先行き予測困難のリスク
中国景気の減速懸念と米国経済の底堅さという構図の中で、原油価格が揺れている。米原油指標であるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)は8月、中国人民元の切り下げを契機とした世界的な金融不安のなかで一時1バレル=37㌦台と、6年半ぶりの安値を付けたものの、9月には45㌦前後まで買い戻された。背景には、国際エネルギー機関(IEA)が需要予測を上方修正したことに加え、米連邦準備理事会(FRB)の利上げを巡る思惑がある。
IEAは8月の月報で、景気回復と原油安を追い風に世界の石油需要が過去5年間で最も速いペースで拡大していると報告。2015年の需要見通しを日量9,423万バレル(前年比同160万バレル増)と、前月から同20万バレル増から上方修正し、史上最高になると予測。
長期的に見ても、非OPECの供給が減少する一方、世界需の石油要は増加し、OPECの市場シェアは拡大するとの見方をIEAはしている。ただ、年内について言えば、2015年は日量200万バレル超の供給過剰が指摘されており、原油の上値は依然重いと言えよう。
FRBの利上げを巡って市場には対照的な2つの見方があったようだ。1つは、9月16~17日に開催予定の連邦公開市場委員会(FOMC)での早期利上げ決定の前提として、30ドル台の原油価格を上昇させておく必要がある(原油が30ドル台で低迷したままでは、利上げできない)というもの。他は、逆に今回の株価混乱で9月の早期利上げは困難になったとの見方。米国の今年4-6月期GDPが3.7%増と速報値の2.3%増から大幅上方修正されたことで、ファンドの買い戻しを誘った。とはいえ、早期利上げか見送りか、いずれも、追加利上げを巡って予測困難リスクが残り、油価は落ち着きそうもない。
一方、現行の原油安が長期化するとも思えない。すでに、米シェブロン2015年第2四半期決算が約13年ぶりの低水準となるなど、オイルメジャーの業績悪化から、新規の開発が抑制させる恐れがある。北米では、多額の債務を抱えたシェール関連企業の倒産リストが出回っており、オイルメジャーが買収を検討しているともいわれる。さらに、原油安は、サウジアラビアはじめOPEC加盟諸国に財政を悪化させており、食料やガソリンの補助金削減を行えば中東地域全体の社会不安につながりかねない。
(コモディティウォッチ)