Home»オピニオン»“仮想”「南北首脳秘密会談」

“仮想”「南北首脳秘密会談」

0
Shares
Pinterest Google+

情報メモ31

2018.1.26

はじめに――元駐日韓国大使館公使の警鐘

SAPIO誌2018年1・2月号(1月25日)に、「元駐日韓国大使館公使が警鐘『青瓦台は反米親北勢力に乗っ取られた』」と題するショッキングな記事が掲載された。

この記事は、洪熒(ホンヒョン)氏の警鐘を紹介したものだ。洪氏は、韓国陸軍士官学校を卒業後、野戦部隊の小隊長などを経て、国防部勤務。外務部へ転職後、駐日韓国大使館で参事官と公使を務めた。退官後、早稲田大学客員研究員、桜美林大学客員教授を経て、現在、「統一日報」論説主幹。

警鐘のポイントは、「文在寅大統領の就任から8カ月、青瓦台(韓国大統領府)は反米親北勢力に乗っ取られた。親北勢力は、『韓国そのものを平壌に捧げよう』という強い信念を持っている」、である。

記事は、本稿の末尾に参考資料として添付する。

以下の稿は、「青瓦台は反米親北勢力に乗っ取られた」ことを前提に(仮定して)、南北朝鮮が水面下で秘密裡に進めているかもしれない南北首脳秘密会談の様子・内容を仮想したものである。

文在寅韓国大統領の発言を「文」、金正恩朝鮮労働党委員長の発言を「金」と表記する。

○ “仮想”「南北首脳秘密会談」

 ピョンチャンオリンピッ(2月9日~25日)とパラリンピック(3月9日                                 ~18日)が間近に迫ってきた。平昌五輪を巡る南北間の協議は、「ピョンチャン五輪ではなく、ピョンヤン五輪」と言われるほど北朝鮮主導で進んでいる感がある。

そもそも、平昌五輪を巡る南北間の協議は、金正恩が文在寅に、「平昌五輪に北朝鮮代表団を派遣する用意がある。当局同士の協議も可能だ」、と呼びかけたことから始まり、短期間に一気に進展したものだ。

北朝鮮が応援団約230人、管弦楽団140人、テコンドーの模範演技団約30人も派遣するほか、パラリンピックにも150人の代表団を派遣すること、アイスホッケー女子で南北合同チームを結成することや開会式で朝鮮半島を描いた「統一旗」を先頭に南北合同で入場行進することなどを短期間に合意する様子を見て、これは予め水面下で密かに協議して、周到に準備していたからではないか、と言う疑念が湧く

 この疑念は、洪熒元駐日韓国大使館公使の――「青瓦台(韓国大統領府)は反米親北勢力に乗っ取られた」――という指摘(警鐘)を見れば合点がいく。

以下は、「南北が既に『合作体制』を構築し、文在寅韓国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が緊密な連携・協力していること」を前提に、“仮想”の「南北首脳会談」(電話会談)の議事録である。

 

  • 南北は味方で、敵は日・米・中・露と韓国内の保守勢力

「文」:かねてからのシナリオ通り、金委員長の新年の辞に始まる平昌五輪の南北協力は上手く行っておりますね。

「金」:その点については、文大統領の際だったリーダーシップに感謝しております。

「文」:いずれにせよ、我々南北は血を分けた同族で味方同士、敵は日・米・中・露ですよ。

「金」:我々は、第二次世界大戦後の米露の占領が始まりで、こうして南北に分断されたまま70年余も経ちます。東西ドイツが1990年に統一された今、朝鮮民族のみが分断されたままです。文大統領在任期間に、協力して分断を克服したいものです。

「文」:おっしゃる通りですね。これまで、朝鮮半島問題の解決は米・中・露が“主役”で、南北朝鮮は“脇役”に追いやられていました。今後は、我々が“主役”になり、トランプ、習近平、プーチンや安倍などの介入を排除し統一を推進しましょう。今後、統一問題は、「南北朝鮮合作」で行きたいものです。

「金」:文大統領、そのことこそ、父の金正日が打ち立てた「主体思想」の神髄だと思いますよ。米中露日の介入を排除して、「政治の自主」を確保しましょう。ところで、前大統領の朴槿恵も、我々の謀略(筆者注)で追い落とし、文大統領の誕生を後押ししました。プーチンがトランプを後押ししたのと同じですよ。もっとも、トランプはドジを踏みましたがね(笑)。

 

筆者注:元駐日韓国大使館公使の洪熒によれば、「そもそも、朴槿恵前大統領が弾劾された発端は、親友である崔順実のタブレット端末から、修正された大統領演説文が見つかったという左派系有線テレビなどの捏造・煽動報道だった。」と述べている。

 

