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永久国債の錬金術 ~ファウスト、ロスチャイルド、ヘリコプターマネー~

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1933 年に大恐慌の教訓として制定されたグラス=ステイーガル法は、無制限な信用創造を抑制するために、銀行業と証券業を分離させた。しかし、1970 年代から 80 年代にかけて抬頭してきた新自由主義思潮の中で、同法は次第に修正され、ついに 1999 年に廃止された。FRB 議長グリーンスパンの全盛期(1987-2006)に、金融工学の技法を取り入れた複
雑な金融派生商品が生み出され、レバリッジによる信用創造が膨張し、サブプライムローンの蹉跌をきっかけにして、2007-08 年の世界金融危機(リーマン・ショック)が発生した。
資本主義制度は、もともと投資行動というダイナミズムをテコにして発展してきたが、そこには確率分布では測りきれない不確実性が内包されている。投資資金の多くは種々の手段で調達した他人資本を活用して行われるが、それは信用創造メカニズム(レバリッジ)を通じて、不確実性を増幅する。そのことは、フランク・ナイトや J.M.ケインズによってつとに指摘され、またハイマン・ミンスキーによって想起されたことであったが、サッチ
ャー、レーガンからグリーンスパンの時代には、それらの教訓は次第に忘れ去られていった。イギリスの金融専門家、アデア・ターナーは、リーマン・ショックの原因と結果を分析した名著 Between Debt and the Devil (2016) の中で、そのことを鋭く指摘した。
このターナーの本の扉には、ファウスト博士と悪魔メフィストテレスの対話する画像が掲げられている。20 世紀末から 21 世紀初頭にかけての過大な信用拡大(レバリッジ)は、膨大な金融不良債権(debt overhang)を生み出し、世界経済を混乱に陥れた。その帰結としての世界大不況と公的債務の累増に対処するためには、悪魔の処方箋とされる「ヘリコプターマネー」(fiat money)を採用するほかないことを暗示している。この画像は、中世ドイツの錬金術師ファウスト伝説とそれを題材にしたゲーテの戯曲『ファウスト』を思い出させる。

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