香港はどこへ行く

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香港が英領から中国領になって未だ20年だが、香港が中国化したと見られることが多い。本土から色々な目的で香港にくる人が多い事もあるが、北京政府は香港を金融のハブとして(たとえば海外送金)本土の金持ち(実際には共産党員で高級官僚が積み上げた資金をなんとか海外に持ち出そうとする手段として)が香港を利用することを黙認(更にはむしろ奨励)してきた。北京政府は10年以上人民元の国際化を推進してきたが実務面では人民元取引はほとんど注目されず、中国の金融市場は依然として浅く、狭く信用されていないままだ。最近は原油など先物取引を盛んに宣伝しているが中国株や中国債で人民元への関心を惹起できないのになぜ先物取引なら人民元への関心を喚起できるのか不明だ。高級官僚も習指導部の意向を忖度しかねていろいろと手を打っているのだろう。先日の党大会までは景気のアクセルを踏み込んできた。地方の財政悪化など副作用も深刻だ。無理な景気浮揚を控えれば経済は減速する。この間元相場が柔軟さを取り戻すとは到底思われない。

当初盛んに謳われた一国二制は完全に無視され北京政府も香港が政治的に利用されることはないと確信しているようにも見える。最初からhandicapped gameのようなもので海外企業には利益はなく技術を含めknow-how迄ただでとられてしまう危険がある。そんな中で中国と取引は多いが、ある程度冷静に取引をしている香港企業も多い。今回はそれらの企業に焦点を当てて見たい。

 

#李嘉誠氏90歳で引退を表明

香港の長江実業(CK Hutchison Holdings)を長らく率いてきた李嘉誠主席は3月の決算記者会見で現役引退を表明した。元々広東省潮州に生まれたが、第二次世界大戦中に香港に逃れ、そこでプラステイックの造花を創り、香港flowerとして有名になったが、その資金を元に不動産事業に進出した。香港の不動産市況が暴落した際に多くの物件を買い、更に英国系財閥のHutchison Whampoaを買収した。その後、中国本土の不動産にも投資し、香港から欧州に至る港湾事業に投資したが(最近の一帯一路の先駆けとして参考になっている)、

最近は中国本土や香港の不動産を売り欧州、カナダ、豪州で通信、インフラ事業に集中する方向に進んでいる。中国側は海外への資本逃避と非難していたが、実態は政治と不可分な不動産より確実な収入が見込めるインフラ投資を推進したものと思われる。更に香港電力も買収した。長年にわたりアジア一の富豪とされて来たが今年のForbesによるとテンセントの馬化騰CEO, アリババの馬雲会長に次ぐ3位となっている。

後継者は長男のVictor だが、すでに20年以上父親を補佐してきた。次男のRichard は通信、保険事業などを扱うPacific Century Groupを設立し成功している。初期の段階での中国投資。中国経済減速を見越しての投資先の選別といった利益思考は見習うべきと思う。

 

#利豊 貿易事業の一部を中国投資会社に売却

利豊は欧米の大手販売先に衣料品や雑貨の生産、企画、物流までを手がけるsupply chainで創業者のVictor Fungは香港財界の代表として活躍していた。中国の人件費高騰などで同業他社もアジアの他地域に進出しており脱中国シフトの一環と思われる。家具、セーター、美容用品の貿易事業を中国系fundに売却、これら3部門は中国から商品を仕入れ欧米に卸していたが利益率の低下からsupply chain 管理事業に特化するという。同社は欧米の流通大手やファッションブランドから委託を受け衣料品や雑貨を納めるソーシングビジネスの最大手でアジア全域に広がる協力工場網を活用したsupply chain

管理に特化したいとのこと。

 

#更に資産の売却に動く長江実業

香港島の中央にある高層オフィスビル、ザ・センターを中国・香港

投資家連合に売却との発表があった。香港不動産取引では過去最大規模とのこと。ザ・センターは金融街に隣接する73階建てのビルで大手有名金融機関が多数入っている。本件も脱中国シフトの一環だ。

又、固定通信網を米系インフラファンドに約2100億円で売却と伝えられている。この資金は携帯電話事業に投資と言われているが実際にはドイツのエネルギー会社の買収資金に充てると言われている。小売り関係ではParknShop(スーパー)、Watson(drugstore)なども運営している。

 

#SwireとJardine

歴史的にはJardineが最も古くから香港に関わり、香港の市街地にはJardineの名前の通りとか名所、旧跡が数多くある。英国領から中国領になってもJardine, Swireは香港財界を代表して活躍しているが

Jardineの場合、建設業関係に強く日本の安田財閥と古い関係があった、香港返還時安田弘氏が代表を務めたのもこの関係だ。Swireは香港島に巨大な製糖所や造船所を築いた。この製糖所は中国の砂糖供給をほぼ独占し、その後もCoca Colaのbottlerとして中国全土に根をはった。製糖所の跡地は住宅や商業施設となり、不動産、飲料部門は今でも高収益部門だ。

一方航空(Cathay Pacific),造船、船舶部門は赤字で創業家自ら前面に出るか否かもめているとの話もある。Jardineの場合デイリー・ファームと言うスーパーが香港で成功しているが更に比企業と提携してフィリピンで食品小売りに参入が発表され市場でも好感されている。

以上見たように香港の各社とも次の展開に向けそれぞれ頑張っているがコーズウエイベイの書店(中国本土の禁書を扱っていた書店)が賃貸契約満了で閉店との話が出た。同書店の関係者は習近平の台頭とともに言論弾圧を受け香港で拘束されTVで無理に告白させられるなど弾圧を受けた。閉店もその流れであろう。今後もこの種の圧力は続くであろうが、香港人がどのように対処してゆくのかよく見守る必要がある。習指導部は現在建設中の香港、マカオ、本土を結ぶ橋さえ確保すれば海上封鎖によって香港は身動きできないと踏んでいでるのであろうが、経済面での問題は山積しており、これらはまた項を改めて書いてみたい。

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