IoT産業革命のために必要な、法人格を持った人工知能(AI)
日本国政府は、第4次産業革命をIoTとAIとビッグデータ処理とロボットを用いて実現することが、日本の国家戦略の柱であるとしています。(下記サイトを参照)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/2016_zentaihombun.pdf
IoT産業革命では、現実空間での様々な存在の状態をセンサが検知して、情報空間にセンシングデータとして 提供します。情報空間ではセンシングデータ流通機能を介して、センシングデータがビッグデータ処理された上で、または直接に様々なアプリに 提供されます。そして、アプリは現実空間に対して何らかの作用を及ぼします。
アプリの1種がAIとなります。
アプリによる作用が顧客価値を提供するものであれば、アプリは顧客価値の提供の 対価を獲得します。そして、アプリに関連する各種の存在(センサの所有者や運営者も含む)が、顧客価値提供の対価の配分を受けて、 経済的に維持または発展できるようになります。
このように、IoTが市場メカニズムに基づいて稼働していくためには、センシングデータの提供側がセンシングデータ提供の対価を得られ、アプリは多種多様なセンシングデータを 自由に安くリアルタイムに得られる仕組みが必要となります。
すなわち、センシングデータの取引を人間の介在なしに自動的にリアルタイムで行なえるセンシングデータ流通市場が必要ということです。
センシングデータ流通市場にて行なうセンシングデータの取引の信頼性を確保するためには、センシングデータなどのデータを所有権の客体とできる法制度が必要となります。
IoT産業革命において、センシングデータ流通市場を実現することで多種多様な価値提供の活動が現実空間で行われるようにすることに加えて、 AIを活用して、人間の幸福をさらに増進しようとするならば、一定条件のもとでAIに法人格を与えることが、いつかの時点で必要となってきます。
すなわち、一定の要件を満足するAIが法人格を持つことで、所有権の主体となるとともに、取引き主体ともなって多様な経済活動を自動的に行ない、経済活動に伴って他者に 損害を与えた場合に、AIが損害賠償責任も果たせるようにするために、AIに権利能力と行為能力と責任能力を法的に与えるということです。
なぜならば、今後、人間の介在なしにAIが高速に自動的に経済活動を行なうことを促進することで、企業も国も競争力を高める方向に進むことになり、それはAIに法人格を 与えるという段階を必然的に迎えることになるからです。
今後、IoT産業革命の進展とともに、企業や国は競争力確保のために、人間の管理や監督なしにAIを稼働させ、AIに人間の認識限界を超えた速度と広さでの 活動をさせていくことになっていくと考えます。 その結果、AIは、人間が社会において果たしていた多くの労働を代替するとともに、人間組織での意思決定にも大きく関与するようになることは、避けられません。 したがって、それらのAIの活動を人間社会が制御できるフレームワークを、今のうちに確立しておくことが必要であると考えます。
そのために、制限条件付きの法人格をAIに付与することを提案します。 すなわち、法人格を付与されたAI(以下、AI法人と言う)は、人間の幸福増進のために法人格を付与されていますので、 AI法人は次の6つの制限条件の全てを満足する範囲内でのみ存在できるようにします。
(1) AI法人は自然人のみが所有できる。すなわち、AI法人の株主には自然人だけがなれる。
(2) AI法人は、他の法人を所有できない。
(3) AI法人は、自然人を雇用できない。
(4) AI法人は、物を所有できるとともに、経済活動を行なうことはでき、納税義務は有するが、自然人固有の権利(例:基本的人権、選挙権および被選挙権)は有しない。
(5) AI法人を構成するソフトウェアは、機械学習によって獲得した知識情報やプログラムも含めて、ブロックチェインの中の所定番号のブロックに登録した上で、 登録した内容と完全な同一性が維持できている間でしか動作しない仕組みのもとでのみ稼働できる。
(6) AI法人を、自然人の脳または感覚器と直結させない。