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中国による日・米・韓の離間策―「核ドミノ戦略」

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2012年6月13日付朝日新聞によれば、中国は昨年8月、弾道ミサイルの運搬・発射用の大型特殊車両4両を北朝鮮に 輸出していたとのこと。

当然この輸出は、国連安全保障理事会制裁決議に違反する。決議に反する対北支援を一貫して否定してきた中国の主張が崩れたのである。

2003年から、中国は6者協議を主催し、北朝鮮の核問題解決に向けて主導しているように振舞って来たが、実は日米韓を裏切って、北朝鮮の核ミサイル開発を援助している疑いが濃厚になった。

 

中国の「核ドミノ戦略」 まず北朝鮮次いで韓国

中国が北朝鮮の核・ミサイル開発を容認・支援する目的は何だろうか。

私の大胆な「仮説」―中国の「核ドミノ戦略」―を紹介したい。

中国の国家目標は、「アジアで最強の覇権国となり、アメリカをアジアから駆逐して、中華勢力圏を確立する」ことと推察される。

これを達成するための中国の戦略は、2025から30年頃を目標に①まず中国経済の実質的規模を世界一にし、②その財源を用いて巨大な軍事力を建設してアジア諸国に政治的・心理的な圧力をかけ、これら諸国と米国との軍事協力関係を解消させる、ということだろう。

中国の国家目標と戦略から判断し、中国が、アメリカの勢力をアジアから駆逐するための最終的・究極の目標が日米の離間(日米安保条約の解消と在日米軍の撤退)であると思われる。

中国が日米の離間を追及するための戦略が「核ドミノ戦略」である。

「核ドミノ戦略」の概要について述べる。中国は、表面的にはアメリカとともに、北朝鮮の核開発を阻止ことに積極的に取り組んでいるように振舞っている。しかし、

水面下では確信犯的に北朝鮮の核ミサイル開発に協力している。

中国は、「ドミノ倒し」のように、北朝鮮に引き続き韓国、次いで日本の核武装を誘導しようとしているのではないか。

北朝鮮が核武装すれば、韓国は必然的に核武装を迫られる事態になる。韓国は、1970年代、朴政権下で核兵器開発を進めたが、「在韓米軍の撤退」という米国の脅迫に屈し、断念した経緯がある。

冷戦構造崩壊に伴い、在韓米軍は退潮傾向にある。韓国軍に対する戦時の作戦統制権も15年末に移管することで合意している。朴政権時代には有効であった「在韓米軍の撤退」という恫喝は最早韓国には通用しなくなるだろう。

韓国軍は、米国から300キロに制限されているミサイルの射程を800~1000キロに延長する案を提案するとともに、射程約1000キロの巡航ミサイルの開発も進めている。

かかる韓国の動向を見れば、米国による核・ミサイルの開発抑制の実効性は失われつつあるように見える。北朝鮮の核ミサイル開発が進展すれば、韓国が独自に核ミサイル開発を進める可能性が高く、韓国の核武装化は米韓関係を決定的に悪化させるだろう。

 

中国の付け目は、日本の核武装から日米亀裂へ

韓国が核ミサイル開発に踏み切れば、日本はどうするだろうか。当然、日本においても核ミサイル開発論議が高まるが、被爆国日本の世論は「賛成・反対」で分断されるだろう。また、核開発論争は広島・長崎の被爆体験により、国民世論の中に自動的に反米感情を呼び覚ますことだろう。

このような混乱の中、日本政府が核武装を決意すれば国内世論だけでなく、米国との間に決定的な亀裂を生む。

いずれの場合も、日米の離間は決定的となり、日米安保は破棄され、在日米軍は撤退するかもしれない。

中国は、一発の銃を撃つこともなく、米軍を日本から追い出すことが出来るのだ。これが中国の「付け目」である。また、日本から米軍を駆逐されれば、中国悲願の台湾開放は、謂わば「熟柿状態」になり、殆ど直接軍事介入しなくても、台湾は中国のものとなるだろう。

このような仮説を「杞憂」と笑う人もいるだろう。4000年の歴史に裏打ちされた中国の「深謀」は、日本人の想像も及ばない。ヒットラーとスターリンの独ソ不可侵条約を見て、平沼内閣は「欧州は複雑怪奇」と嘆いて崩壊した様に、日本人の情報分析は浅薄過ぎる。

インド、パキスタンなどの例を見るに、核保有大国のエゴの産物である核兵器不拡散条約(NPT)体制がいずれ破綻するのは自明であろう。

中長期的に見て、世界が核拡散に向かう現実に直面し、日本が現状の「非核三原則」を見直すのは、けだし当然の成り行きであると確信する。

 

(おやばとより引用)

 

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