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世界は今、Backward Regression

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目 次

はじめに 後退する戦後世界の経済秩序 ———- P.2
・大西洋憲章(Atlantic Charter)

第1章  海図なき船出のジョンソン英国 ———- P.3
1. 英国のEU離脱
・離脱後の英国の行方
2. 英国が抜けたEUの生業
(1)NATO(North Atlantic Treaty Organization : 北大西洋条約機構)
(2) 欧州産業政策 ( European industrial policy )

第2章 管理貿易指向を強めるトランプ米国 ——-P.7
1.トランプ貿易協定と世界経済
(1) 管理貿易指向を強めるトランプ政権
(2) Tearing up the rulebook
2. トランプ大統領の年頭教書
・一般教書( State of the Union Address)
・米大統領選

おわりに いま世界はコロナショック     ——- P.11
1. コロナショックと習近平政権
・Wall Street Journalの警鐘
2. 日本経済の焦点は今
・日本は大丈夫か

———————————————————-

はじめに 後退する戦後世界の経済秩序

・大西洋憲章(Atlantic Charter)
現下で露とする英米の自国主義、その行動様式を観ていくとき、銘記されるべきは戦後世界のビジョンとなった「大西洋憲章」です。それは、1941年8月、F.ローズベルトとチャーチルが大西洋上で英米首脳会談を行い、第2次世界大戦後の連合国の戦後処理構想、国際協調の在り方について宣言したもので、民族の自決、自由貿易、国際的な経済協力、平和の確立、武力行使の法規と安全保障システムの確立、等8条からなるものです。(尚、これに至る経緯事情はここでは割愛)そして戦後、創設された国連は、この憲章を基礎とした安全保障システムに他なりません。 
一方、世界経済の再建を目指し、大西洋憲章の精神を映す形で、民主主義、自由主義を以って、やはり英米が主導する形で、いわゆるブレトンウッズ体制(世銀、IMF)を構築、以って世界経済のサポーテイング・システムとして今日に至った事、周知の処です。
つまりは戦後75年、良い、悪いはともかく、今日云うG7メンバーの英米が主導する形で、国際協調をキーワードに世界の秩序構築を果たし、今日の繁栄を齎してきたと云う事です。

が、こうした路線構築に努力してきた本家たる英国と米国が、いわゆるポピュリズムに応える形で自由主義、国際協調路線に背を向ける中、今年に入って、その動きが具体的、極めて先鋭的に現れて来ています。

その一つが2020年1月31日の英国のEUからの離脱です。これは欧州(EU)諸国と共に発展していくとした協調路線の忌避と云うものです。もとより欧州諸国は、これまでの秩序維持に向けつつ、独自路線の強化に向かう処です。一方米国は、「米国第一」主義を叫ぶトランプ大統領の台頭で、対外的には多国間交渉の協調路線を忌避、対米貿易関係については、ディールを前提とした二国間貿易協定を強行、これが管理貿易の様相を強め、世界的な貿易秩序の混乱を招く処、その典型を、米中貿易交渉「第一段階の合意」に見る処です。
つまりgoing my way の英国、これまでの国際秩序を守りたい欧州、新しい覇権争いに入った米国、この三すくみの構図が、世界の先行きに不確実さを高める処となっています。

そこで本稿では、海図なきまま船出したとされるジョンソン英国とその後のEU、そして管理貿易指向を強めるトランプ米国、それぞれの実態を改めて整理し、今後の行方について考察する事とします。尚、こうした環境の中、中国発のコロナウイルスによる肺炎感染が世界的広がりを見、世界経済の今後に不透明感を深める処、時に「パンデミクス」への懸念すら呼ぶ処です。 そこで、おわりにその現状、とりわけ習近平政権の行方にフォーカスすると同時に、日本経済の行くえについても併せ考察する事とします…

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