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右脳インタビュー 小田 兼利 日本ポリグル

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片岡:    今月のインタビューは日本ポリグルの小田兼利さんです。本日は途上国での 水事業についてお伺いしたいと思います。

小田:  水浄化の技術は、これまで殆どが濾過によるものです。しかし、濾過を効率的に行うには、圧力をかけるためのエネルギーも必要ですし、日本の池の水程度の汚れであればいいのですが、泥水のようになると濾過装置では対応がぐっと難しくなります。日本での、特に平時の感覚でものを考えていると、途上国では役に立ちません。

一方、当社の浄水技術は、水中の汚れ成分にはマイナス電荷が架かっていることから、反発しあっている粒子を中和させ、逆に引き付けあう働きをさせ、更にその塊が大きくなれば、より引きひきつける力も強くなるという原理です。

このため、かなり汚れた水でも高い浄水効果があります。汚れた水にポリグルタミン酸の浄水剤を加え、かき混ぜます。するとすぐ、汚れが塊になってきます。大腸菌等の雑菌も、一緒に、その塊の中に一時的に取り込まれますが、殺菌力があるわけではないので、汚れの塊を残せば菌は増殖します。この塊は、砂利や砂・布で簡単に濾し取ります。そうした後、日本の水道水と同じように殺菌のための塩素を加えます。こうしてこの浄化剤と簡単な設備で、直ぐに安全な水を作ることができます。(大阪の池の水を浄化したものを試飲させて戴きましたが本当に無味無臭でした)

現在、ポリグルは、世界各国で300万人の人たちに安全な水を届けています。そ の事業を行っている当社の国際部門は僅か6名、実質稼働しているのは4人だけという小さな組織ですが、現地では、近所の集落に水や浄水剤を売りに行くポリグルレディー、トラックやボートで届けるポリグルボーイと呼ばれる人たちが1000人以上いて頑張ってくれています。
今、途上国の子供の5%は水が原因で亡くなっているといわれています。水がきれいになれば下痢や赤痢も激減します。安全な水を使っている人には、その大切さが理解できますが、それまで全く水を買うという習慣がなかったわけですから、住民たちを説得していくことが必要です。ポリグルレディーは実体験を語りながら、その大切さを広める役割も担ってくれています。

片岡:    現地の浄水場(ステーション)は誰が運営しているのでしょうか?

小田:    当社は、一つの国で一か所程度、在庫を保管し、当社の責任で各地の浄水場まで届け、またステーションを作る際には色々な指導も行っています。

浄水設備は、安価で非常に簡単な構造で、1日300トン、1万5千世帯分の水を浄化できる装置がわずか1週間で設置出来ます。そうしたステーションは、大半は村、町単位で水供給組合のようなものを作って運営していますが、中央政府の水道局の傘下で行ったり、軍がやっているところもあります。

当社は、そうしたステーションに、税金や運賃等を含めて、アフリカ、アマゾンの奥地であっても、浄水剤100gを1ドルで届けています。この浄水剤100gで1tのきれいな水を作ることができます。一般家庭で毎日20ℓの水を使うとすると月600ℓになります。彼らは、それを2ドルで販売していますので、現地の管理者には半分強の粗利があります。
一方、当社も、最近になってやっとコンテナで出せる規模となり、採算が取れるようになってきました。2015年度の途上国向け売上は7000万円、2016年度はその倍ぐらい、利益も出ます。私は借金が多くて、銀行からは「1ドル、2ドルの商売をやっていて、借金がかえせますか?」とよく言われました。でも、現地から送られてくる港での陸揚げ風景の写真を見て「こんな国までいくようになったのだ…」と、本当に嬉しいですよね。

さて、浄水場を作ると、自分たちの分の水を買うだけでなく、その水を売りに行く人も出てきます。自転車で売りに行く人、オートバイで売りに行く人、更には小型トラックやボートで売りに行く人…。20ℓタンク一つに水を入れるだけでも30秒くらいかかりますが、浄水場には蛇口が6個しかありません。小さいトラックでも70-100個ほどの20ℓタンクを載せることができますので、それだけのタンクに水を入れるには時間がかかります。そこで彼らは近所の人たちを雇って、水を汲ませています。つまり雇用も生まれています。更に、多くの人が来るようになると、道幅も広がり、バスも停まるようになって…、ナマズや鶏を煮たりする屋台の ようなものや、日用品や果物を売る店もできてきます。そうなると、今度はそうした店に地方から農作物を売りに来る。更に、店の奥に寝所を作り定住する人もできてきて、町が出来上がっていきます。まさにすべては水から始まるのです。次は、シャーマンのいる病院なんかもできるかもしれません。そういうことを考えると楽しいものです。

