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難民の大量流入に備えよ!

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1 はじめに

朝鮮半島情勢の緊迫化に伴い、我が国の態勢上の不備が明らかになりつつある。また、関係省庁等の水面下の動きも活発化し、断片情報がニュースとして報道されつつある。それらは以下のとおりである。

 

①「避難民」想定の対処方針検討 

(2017.11.16 FNN)

朝鮮半島有事で、北朝鮮から日本に多くの避難民が押し寄せた場合を想定し、海上保安庁の巡視船が警戒を強化するなどの対処方針を、政府が検討していることがわかった。

(以下略https://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00376667.html

 

②日本への大量難民を想定、感染症対策を検討開始 マラリアなど流行も厚労省研究班

(産経ニュース 2017.11.13)

緊迫する北朝鮮情勢を受け、厚生労働省が有事に伴い大量の難民が日本にやってきた場合の感染症対策について検討を始めたことが13日、分かった。今年度中をめどに研究班が対策案を取りまとめ、国は医療体制や医薬品の整備などにつなげる方針だ。

(以下略 http://www.sankei.com/world/news/171113/wor1711130030-n1.html )

 

③麻生副総理「警察か防衛出動か射殺か」武装難民対策

(2017.9.24朝日新聞デジタル)

麻生太郎副総理は23日、宇都宮市内での講演で、朝鮮半島から大量の難民が日本に押し寄せる可能性に触れたうえで、「武装難民かもしれない。警察で対応するのか。自衛隊、防衛出動か。射殺ですか。真剣に考えなければならない」と語った。

(以下略 http://www.asahi.com/articles/ASK9R6DCPK9RUTFK00J.html )

 

④北朝鮮籍と見做される木造漁船の漂着等頻発

・1月23日 北朝鮮の遭難(?)漁船漂着、男性8人保護 秋田県 由利本荘市

近隣住民の通報を受けた警察が国籍不明の男性8名を保護した。

エンジン故障で一ヶ月にわたる漂流の後に漂着したという。冬の荒海の日本海を木造漁船で良くも一ヶ月にわたり漂流生存できたものだと感嘆せざるを得ない。本当に漁船なのか、疑問もあるが・・漁船が消えたというが、警察は出し抜かれたか?

このことは、如何に粗末な木造船であっても、日本に漂着することは可能であることを如実に示している。

・北朝鮮籍と見られる木造船の発見が相次いでいる。石川県舳倉島沖、山形県鶴岡市の鼠ヶ関港沖、北海道松前町沖合無人島、青森県佐井村、秋田県男鹿市海水浴場では男性8人の遺体のある木造船等々である。

http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20171128-118-OYT1T50148/newstop

 

これらのニュース報道から窺い知ることが出来るのは、朝鮮半島有事の際には、相当数の難民が日本に流入する可能性がありながらも、我が国にはそれに対処するに十分な態勢が整っていないという戦慄的な真実だ。

本稿では、朝鮮半島有事の際に予期される大量難民の流入対応について現状と対応策を概括的に検討する。断っておくが、平時における日本の難民政策の是非を論じるものではないということだ。

 

2 朝鮮半島有事と難民の発生・日本流入について

(1)「避難民」と「難民」の違いについて

避難民と云い、難民と云い、その違いを明確に意識して使用していないが、PKO本部等のHPによれば、

難民とは?国内避難民(IDP)とは?

どのような人々が難民と呼ばれるか、これには条約による明確な定義が存在し、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」と定められています。 「難民条約」によって、難民が享受できる基本的な権利と、難民受け入れ国の義務も明確にされています。

一方、国内避難民(IDP)はどのような人々でしょうか?国内避難民には、明確な法的定義が存在しません。状態を表す定義(descriptive definition)として、紛争や政治的な迫害、そして災害等によって『非自発的な移動を強いられている』人々で、『自国の中に居る人』が、国内避難民と呼ばれます。

簡単な見方をすれば、国境を越えたか、越えていないかが難民と国内避難民の大きな違いになります。』http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/atpkonow/article051.html

即ち、朝鮮半島情勢の緊迫化によって、日本に避難する者が難民と呼ばれ、所謂「難民条約」で保護される。

難民条約で規定されている難民は「条約難民」だ。他に難民についての関連語彙としては、偽装難民、武装難民、戦争難民,boat people等がある。

 

