等閑視できない「パリ同時多発テロ」 自衛隊の対テロ戦(テロ対策)の現状と課題
(2015年11月25日)
○ 等閑視できない「パリ同時多発テロ」
2015年11月13日金曜日のパリで同時多発テロが発生し、改めてテロの恐怖と対応の困難さが確認された。来年の伊勢志摩サミットや2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えたわが国にも大きな衝撃とともに深刻な課題を投げ掛けた。
テロは、一般的に、弱者が敵と見なす相手の強みを避け、その弱みに対して予期できない、あるいは従来型ではない斬新な方法で攻撃する「flanking operation(翼側からの作戦)」を特徴とし、マスメディアを巧みに利用してその政治目的の達成を謀ろうとする。
テロの国際化が日常的となった今日、その予防・対処には司法・警察のみならず、情報、軍事、外交、経済等の各種手段を総合的に運用するとともに、各国、国際機関、国内関係機関、NGO などとの広範な連携が欠かせない。
法制上、テロなどの不法行為に対しては、第一義的に警察機関が対処することとされている。しかし、今般のパリ同時多発テロにおいては、警察・軍あわせて10万人以上が動員された。テロの規模が拡大し、武装がエスカレートするなど、一般の警察力をもっては治安を維持できないと認められる場合には、警察の支援後拠として活動する任務を負っている自衛隊の役割は急速に高まり、その対テロ戦(テロ対策)の能力と態勢がわが国の対テロ戦(テロ対策)の成否を左右するといっても過言ではない。
そこで、本稿では、自衛隊の対テロ戦(テロ対策)の現状と課題について、公刊資料を基にその概要を紹介することとする。
ソフトターゲット、すなわち非武装の一般市民を標的にしたパリ同時多発テロは、いつでも、どこでも起こり得るとの認識が国際社会で広まっており、わが国としても決して等閑視できるものではない。この<不都合な真実>を直視し、すべての国民がテロのもつ残虐さと隣り合わせに生きているとの自覚を持ち、不断の備えを怠らないことが重要である。
その意味で、本小論がわが国の対テロ戦(テロ対策)を考える上において、国民の理解を深める一助になれば幸いである。