Home»オピニオン»日本の民法における所有権の客体とデータ所有権について

日本の民法における所有権の客体とデータ所有権について

0
Shares
Pinterest Google+

日本の民法(以下、民法と言う)では、所有権(民法206条)の客体である「物」を有体物であると規定しています。(民法85条)
そして、有体物の解釈としては、「空間の一部を占めるもの(有形的存在)」(参考サイト1、参考サイト2)とする有体性説があります。
有体物の他の解釈としては、「法律上の排他的な支配が可能である物」であるとする管理可能性説もあります。(参考サイト2)

しかし、有体物の本質は本当に空間の一部を占めるもの(有形的存在)と言えるのでしょうか?

民法では物を動産と不動産に区分し、土地は不動産であるとしています。(民法86条)

ここで言う土地とは、土や岩石やセメントなどの物質でしょうか?それとも地球上の3次元空間内の一定の部分空間領域でしょうか?
土地の登記事項証明書にて、所有対象の土地は地番で特定しています。そして、その地番で示される領域は地積測量図によって地球表面の部分空間を境界線で囲まれた 閉領域として表現しています。
すなわち、民法でいう物(有体物)の1種である不動産の中の土地は物質ではなく、境界で範囲を特定された部分空間領域であることがわかります。
そして、その部分空間領域が固体で占められていればその部分空間領域を土地と呼んで所有権の対象として管理しているにすぎず、その固体が津波や地震で移動しても、 所有権の対象の土地が移動したとはしていません。

言い換えるならば、所有権の客体としての土地は「ものに占められた空間の一部」であって、「空間の一部を占めるもの(有形的存在)」ではありませんので、これまでの有体物の解釈 である「空間の一部を占めるもの(有形的存在)」は、間違いであると考えます。

すなわち、民法で言う物(有体物)には動産と不動産があり、不動産には土地を含むことから、有体物とは、形のある物質に限定した概念ではないことは明白です。
有体物の本質は「境界によって他と区分して支配できる存在」であると考えます。
なぜならば、物質でできた人工物(テレビ、机)や、自然物(庭石、大根)は、その表面が他との境界であり、土地は地積測量図に表現された境界線が他との境界であり、 両者とも境界によって他と区分して支配できるからです。

上記のように、土地も含めて有体物を解釈するならば、「空間の一部を占めるもの(有形的存在)」とする有体性説での解釈よりも、 「境界によって他と区分して支配できる存在」とする解釈(境界区分説と名付ける)の方が妥当です。

有体物を、「法律上の排他的な支配が可能である物」であるとする管理可能性説は、所有権の客体としての有体物の解釈に、所有権と同義と言える「法律上の排他的な支配が可能である」 を入れているので、同義語反復(トートロジー)となっており、解釈として使うには難点があると考えます。

所有権の客体としての有体物を、「境界によって他と区分して支配できる存在」と解釈とした場合、何が変わるのでしょうか?
例えば、「他と区分して支配するための境界」が、電波の周波数軸上に設定された境界である場合にも、周波数帯に有体物の概念を適用して土地と同じように所有権の客体にできます。

有体物の概念は、情報空間内に設定された境界にも適用できます。インターネットで使用されるURLにおけるドメイン名構造はルートノードを起点としたツリー構造を しています。ツリー構造の中で支配する範囲を、ノードを境界として設定して区分することもできます。1つのコンピュータのディスクの中にもディレクトリーが ツリー構造で設定されており、ディレクトリーによって管理されているファイルの指定までできるようになっています。

ドメイン名およびディレクトリーによってツリー状に管理されている膨大なデータを、ツリー内のノードを境界として設定して区分して支配することもできます。
これは、データの記憶場所に応じてデータを区分して支配するものであり、データを所有権の客体である有体物とするという事を意味します。

しかし、この方法だけでは、データの支配は不完全です。なぜならば、データは簡単にコピーできますし、簡単に記憶場所を移動させることができるためです。
そうなると、データの内容に基づいた境界を設定してデータを区分して支配する手段も、データ所有権の支配力を高めるためには必要ということになります。

ブロックチェイン技術では、データブロックをチェイン状に連結してブロックチェインを形成し、ネットワークを構成する多数のノードでブロックチェインを共有します。(参考サイト3)

その結果、ブロックチェイン内のブロック番号およびブロック番号で指定されたブロック内の管理番号を用いて、所有権を主張すべき客体であるデータを他のデータと 区分するための境界を設定して支配することができます。
しかも、ブロックチェイン技術ではブロック内のデータのほんの一部でも内容を変更すると、ブロック間のチェインに矛盾が生じますので、ブロックチェインを構成している データブロック内のデータは無変更の保証がされます。その結果、ブロックチェイン内のブロック番号とブロック内管理番号を用いて、無変更の保証のあるデータを所有権の客体 とする支配意思を示すことができます。しかも、ブロックチェインでは、ネットワークを構成する多数のノードでブロックチェインを共有していますので、 それらのノードを社会的公正を実現できるように社会内に分配して配置することで、社会的承認を得る」事を分散型アーキテクチャとして可能とします。
すなわち、ブロックチェイン技術を用いることで、データを所有権の客体とすることができるということになります。

【参考サイト】
1. 民法上の物
http://www.minpou-matome.com/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%B7%8F%E5%89%87/%E7%89%A9/%E6%B0%91%E6%B3%95%E4%B8%8A%E3%81%AE%E7%89%A9/
2. 物(法律)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9_(%E6%B3%95%E5%BE%8B)
3. ブロックチェイン技術の本質機能とその発展型について
http://www.patentisland.com/memo368.html

Previous post

<中国の野望>が引き起こす南シナ海紛争    「グレーゾーンの戦い」で 南シナ海を侵略する中国への対応

Next post

いま改めて「TPP興国論」を論ず