(2)益々きな臭くなった朝鮮半島

国際社会の度重なる非難決議や制裁決議等を無視して、核・ミサイル開発と実験に狂奔する北朝鮮に対して、米国は「テロ支援国家」に再指定し、独自制裁を強め、空母打撃群の展開、戦略爆撃機に飛行、日本や韓国との共同訓練を行い軍事的圧力を掛けている。また、大統領のアジア歴訪において、アジア諸国に強力に働きかけている。トランプ政権はあらゆるオプションはテーブルにあると言明しており、中国の働きかけにも拘わらずに北朝鮮が妥協する兆候は未だ見えず、朝鮮半島の緊張がいやがうえにも高まっている。

11月29日未明、北朝鮮は9月15日来の沈黙を破り、ICBM級と目されるミサイル(北朝鮮名「火星15」)の発射実験を行った。秋田県西方沖のEEZ内に着弾し、我が国のEEZ内着弾は7回目となった。

北朝鮮のミサイル開発は最終段階である。米国も行動を起こさざるを得なくなってるのではないかとも思える。米朝の軍事的衝突は不可避であるとも思える。第二次朝鮮戦争のように北の先制攻撃により開始されるのか、それとも米軍の先制奇襲攻撃が行われるのかは定かではないが、軍事的衝突が起きる可能性を考慮して種々の対策を立てることが重要だ。

 

(3)日本流入難民数の想定等

朝鮮半島有事の際に、朝鮮半島からの避難を考える際に、日本の地政学的地位は日本以外の国への避難のために中継地(経由地)としての価値をも有する。また、在日朝鮮人が多数存在し、文化的な近親感のある日本そのものへの避難を求める者も相当数に上ろう。

ア 日本への難民の入域

朝鮮半島有事の際に想定される難民は、北朝鮮籍及び韓国籍を有するものであり、海空の交通路を利用して、日本を目指すだろう。

日韓の地理的関係や政治的な近しさ等から韓国からの入域者が圧倒的に多かろう日本への朝鮮半島からの難民流入の規模については、武力衝突の時期、期間、様相等により千差万別であり、確定的なことは言えない。

イ 北朝鮮難民について

中朝国境には中国軍が展開するだろうし、DMZには地雷も敷設され、双方の軍が展開行動してだろう。そのような危険をも冒して陸上避難を敢行する者が相当数存在するだろう。更には、眼前の危険を回避して、海を越えて韓国や中国、更には危険を冒してでもと日本へと向かう可能性も高い。

NET上には幾つかの見積がアップされている。それを紹介して、流入規模の参考に供したい。

① 5万人説:net上で最も多く言及されているのが、半田滋氏著「自衛隊vs北朝鮮」(新潮新書)で機密文書として紹介された「K半島事態対処計画」に記述されているとされる数字である。同書では、日本には北朝鮮難民の20%に当たる5万人と韓国難民の50%に当たる22万人の計27万人の難民が押し寄せるとされている。(申し訳ないが、原文は未確認)

②10~15万人説:黒井文太郎氏は、「NEWS ポストセブン」(SAPIO 2016年8月号)で、「2007年、日本政府は、朝鮮有事で日本に流入する北朝鮮難民を10万~15万人と見積もった。これに韓国の避難民が加われば日本の治安当局の機能は麻痺。難民の暴徒化や北朝鮮の武装難民が上陸することも考えられる。」と述べている。

 

ウ 韓国からの日本避難(難民)

①開戦から3日~1週間に100万単位 ジャーナリストの辺真一氏

『第一次朝鮮戦争(1950年6月25日―1953年7月27日)勃発時には韓国から200万人が避難してきた。現在、韓国の人口は5千万人を突破している。その内たった1%でもその数は約50万に上る。今では輸送移動手段も多々あるので、おそらく開戦から3日~1週間の間に100万単位が押し寄せてくるものと推定される』と指摘している。(yahooニュース 2015/9/10(木) )

https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20150910-00049382/

尚、200万についてはその根拠不明。

 

② 上記イ項①で述べたが、韓国からは韓国難民の50%の22万人と想定されている。

 

