迫りくる「第 2 の核の恐怖」! 核アレルギーの日本は、この危機を乗り越えられるか?
2015年10月22日
目次
1 迫りくる「第2の核の恐怖」
2 核の拡散と核使用の蓋然性を増大させるメカニズム
3 核保有国等の現状と核拡散の蓋然性
4 新たな「核 HEMP 攻撃」の脅威
5 米国の「第3相殺戦力」とその問題点・課題
6 わが国を取り巻く核の脅威
7 米国による同盟国・友好国に対する拡大抑止の提供、その意思と能力
8 わが国の核抑止のあり方
1 迫りくる「第2の核の恐怖」 ロシアのプーチン大統領は、今年3月15日に放映された国営テレビのドキュメンタリ ー番組で、同国が2014年3月にクリミア半島を併合した際、「核兵器を臨戦態勢に置く 用意があった」と発言した。これは、明らかに東方拡大を続ける NATO(米国)を睨んだ< 核による脅し>以外の何物でもない。 その後9月になって、独ZDFテレビは、米国が年内にも独ビューヒェル航空基地に新型 の核爆弾「B61-12」20基を配備する意向、と報じた。これに対して、ロシア大統領 府のペスコフ報道官は、9月23日、「欧州のパワーバランスを変える。軍事力を均衡させ るために、ロシアが必要な対抗措置を取らなければならないことは疑う余地がない」と応酬 した。(モスクワ、23日、ロイター) 以上は、核戦略が国際社会において実際に動いて いる現実を物語るものであるが、プーチン大統領の 重大な発言やこのような動きの意味を、いかほどの 日本人が敏感に感じ取ったであろうか? 恐らく、 核廃絶を叫ぶだけで、核問題に対して議論すること さえも拒んでしまう核アレルギーそして国家の防衛に 当事者意識の希薄な日本人の多くは、一連の動きに 一瞥の関心をも示さなかったに違いない。 迫りくる「第 2 の核の恐怖」! 核アレルギーの日本は、この危機を乗り越えられるか? 【コラム】 「B61‐12」は、F-35 等の航空機に搭載可能な小型精密 誘導核爆弾。<スペック>全長: 3.68m、直径:0.34m、重量: 548kg、核出力:0.3~340 キロト ン、弾頭:熱核弾頭、GPS 搭載= 目標誤差 10cm 以下、地中貫通 ( 目 次 ) 1 迫りくる「第2の核の恐怖」 2 核の拡散と核使用の蓋然性を増大させるメカニズム 3 核保有国等の現状と核拡散の蓋然性 4 新たな「核 HEMP 攻撃」の脅威 5 米国の「第3相殺戦力」とその問題点・課題 6 わが国を取り巻く核の脅威 7 米国による同盟国・友好国に対する拡大抑止の提供、その意思と能力 8 わが国の核抑止のあり方 2 東西冷戦は、「第1の核の恐怖」の時代(the first nuclear age)であった。核による「恐 怖の均衡」で辛くも戦略的抑止と安定が維持され、全面核戦争を回避することはできたが、 核の恐怖を身近に感じさせる世界的な重大事件も発生した。1962年の米ソによる核戦 争寸前までにエスカレートした「キューバ危機」である。 当時、筆者は、九州の田舎街にある高等学校に通っていた。教壇に立った結婚真近かの若 い男性教師が「世界はこれでお終いかも知れない」と、悲痛な表情で話したことを今でも鮮 明に覚えている。実は、そのような危機が、再び訪れるかもしれない。 世界は、平和到来に沸いた冷戦終結から僅か20数年しか経過していないが、オバマ米大 統領が謳った「核のない世界」に挑戦するかのように、核(兵器)の拡散と核(兵器)使用 の蓋然性が高まり、「第2の核の恐怖」の時代(the second nuclear age)を迎えようとし ているからだ。