「文」:朴槿恵を支持した、韓国の保守勢力もわれわれの敵で、制圧する必要がありますね。

「金」:勿論そうですね。韓国の「国家情報院(KCIA)の改革発展委員会」の委員長である丁海亀などに命じて、保守派要人のスキャンダルをでっち上げ、粛清すればよいでしょう。軍の高級幹部も反米親北勢力と入れ替えるべきです。ただし、朴正煕や全斗煥の例もありますから、韓国陸軍のクーデターには気を付けてくださいよ。

 

  • 北朝鮮の核ミサイルは韓国を狙わない

「文」:アメリカの著名な戦略家のエドワード・ルトワック (米CSIS戦略国際問題研究所シニア・アドバイザー)は、1月9日付のニューズウィーク誌やシカゴ・トリビューン紙などに「It’s Time to Bomb North Korea」と題する記事を寄稿し、「ソウルが火の海になっても、北朝鮮がアメリカに届く核ミサイルを完成させる前に、核関連施設を破壊すべきだ」主張しています。

「金」:朝鮮戦争以来、米韓同盟を結んできたアメリカがそんなことを言うとは!気でも狂ったのかな。でもそれが、アメリカの本心かもしれないなあ。しかし、文大統領、我々の信頼関係に基づき、核弾頭搭載のミサイルはもとより、野戦砲や多連装ロケットを韓国に撃ち込み、ソウルを火の海にすることはありません。ご安心ください。

我々の「矛先」は、日本、在日米軍基地、グアムあたりに向けています。

「文」:そう言って頂ければ安心だ。南北の秘密裡の信頼醸成の重要さが、納得できました。

 

  • 平昌五輪後の対米対処協力

「金」:平昌五輪では、「南北親和・信頼の情勢」、「韓米・韓日離間」、「制裁の骨抜き」を達成できればいいですね。

「文」:平昌五輪に合わせて公演する会場を視察するため、韓国入りした北朝鮮の三池淵(サムジヨン)管弦楽団の玄松月(ヒョン・ソンウォル)団長はいい女ですね。

「金」:才色兼備の、それどころか、政治力もある姉御ですよ。美女軍団も生え抜きの連中を送りますよ。

「文」:それは楽しみだ。男どもは、女には弱いですね。きっと、緊張した雰囲気が一気に和みますよ。親北勢力の獲得にも力を発揮しますよ。

「金」:ところで、平昌五輪後もアメリカの暴挙――先制攻撃――は何としても阻止しなければならないですね。

「文」:勿論ですよ。私がトランプに、「今南北会談が緒に就き始めたので、延期した米韓合同演習は中止してくれ」と、強く言いますよ。

「金」:クレージー・トランプが、何としてもやるといえば、その時は私の出番です。米朝対話に応じるそぶりをしますよ。実際に、やってもよい。対米交渉ではのらりくらりとアメリカの要求を躱し、手玉に取るのは得意中の得意です。11月の中間選挙を見据えて、揺さぶってやりますよ。

「文」:ただ、韓国としては当面、韓米関係は温存します。なぜなら、韓米関係が破断すれば、韓国による対米コントロールができなくなります。そうなれば、トランプに北朝鮮攻撃のフリーハンドを与えることになりますから。

「金」:その点は、同意します。どうか、アメリカに対しては面従腹背で、実利を取るという基本戦略で行きましょう。

 

  • 南北統一は北朝鮮方式の「高麗民主連邦共和国」構想で

「文」:南北統一は、「高麗民主連邦共和国」構想で行きましょう。ご承知の通り、この構想は、委員長の祖父の金日成主席が、1980年10月10日に朝鮮労働党成立35周年を記念して行われた第6次朝鮮労働党大会に於いて、軍人出身の全斗煥第11代大統領政権の韓国サイドに提唱した統一方法ですよね。この構想は、「自主・平和・民族大団結による統一」というスローガンのもと、「一民族・一国家・二制度・二政府」の下で連邦制による統一を目指すものですね。

「金」:祖父の構想をお認め頂き光栄です。是非それでやりましょう。この構想を完成するには二つの基本条件を満たす必要があります。一つ目は、イデオロギーです。父の金正日が打ち立てた「主体思想」こそが、「高麗民主連邦共和国」のイデオロギーですね。南北のイデオロギーを「同水準」にする必要があります。

「文」:異存ありません。韓国内でも、「主体思想」――政治の自主、経済の自立、国防の自

衛――を浸透普及させて参ります。二つ目の基本条件は、経済ですね。経済は、韓国が主導的に北を支援します。北の経済の水準を向上させ、一日も早く、南北を「同水準」にすることが重要ですね。

「金」:経済面でいえば、まずは、アメリカ主導の対北朝鮮制裁を風化させる外交努力と、韓国から北朝鮮への最大限のご支援をお願いします。喫緊の課題は食糧です。この酷寒の中、食糧不足が深刻化しております。今後、春窮(過去、朝鮮では、農民が春季の食糧端境期に食糧に窮し,山野の草根や木皮を食べて命を繋いだ状態をいう)が懸念されます。