③ その他参考になるような情報はない。

 

3 過去の難民対処事例等

(1)インドシナ難民

ボートピープルに対し、当初は①一時的な滞在のみを認める こととしていたが、難民が増大するにつれ、難民の定住化を求める意見が強くなり、②ベトナム難民の定住認可(1978年4月閣議了解)とした。定住枠の拡大等が行われた後 ③「合法出国計画」(1980年6月)の実施へと方針転換した。インドシナ難民国際会議で「包括的行動計画(CPA)」(1989年6月)が採択され、爾後難民流出は激減したとされる。

インドシナ難民定住受入れ数は、11,319人であり、その内訳は、

ボートピープル 31%、海外キャンプ滞在者41%、合法出国者21%、元留学生など 7%となっている。因みに、欧米諸国の受入れ数はアメリカ: 823,000人

オーストラリア と カナダ:各137,000人 フランス:96,000人

ドイツ と イギリス: 各19,000人となっている。

 

参考

合法出国計画:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)とベトナム政府との間で締結された「合法出国に関する 了解覚書」に基づき、家族再会や人道的なケースの場合に限りベトナムからの合法出国を認めるという計画(合法出国計画(ODP:Orderly Departure Program))が開始された。

 

(2)朝鮮戦争時の朝鮮半島からの密入国者数

密入国者数は相当数に上ると推計されているが、当然のことながら明確ではない。

防衛研究所 NIDSコメンタリー第32号(2013年5月15日)の庄司潤一郎氏の「朝鮮半島有事と避難を巡る問題―朝鮮戦争期を振り返ってー」によれば、「戦乱を逃れた密航者が増加、距離的に近い壱岐、対馬、北九州、関門、日本海側の各地域が上陸地となった。検挙者数は、2772人(1950年)、4425人(1951年)であったが、逃亡などを含めると実際の数は更に多かったものと思われる。(以下略)」

http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary032.pdf

 

朝日新聞(1955年8月18日)によれば、65万人(警視庁公安三課調べ)の在日朝鮮人のうち密入国者が10万人を超えているといわれ、東京入国管理局管内(1都8県)では、この昨年中のべ1000人が密入出国で捕まった。全国ではこのざっと10倍になり、捕まらないのはそのまた数倍に上るだろうという。

 

 

4 日本の難民対策の現状

(1)難民条約

難民の地位に関する条約は、1951年(昭和26年)7月28日の難民および無国籍者の地位に関する国際連合全権委員会議で、難民の人権保障と難民問題解決のための国際協力を効果的にするため採択した国際条約。効力の発生は1954年(昭和29年)4月22日。 この条約を補充するため難民の地位に関する議定書が作成され、1966年につくられ、1967年10月4日に発効した。2006年10月現在、加盟国数は条約・議定書ともに143カ国。難民条約と略称される。

条約は第1条で「難民」の定義を定め、それに該当する者に対して、国内制度上の諸権利と保護を与えるべき旨を規定している。本文は難民に対する人道支援や社会保障、帰化等について規定するが、とりわけ第31条は、「生命あるいは自由が第1条の理由で脅威にさらされる恐れのある地域から直接避難した者」に対して、その滞在の不法性に対して刑罰を科してはならないことを明記し、第33条は第1条に記された理由により生命や自由が脅かされる危険がある地域に何人も追放してはならない原則について規定している。

我が国においては、昭和50年代前半のインドシナ難民の大量流出を契機に、難民問題に関する議論が急速な高まりを見せた。これを受け、昭和56年6月の通常国会において、難民条約・議定書(1967年の難民の地位に関する議定書)への加入が承認され、昭和56年10月3日に難民条約に、昭和57年1月1日に難民議定書に加入、昭和57年1月1日から同条約・議定書が我が国について発効した。

難民条約への加入に当たり、従来の出入国管理法令を改正し、新たに難民認定制度を導入するとともに、法律の名称も「出入国管理及び難民認定法(入管法)」と改称した。我が国において、その外国人が難民条約に定義された難民に該当するか否かの判断(難民の認定)は、入国管理局が所管している。

