の文在寅政権が完全に北朝鮮シンパ――北朝鮮のエージェント――とさえ憶測されることだ。アメリカを敵として、南北朝鮮が「合作」している疑惑さえ感じられる。

もし、そうだとすれば、北朝鮮が平昌五輪・パラリンピックを舞台に行う諜報・謀略工作はフリーパスということになってしまう。

長い保守政権時代を担った、韓国軍はそれを容認するのだろうか。最早、クーデータを行うスピリッツは消え失せた――去勢された――ようだ。

国家情報院(KCIA)はもっと酷いようだ。幹部が北朝鮮シンパで固められているという。そうなれば、北朝鮮に対する防諜機能は「ゼロ」どころか、南北連合で北朝鮮主導の諜報・謀略工作を行う恐れすらある。彼らの敵は、米国のCIAなどとなろう。米国のCIAや米軍のDIAは、そのことを織り込み済みで、南北合作の諜報・謀略工作を追いかけていることだろう。

その一角に、日本の警察庁警備局・警視庁公安部や公安調査庁などからの派遣要員が割り込み、主として朝鮮総連がらみのエージェントをマークしているのかもしれない。

筆者にとっては、平昌五輪の競技よりも、アメリカと南北諜報機関の「水面下の諜報・謀略合戦」の方が気になるところである。

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