こうして付加価値の高いものも徐々に売れるようになってきていますので、日本の企業にも後に続いて欲しいと思っています。

片岡:    御社は、BOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネス、社会貢献事業のモデルとして、日本のテレビ局は勿論、BBCやCNNでも取り上げられ、御社に興味を持ったり、更に目標とする企業も多いと思います。しかし、実際に日本企業が参入するとなると、コストの問題もありますが、例えば大企業の労務規定には当然合わないし、相当な覚悟が必要ですね。

小田:    例えば、一泊5ドルの虫だらけのホテルに泊まり、治安も悪く、およそ日本人がいかないようなところに行く…。大企業では、とてもできないでしょうね。ある日本の大手のシンクタンクの方が、一度、我々のビジネスを知りたいと現地に同行してきました。彼らは帰国後、始末書を書かされたそうです。日本のテレビ局等も取材にきますが、それはスタッフが下請けだからできています。

そういう問題があります。BOPだ、途上国は…といいますが、そもそも、そういう社内の規則から変えていかないといけません。先日もある、大企業の社長から、協力して欲しいといわれましたが、もし、本当に取り組みたいのであれば、本社とは別の組織を作った方がいいとアドバイスしました。

よくCSRでやろうと声をかけられることも多いのですが、そんな甘いものではないのでと、お断りしたりしています。

片岡:    安全上の問題から、外務省が「危険だから行くな」というような地域にも、御社は現地の人を活用して水を供給していますね。それに日本人が殆ど関わらないからコストも抑えられます。つまり、6人(実質4人)だからこそ成り立っている…。

小田:    私には、もともと、お金がなく、現地の人の力を借りないとどうにもならなかったのです。その結果、現地の人たちに仕事ができ、収入も入り、また技術も覚えて、修理も全部できるようになり、「これは面白い」となっていきました。もし資金があったら、どうしてもお金に頼ってしまっていたと思います。

また、そもそも、外務省が「行くな」というところほど、私たちの水を必要としています。そんなところにも、現地の人間が近隣から届けてくれています。有り難いことです。勿論、日本人を派遣するのに比べるとコストも遥かに安い…。
ところで、私ほど、紛争地も含めて、日本人が一人もいないようなところを沢山見てきた日本人はいないのではないでしょうか。現地の案内人と回って、そこに泊まって…。私も昔は東南アジアにもよく行っていました。しかし、アフリカの悲惨さを知ると、東南アジアは「それでも生きられる」、そんな気がします。アフリカを目にすると、人生が変わります。是非、皆さんも実際に見て欲しい…。ただ日本人同士で行くと、どうしても日本人同士で話をし、日本人として見てしまい、本当の姿が見えません。また政治家の方は現地を視察するときには、現地の大使館などにアレンジを任せきってはいけないと思います。
ある国に某大臣が視察に来たときです。現地の大使館はODAで提供した港にある冷凍倉庫・設備を見せようと考え、大使や公使が事前に見に行くと、それらは埃を被っていたそうです。大使館は困って「ポリグルさんだったら(大臣視察がある)2週間後までに浄水設備ができるでしょう。それを見せたい」と浄水設備の急設の依頼が実際にきました。また港を見ると、ODAで提供した何千万円もするような高価な重機が何台も錆び付いて放置されているのを目にすることもあります。
こうした点ではJICAでも同じです。JICAは世界中で井戸を作っているのですが、実に多くの井戸が使えず、放置されています。井戸といっても、150mくらい掘りますので、結構な費用が掛かっているのですが、いざ掘ってみると水質が悪くて使えなかったり、使えても3年くらいするとポンプが故障し、使えなくなったりしています。ODAにはメンテナンス代が入っておらず、引き渡して、それで終わりだからです。井戸というのは、壊れても、すぐに修理すればまだいいのですが…。しばらく放置すると、地下水が下がると、土砂も一緒に崩れ落ちますので、掘りなおさないといけなくなります。ODAで修理ができないのであれば、修理できるように現地の人を訓練しておかなければならないのですが、それもできていません。使えない井戸の問題がNHKで放送され騒がれたこともあって、今はODAでも修理も徐々にやるようになってきていますが、そもそもの考え方がおかしいのですから…。
こういうことが沢山起きているのが現実で、勿論、皆わかっています。私が悔しいのは、本当に必要とされていることが出来るのに手を出さず、それでいて、さび付いたODAをやったり、折角のお金を、あまりに無駄にしていることです。