難民として認定された人は、我が国で安定的に在留できるほか、永住許可要件の一部緩和、難民旅行証明書の交付が認められている。また、難民条約に定められた難民に対する各種の保護措置を確保するため、社会保障関係法令(国民年金法、児童扶養手当法等)から国籍要件を撤廃するなどの法整備が行われた。これにより、初等教育、国民年金、児童扶養手当、健康保険などについて、日本国民と同一待遇を受けられるなどの社会生活上の効果がある。

即ち、来る者は拒めないのであり、相応の待遇を与えるべき義務すら負っている。

 

(2)難民認定数について

欧米諸国は、難民認定に積極的で多数の受入れ人数の実績を持つ国も多いが、日本は実績が少なく、「閉鎖的」「反人権的」「グローバル時代への逆行」等の批判がある。欧米では特にシリア難民の大量受入があって、それが社会問題にもなっている。日本の難民認定数は、平成27年27人、平成28年28人という状況である。

認定申請数が少ないのか、認定に時間を要するのか、或いは厳しすぎるのか等々の課題はあろうが、瞬間的大量発生する難民を上手く捌ききれるのか、疑問なしとはしない。

 

(3)入国管理局の現状

出入国管理行政を行うための機構として,法務省に入国管理局が設けられている。実務機関として、地方入国管理局(8局),同支局(7局),出張所(61か所)及び入国管理センター(2か所)が設けられてる。

このうち、収容・送還の業務を行うのは、2ヶ所の入国管理センターであり、東日本入国管理センター(牛久市)の収容能力は、約700人、大村入国管理センター(大村市)は、約800人である。平時所要としては充分だとしても、有事所要に対応できるのか?

 

5 難民対応の問題点と対策

(1)(大量)難民対応の基本的手順

平時の場合には、条約難民或いはマンデート難民にしろ、法務省入国管理局において整斉と対処し得るものと思われる。

問題は、特定期間に大量の難民が日本のあらゆる所に押掛ける場合の対応であろう。

特に問題となるのは海路日本に入域することを企図する者への対応だ。朝鮮半島のあらゆる所から随時、漁船・小型船等により三々五々日本を目指す場合だ。

このような場合の対応は、先ず、

①海保等の船舶により、救助・収容して日本に移送するか、当該船舶を誘導或いは曳航して指定港へ移動させる。

②指定港において、入国管理局の入管審査等を受け、検疫を受け、所定の一時収容施設に収容することとなる。身元の確認や持ち物検査等を行う必要がある。日本に入域した難民に対する所要の支援も必要だ。

③スクリーニングをパスした者は、希望或いは指定された地域に移動して、地方自治体から所要の支援を受けることとなるのだろう。

空路の場合も、概ね同様の流れとなろう。

 

(2)警戒監視・救助収容・誘導等能力の絶望的不足

海上にける警察権の行使は、海保の任務である。不法入国しようとする漁船等を発見して、当該船舶乗船者の状況確認を行うべく臨検を行う必要があるが、海上保安庁の現巡視船では不十分過ぎる。四面環海の日本の海岸線の総延長は3万5千㎞にも及んでいる。日本海側を重点的に監視警戒するにしても、余りにも膨大過ぎる。海上監視は勿論、陸上監視能力も余りにも脆弱だ。

不審船対応で苦汁を舐めた日本は斯かる点は大分改善されているものと信じたいが・・

重点海域である特定正面に重点配置するとしても余りにも穴が多すぎる。

 

(3)一時収容場所能力の絶対的不足

仮に、所要の難民を指定された港に移送したにしても、滞留する避難民(難民)を一時的に収容する必要がある。2ヶ所の入国管理センターでは絶対数が足りない。そのような収容所を誰が何処に設置し管理・運営するのか、現時点では明確になっていない。陸上自衛谷演習場(廠舎等の活用)を活用する案もあろうが、当時の状況において陸上自衛隊はより緊要な任務に従事していると考えられ、収容施設の管理・運営は無理だろう。

ただ、阪神淡路や東日本大震災時には各地で相当数の避難者を受け入れた経験があり、自治体や民力の活用が出来れば、出来ないことはないかも知れない。

言語習慣の差異もあり、同胞に対する避難支援と同じレベルが期待できるか否か疑問もある。

 

(4)スクリーニング(難民審査)能力オーバー

当該避難者が難民に該当するか否かの審査が必要である。否もっと言えば、当該者が悪意を持って日本に入域しようとしているのか否かを判断することが重要だ。入国管理センターが所掌するが、平時態勢から一気に拡充することが可能だろうか?

