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第22回 内部告発者法(続その2): 日本の内部告発義務法-いわゆるゲートキーパー制度

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内部告発者法は「内部告発奨励法」「内部告発者保護法」「内部告発義務法」の3つに分類されることは、2006年2月16日の第1回掲載分で述べたところです。これら3つの中で「内部告発義務法」は、2006年当時の日本には存在していませんでした。ところが、その直後に事態は急変したのです。前回(第21回)の掲載分で検討しましたように、日本においても公認会計士の内部告発義務が2008年4月1日から発効しました。これは2006年5月16日の第7回掲載分で紹介したアメリカの例にならったものです。また2006年6月1日の第8回掲載分では、「日本の内部告発義務法としてのいわゆるゲートキーパー制度の立法化が日本でも検討されるようになりました」と書きました。ところがここでも事態は急変しました。2007年3月31日に公布された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(いわゆるマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策法)によって、2008年3月1日以降、一定の者に「疑わしい取引の届出」の義務が課されるに至ったのです。いわゆるマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策法の概要は、以下の通りです。

  1. 一定の者に対し、下記2.に掲げる3つの義務を課する。この一定の者を「特定事業者」といい、以下の3種類の事業者に大きく分かれます。(ア)銀行・保険会社などの金融機関、(イ)不動産業者・貴金属商などの高額な金銭取引に関与する業者、(ウ)弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士などの士業に従事する者。
  2. 3つの義務とは、(1)顧客の本人確認義務、(2)取引記録などの作成保存義務、(3)疑わしい取引の届出義務です。
  3. ただし、上記1.(ウ)の特定事業者、つまり、士業に従事する者に対しては、上記2.(3)の疑わしい取引の届出義務は、現在のところ、いわゆるマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策法上は免除されています注1 。
  4. 弁護士の場合、現在のところ、いわゆるマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策法上の上記3つの義務のすべてが免除されていますが、その代わり日本弁護士連合会が2007年7月1日から施行した「依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程」が適用されます 注2 。

脚注

注1 「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(いわゆるマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策法)第9条第1項カッコ書き。

注2 日本弁護士連合会機関紙「自由と正義」2007年(平成19年)9月号16頁以下、「特集1 依頼者密告制度を許さないために」。

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