片岡:    アフリカの中でも治安が最悪とも言われるソマリアのようなところまでも、御社は水を供給しているそうですね。

小田:    ソマリアでは、地面に砂が敷いてあるだけで、後は、とげのある枝にズタ袋をかけて屋根にしているような家を沢山目にしました。本当にひどい生活です。

それを見たときに、こういう所にこそ力を入れるべきだと思いました。
ソマリアで浄水場を作ると、ゲリラが来て自動小銃で壊してしまう。現地従業員が直ぐに修理して給水を再開する、装置には日の丸を貼りつけてくる。それを3回ほど繰り返すと、ゲリラはもう来なくなります。ゲリラやその家族も本当はその浄水場を使っているのでしょうし、ゲリラ自身にも本当はどっちの側についたらいいかわからないような人も多い。だから、例えば農業でもきちんとできるようになれば、彼らはそこに入って、ゲリラも減ってくると思います。

日本人ができるのは、そこだと思います。私は今後、難民を出さないように、難民が帰りたくなるようにする、そうしたことに真剣に取り組みます。
例えば、ソマリアとエチオピアの国境にジュバ川いう幅200mほどの水量の豊かな川があります。エチオピア側にはトウモロコシ畑が一面に広がり、ソマリア側は砂漠が広がります。5億円ほど出せば、日本の灌漑技術を導入して1km×1kmの農地を作ることが1年でできるでしょう。砂もあるし、セメントも安い。一人当たり日当5ドルでいいのですから大半のことは現地の人々が手作業でやればいい。そうすれば雇用にもなります。アフリカの土地はひどく痩せています。だから日本の農業のように土づくりも指導します。その緑地ができれば5万人以上が暮らせます。そこでトウモロコシが沢山とれるようになれば…。できることは一杯あります。それも、何百億円というお金でなく、みんなで知恵を出せば、5億円でできます。毎年、5億円分ずつ緑地を増やしていけば…。そしてそこで作った野菜などが売れるようにしていく…。
更に、本当に自治能力がないようなところにこそ、規律の行き届いた自衛隊が行って、積極的に守ったり、地元の自警団の育成を手伝ったり…。日本には日本独自の平和維持の支援の仕方があってもいいと思います。

片岡:    派遣された自衛隊員は、現地の人々が、それまでの悲惨な状況から抜け出し、人間らしい生活をはじめ、実際に町ができていく…、そうした希望に満ちた姿を目にしていく…。ところで、浄水剤は、日本でだけ製造していているのでしょうか?

小田:    実際、海外での製造も国や企業から提案を戴いたりしますが、今は、日本だけで製造しています。勿論、将来的は海外で製造することも考えないといけないでしょう。日本の硬直性やスピードの遅さ等に辟易としていることもありますし…。

片岡:    既に御社は何百万人にも水を提供しています。今もし、御社に何かあれば、多くの命にかかわる問題となります。これは大きい。またそうした国からすると、今は切実な状況であるとしても、多くの国民の生命線を外国の一企業の製品に握られ続けるという面もありますね。

小田:    実は、この浄水剤を低コストで生産するためにはどうしても必要な生菌があって、それはホンの一握りの人だけに知らせてあります。海外で生産するにしても、企業としては、この生菌だけは守りたい…。しかしその一方、いかなる理由であれ、途中で、給水を打ち切るようなことになれば、それは犯罪と同じ、大変な罪です。そういう重荷を私は背負っています。最悪の事態を考えると、自分たちだけで秘密を保持していていいものか…。それこそ、日本政府が相談にのってくれるといいのですが…。年齢を想えばそういう時期になってきたのだと思います。

片岡:  先程、「日本の硬直性やスピード等に辟易としている面がある」とのことでしたが、具体的にはどのようなことがあるのでしょうか?

小田:    例えば、私どもの浄水剤はアフリカで使えるほどのものですから、日本の災害時にも大きな力となるはずです。しかし、これを災害時に用いようとしても、日本では行政の許可がとれません。なぜかといいますと、「どこの水を使うかわからないから、許可できない」のだそうです。勿論、個別にもっていって、「この水ではどうですか」というと許可してくれます。必要であれば、今は、簡易検査キットがあるので、10分もあれば検査もできるのですが…。こんなことでは大災害時にはとても対応できません。さすがに、緊急時は、いちいち許可をもらいにいかなくてもいいようにしようという動きもあります。また現行の制度では水利組合の問題などもあって、河川の水を勝手に汲んではいけないとなっています。ですから公的機関等に相談すると、された方が困ってしまって…、彼らも法令通りに答えるしかないのですから…そんな変な状況になっています。
また数年前ですが、不忍池の浄化技術を東京都が公募したことがあります。弊社も応募したのですが、東京都から「ポリグルさんの技術の良さは分かっていますから…」と辞退を促されました。うちの技術が抜群にいいからでしょう。他にも石川県や大阪府などでも同様のことがありました。こうしたところは、何年も前から受注する企業が決まっていて、新しい技術ができたからといって簡単に変わっていくものではないということでしょう…。日本には、そういうところがあります。

片岡:    貴重なお話を有難うございました。<完>

 

 

聞き手

片岡秀太郎 プラットフォーム株式会社 代表取締役

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