 

(5)収容施設と難民管理態勢

入国管理機関での入国審査等が終了し、難民と認定された者以外は、基本的には強制送還されるべきだが、それが許される状況ではない。とすれば、それまでの間、何処かの場所に所要期間収容する必要があろう。何処に設置し、誰が管理運営するのか明確ではない。日本の法体系の想定外の事態なのだろう。

確かに大震災時には、それなりの収容施設が準備できたが、地方自治体が多数の難民を収容する施設の提供等に容易に同意するとは思えない。

 

(6)自衛隊や警察、そして海保も他の優先任務に従事の要

難しい問題が起きると直ぐに自衛隊に担って貰えば良いではないかとの論が出るのが常だが、自衛隊にしろ、警察にしろ、多くの任務を果たさねばならず、難民対応に割ける勢力には限りがある。とすればどうするのか?

地域の治安維持は地域の消防団、自主防災組織や、更には新たに創設育成した自警団等に担当して貰うことを検討すべきだろう。民の力をも活用せざるを得ないのだろう。民に出来ること出来ないことを峻別し、仕分けすべきだろう。

 

(7)工作員や武装難民の混入対処

特に北朝鮮からの難民には注意が必要だ。朝鮮半島における作戦を有利にすべく、工作員や武装難民を送り込む可能性が無視できないというより、北の常套作戦であろう。日本の難民審査は、そのような事態を全く想定していない筈だ。見極めるノウハウが欠如している。

また、一時収容施設から逃散した者の中には工作員や破壊任務従事者が多数居る筈だ。原発や政経中枢等の重要警護対象や在日米軍基地等の警備に万全を期す必要がある。

第一義的には、警察の役割だが、もぐら叩き的な様相ともなるだろうし、状況に応じ自衛隊による対応が必要となる。

自衛隊には、治安出動の発令や警護出動をも予期せざるを得ない。これらに至る以前においては警察に対する支援後拠たる役割をも期待される。

 

 

(8)法的不備等

このように見てきたが、根本的な問題は、このような非常事態に対処する法律がないという事であろう。また、大量難民流入が想定されるならば、それにどのように対処するかの国家的な対策が講じられていなければならないが、現状はどうか?

一般的な難民対応の所管は、法務省であり、厚労省であり、地方自治体に関連するので総務省も、海保を所管する国交省も、当然防衛省も関係するはずだし、それらを統括総合調整する内閣官房も関係するはずだ。現状はそれぞれの省庁の任務に応じて相互調整するのみだろう。が、果たしてそれで万全か?

また、大量難民流入に対する基本的方向も見えない。超法規的に、全ての避難民の一時的・暫定的な入域を認めて、所要の収容施設に収容管理して、事態の推移に応じ逐次に平時態勢に移行するのか?それとも、現状の態勢のままで滞留を厭わないのか等々、時の政府の決断にかかっている面もあるが、その根拠すらない現状だ。

朝鮮戦争時には韓国から亡命政権を日本に創設したいとの話もあった(既述NIDSコメンタリー第32号による。)ようだが、同様な話も在り得るのか?当時の話では、亡命政権は6万人規模とされていたようだ。何れにしろ、韓国とは歴史認識問題でスムーズな外交関係が期待できないが、朝鮮半島有事における韓国民の日本避難に関する協議があっても良い筈だ。とは言え、現韓国政権では無理だろう。

 

6 終りに

想定外に備えるのが危機管理であり、考えたくないことを考えて準備するのが大政治家の任務でもある。

漠然と国民が不安に感じていることを解消すべく、難民に対する対応策を検討し、所要の態勢を整えて欲しいものだ。

由利本荘市の漂流漁船員の突然の来訪を受けた家族は、仰天したと伝えられているが、然もありなんだ。そのような状況が全国各地で惹起する可能性がある。国民の不安解消は国家の重要任務だ。

本項で述べたことは既に処置しつつあると期待したいものだ。

(F)

 

 

 

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若狭 勝 弁護士 元検事、前衆議院議員

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