トランプ米大統領、この秋、アジアを行く
はじめに: トランプ米大統領と日本
― アジアからのretreatを鮮明としたトランプ米国
この秋、トランプ米大統領は就任後初のアジア5か国を歴訪、その最初の地として11月5日、日本にやってきました。その彼の来日を控え、日米関係に係る資料を整理していた折、ある論文が筆者の目を惹きつけたのです。それは米外交誌Foreign Affairs, Sept/Oct. 2017 ( P.21-27)に載った米コロンビア大、Takako Hikotani氏の論文 ‘Trump’s Gift to Japan’ でした。因みに副題はTime for Tokyo to invest in the Liberal Orderです。(注:Takako Hikotani is Gerald L. Curtis Associate Professor of Modern Japanese Politics and Foreign Policy at Columbia University)
「トランプ米大統領の日本への贈り物」とは、聊か皮肉っぽい表題と映る処ですが、Hikotani氏は、要はグローバル化、多国間協調と云う世界の潮流に背を向け、America First, 自国主義を貫かんとするトランプ大統領の登場は、これまでの国際経済の枠組みを否定する如くに、日本に対しては日米通商面ではその公正を、また、日米安保関係では日本の役割の見直し、強化など、圧力をかけてくることが予想され、又それへの対応を余儀なくされる処としながらも、こうしたトランプ政権の対日姿勢こそは、これまでの対米従属と批判されてきた日本の外交、安全保障政策を、自主的、主体的なものとしていく絶好のチャンスと受け止めるべきで、更には、アジア等、世界への関与後退、つまりretreatこそは経済大国日本のアジアにおける出番となるとし、そうしたトランプ氏の米大統領としての登場は日本にとって歓迎すべき機会だ、まさに‘贈り物’だというのです。そして、そのコンテクストを以って日米関係の今日的実状を分析し、日本の取るべき対外政策の今後について語る、極めて実践的な論文です。
そこで、本稿は今次のトランプ大統領のアジア歴訪のレビューと併せて日本での日米首脳会談が映す日米関係の現実と今後について考察する事を予定するものですが、その考察への備えとして、改めて上掲論文をレビューする事から始めることとしたいと思います。そして先週、Thanksgivingで沸くNYに出かけましたがその際の、安倍首相が叫ぶ‘アベノミクスの再起動’に、覚える所感を合わせ記したいと思います。( 2017/11/27)
目 次
第一章 Trump’s Gift to Japan ——— P.2
(1)二つの ‘トランプ取り込み’ 作戦
(2)いま日本に求められる外交戦略
第二章 トランプ米大統領、この秋、アジアを行く ——— P.5
1.トランプ大統領の来日と、日本の今後
(1)日米首脳会談が映す日米関係のリアル
(2)気がかりな事
2.トランプ大統領のアジア5か国歴訪と彼の可能性
(1)トランプ大統領のアジア歴訪と首脳会談総括
(2)トランプ大統領の可能性
おわりに 滞在先のNYで思うこと ——— P.9
(1)米景気の勢いに触発されて
(2)「改革したふり」せず、真に改革を
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