「文」:万難を排して、最大限お助けしましょう。同じ朝鮮民族ですから。

 

 

資料:SAPIO誌2018年1・2月号(1月25日)記事

「反米親北勢力」に青瓦台は乗っ取られた

 

緊迫する朝鮮半島情勢で、日本人の目は金正恩ばかりに注がれている。だが、本当に危ないのは文在寅だ。元駐日韓国大使館公使の洪ヒョン氏が警鐘を鳴らす。

 

文在寅の大統領就任からおよそ8か月、青瓦台(大統領府)は「反米親北勢力」に乗っ取られた。

 

政務職はもちろん、中央省庁の局長・課長級に該当する秘書官とその他の行政官のほとんどは金日成主義である「主体思想」を学習した者らで、南北連邦制(*)を追求した「全大協(全国大学生代表者協議会)」や左翼活動家たちだ。彼らは、「韓国そのものを平壌に捧げよう」という強い信念を持つ親北勢力である。

 

【*朝鮮半島における「1国家2体制2政府」を想定し、南北の地方政府がそれぞれ国防、外交権を持つ構想。地方政府の上位に連邦国家の中央政府が位置する】

 

中でも代表的存在が、青瓦台ナンバー1の任鍾ソク・大統領秘書室長だ。全大協の議長だった1989年に平壌で開催された世界青年学生祝典に全大協の女子大生を派遣し、国家保安法違反で懲役5年の実刑判決を受けた。その後、国会議員になって公務で米国を訪問しようとしたら、当局から入国を拒否されたいわくつきの人物である。

 

昨年11月、収賄事件で辞任した田炳憲に代わり、青瓦台ナンバー2である政務首席秘書官に就任した韓秉道も全大協出身だ。

 

文在寅のスピーチライターを務める申東昊・演説秘書官は、元「全大協」文化局長で漢陽大学時代は任鍾ソクの1年先輩。この二人は李明博政権時代、朝鮮労働党の委任を受けて「南北経済文化協力財団」を設立し、金日成大学を支援し、朝鮮中央テレビなどを引用した場合のコンテンツ使用料を韓国の言論機関から徴収して、その金をせっせと平壌に送っていた。

 

文政権発足後、「積弊清算(過去の積もった弊害を清算して正すこと)」の名目で、国家体制を変えるために組織された「委員会」や「タスクフォース」のメンバーも極左親北ばかりだ。

 

キーパーソンは、「国家情報院(国情院)の改革発展委員会」の委員長である丁海亀。若い頃から共産主義者で、保守右派団体が定めた「親北反国家行為者100人」に名を連ねる人物だ。

 

◆無慈悲な粛清も進行

 

大統領直属の情報機関である国情院は、朝鮮労働党と戦った韓国の“冷戦司令部”であり、自由民主体制を守る要である。だが丁海亀は、国情院の名称変更や職務範囲縮小、捜査権放棄など、国情院を解体、つまり反共民主体制を破壊している。

 

「積弊清算」の美名のもと、無慈悲に進めているのが反対勢力の粛清だ。

 

そもそも、朴槿恵前大統領が弾劾された発端は、親友である崔順実のタブレット端末から、修正された大統領演説文が見つかったという左派系有線テレビなどの捏造・煽動報道だった。しかし、実際にはこの端末は崔順実の所有物ではなく、外部から操作された痕跡が多数あった。検察当局はこれらの事実を把握しながら11か月間隠蔽していた。

 

文政権の誕生が捏造に基づくクーデターであることが明らかになった今、極左勢力は何が何でも朴槿恵を有罪にすべく、「国情院の予算が賄賂として青瓦台に上納された」という筋書きで国情院関係者を徹底的に追及している。すでに170人以上の国情院現職やOBが取り調べを受け、朴槿恵時代の国情院院長3人のうち2人が逮捕された。

 

また文在寅側は、朴槿恵と李明博元大統領スキャンダルを調査する名目で国情院のメインサーバーから、機密情報をまんまと入手している。国家機密が平壌に筒抜けという異常事態である。

 

左翼勢力は国体変更を目指し、そのため情報・軍・公安・司法機関に対する粛清が徹底的に行われている。

 

国家存亡の機に右派の危機感は募る。

 

昨年11月28日、野党・自由韓国党の議員である沈在哲国会副議長が記者会見し、文在寅、任鍾ソクに加えて、徐薫・国情院長と、崔順実事件で名を馳せた尹錫悦・ソウル中央地検長の計4人を名指しして、「法治破壊の内乱罪」と「国家機密漏洩罪」で刑事告発することを求めた。この国会副議長が刑事告発を求めるという内戦的状況を韓日のメディアはほとんど報じなかった。

 

 

 

Previous post

「宴の後」を展望する

Next post

アメリカは北朝鮮を攻撃するか?