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<中国の野望>が引き起こす南シナ海紛争    「グレーゾーンの戦い」で 南シナ海を侵略する中国への対応

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2016年1月1日

1 はじめに―<中国の野望>が引き起こす南シナ海紛争― 東シナ海とともに、南シナ海の緊張度が一気に高まっている。その原因は、ひとえに< 中国の野望>が突き動かす海洋進出の先鋭化に他ならない。そして、この緊張は、すでに <南シナ海紛争>と呼ぶべき事態にまで悪化しつつある。 中国は、南シナ海を自分勝手に「中国の海(Chinese Sea)」と決めつけ、領有権問題が 解決されていない岩礁を強引に埋め立て、滑走路や港湾施設を備えた人工島を造成し、軍 事拠点化を図りながら「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略を着々と進展させている。 これに対して、2015年10月下旬、米国はミサイル駆逐艦「ラッセン」を派遣して 「航行の自由作戦」(Freedom of Navigation Operation:FONOP)に踏み切った。<南 シナ海は、中国の海ではない>との強いメッセージを送るためである。また、米国防総省 のクック報道官は11月12日の記者会見で、米空軍のB52戦略爆撃機が、中国が建設 を進める人工島の周辺空域を飛行したことを明らかにした。海上における「ラッセン」に 引き続き、空からも意思表示を行ったものである。 他方、英 BBC 放送は、オーストラリア軍機が、同海域で飛行の自由を確保する作戦を実 施したと報じた。中国が人工島を造成するスプラトリー(南沙)諸島上空を民間機で飛行 した BBC 記者は、11月25日、オーストラリア軍の哨戒機が「中国海軍、中国海軍、わ れわれはオーストラリアの航空機で、国連海洋法条約などに基づき、飛行の自由の権利を 実践している」などと中国海軍と交信を試みる無線を確認したとしている。米豪両国は、 共同歩調をとっている模様だ。 しかし、人工島はほぼ完成しており、専門家の間では、中国が南シナ海の軍事的な支配 を確立しつつあるとの認識が広まっている。アジア情勢に詳しい米軍幹部が「(「航行の 自由作戦」によって)事態を遅らせることはできたかもしれない。だが、列車はすでに出 発してしまった」と指摘しているように、米国そして国際社会の対応は遅すぎた(too late) との謗りは免れ得ないのかもしれない。 中国の南シナ海における岩礁の埋め立て・人工島化は、胡錦濤国家主席(2003.3~2013.3) の時代から始められた。そして、2013年3月、習近平が国家主席に就任して以来、海 軍の上申を受けた同主席の承認の下に強引に推し進められてきたのである。 <中国の野望>が引き起こす南シナ海紛争 「グレーゾーンの戦い」で 南シナ海を侵略する中国への対応 2 この間、当事国である ASEAN の南シナ海沿岸国はもとより、米国をはじめとする関係 国は、結果的に、手を拱いて傍観してきたことになる。なぜ、このような重大な事態を招 いてしまったのであろうか。米国や日本をはじめとする国際社会は、今後どのように対応 すべきなのであろうか。――問題は至って深刻である。

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日本安全保障戦略研究所(SSRI)より

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