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コーポレートガバナンスと企業業績 -シャープの実験 -

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コーポレートガバナンスと企業業績の関係についてはいろいろ議論の分かれるところですが、シャープのケースはコーポレートガバナンスの破綻が企業業績を悪化させた典型的な例を示しています。しかし、シャープの高橋興三新社長(59歳)はコーポレートガバナンス体制を一新し業績改善に向け舵を切りました。コーポレートガバナンスの改善が企業業績を改善する実験として今後の動向を見守りたいところです。

 

コーポレートガバナンスと企業業績の関係についてはいろいろ議論の分かれるところですが、9月18日付けの朝日新聞朝刊の「経済深話」というコラムのシャープのコーポレートガバナンスに関する記事はコーポレートガバナンスの破綻が企業業績を悪化させた例を示しています。これはオリンパスに見る不正事件とは全く異なる問題で、経営陣が戦略的な意思決定を行えないという状況で業績を悪化させたという例です。
この記事は、「シャープの内実を知った銀行側がずっと首をかしげてきたことがある。『いったい誰が経営のトップなのか』」という疑問を呈しています。「シャープでは独特の『多頭政治』が続いていた」という指摘をしています。なぜなら「経営を傾けた液晶事業の拡大を指揮していた社長経験者が大きな発言力を持っていた」ということです。業績悪化の責任をとって昨春に代表権を返上した町田勝彦相談役(70歳)、片山幹雄会長(55歳)が依然経営の前面に出て統一性の無い指揮をとり奥田隆司社長(60歳)の影は薄かったということです。
このようなことが何故起きるのかというと、社員として会社に入り代表取締役まで登りつめてもその上に前社長や、前会長、あるいは元社長や元会長が依然として相談役や顧問として力を持つため、現社長が実際に権力を振るうことができるようになるには彼も順送りで相談役、顧問にならざるを得ないという悪循環が続くからです。このようなコーポレートガバナンスの状況では取締役の間に自ずと序列ができ自由な発言ができにくくなる弊害が生じます。この記事でも「奥田を社長に選んだのは町田や、その前任者だった辻晴雄 (80歳)とされる。2人ともシャープ中興の祖とされる故・佐伯旭の縁戚だ。同族的経営が続き、上にもの申しにくい雰囲気ができていた」と指摘しています。しかし、取締役会においては取締役間に上下の関係は無いはずでこのような状況があること自体コーポレートガバナンスが機能していないことを示しています。
シャープの高橋興三新社長(59歳)は、この点を一新し、「過去の人たちに決断権はない。辻や町田の部屋は引き払い社用車も報酬もない」と6月末の株主総会で言いきったそうです。コーポレートガバナンスの改善が企業業績を改善するかどうかの実験としてこの高橋興三新社長の決断の今後の動向を見守りたいところです。

もうひとつこの記事で注目したいのは役員報酬のひとつとして元社長らの「部屋持ち、車持ち待遇」ということです。一線を退いた経営者がこのような処遇を得るのはグローバルな視点で役員報酬を考える際、極めて日本企業の特徴であると思います。この点については当研究会の10月22日(火)のお昼の勉強会では役員報酬コンサルティング会社のタワーズワトソンのマネージング・ディレクターの阿部直彦氏に議論していただく予定です。

(一般社団法人 実践コーポレートガバナンス研究会ブログより)

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