聖人と教皇の教え
初めにアシジの聖フランシスコ( 以下聖人と呼ぶ)と教皇の教えの違いを考えてみたい 。私には、聖人の教えはもっぱら神の前における 個人の信仰と生き方についてのものである一方、教皇のそれは2014年に発表された使徒的勧告福音の喜びでも …
世界の現状 前回私は、私自身が非常に幸福と感じる暮らしをさせていただいていることに感謝し、なぜ私に、これほどの幸せが与えられるのだろうかと疑問を抱くほどだと述べた。しかし、この世界には反対になぜ私に、これほどの不幸がもたらされるのだろうかと疑問を持つ人々のほうが圧倒的に多いことだろう。まず所得水準から世界の統計を眺めてみると、世界の発展途上国の人々のうち、十三億四千五百万人が一日一ドル二十五セント以下で生活している…
教皇の訴え 教皇フランシスコは二〇一四年に発表された使徒的勧告『福音の喜び』 において、世界中で進む所得格差に関して以下のように述べられた。 少数の人の利益が飛躍的に増大する一方、大多数の人はこの幸福な少数派の得る裕福さからますます遠ざけられています。こうした不均衡は、市場の絶対的な自律性と金融投機を擁護するイデオロギーに由来します…
聖人が歌った「被造物の賛歌」 聖フランシスコはこよなく動物や自然を愛したが、聖人は基本的に宇宙の中に存在する「小さき者」 である自分を意識しておられたのではないだろうか…教皇は、個人の心の中の平和、人間社会の平和、そして地球の平和は切り離しえない一つのものだと説いておられる。前教皇ベネディクト十六世も、人間が無責任に自然環境と社会環境を破壊することは悪魔のなせる業わざだと指摘された…
第5~7回 聖フランシスコの清貧の精神と現代社会