いま瀬戸際のアベノミクス‘好循環シナリオ’
目次
はじめに:Just Ask Japan
・IMF予測が映す縮む世界経済
・政局と直結する伊勢志摩サミット
1.日本経済の現況―問われるアベノミクスの可能性
(1)指標で見る日本経済の現況―消費増税は予定通り?
(2)再消費増税問題の基本 - まずは成長の道筋を立て直すこと。
ただし、その前にやるべきは‘九州大震災’への絶対対応
2.国際金融経済分析会合
(1)国際経済分析会合開催
(2)分析会合出席者からの主たるアドバイス
おわりに:The Panama Papers
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はじめに: Just Ask Japan
米誌、Foreign Affairsの最近号(March-April, 2016)は、元米財務長官のLaurence H. Summers氏 の論文、‘長期停滞論’を基調に、 ’How to survive slow growth’ をテーマとした特集を組んでいましたが、その中で筆者の関心を呼んだのが、日本経済の今日の姿を面白い視点から分析したZ. Karabell氏(注:Zachary Karabell : Head of Global Strategy at Envestnet)の‘Learning to Love Stagnatiom— Growth Isn’t Everything – Just Ask Japan’ と題する論稿でした。
その趣旨は一言で言って、日本のGDPの伸びは低くても人々の生活の質は低下していない。そこで重要なことは生活コストが下がっていることだというものでした。要はマクロで見る経済全体の伸びはともかく、一人一人は意外と頑張っている、生活も言われるほど悪くはない、という事でしょうか、そこで日本の生き方に学ぼうと、言うものでした。そう云えば、昨年の秋、来日したクルーグマン教授が(今回の国際金融経済分析会合に招聘されていますが)、同様な指摘をしていたことが思い出されます。つまり、生産年齢人口一人当たりで見た日本経済の実質GDPの伸びは2000年以降でみれば米国を上回っていると、指摘していたのです。 この二人に共通するのは、マクロではなく一人当たりのGDP、それも物価変動を引いた実質値の伸びに着目していることですが、興味深い処です。
ですが、これまでの日本経済についての、こうした評価を受容するとしても、今後についてみる時、少子化・高齢化が進む一方で、サービス化が加速する中では、一人当たりGDPの伸びを維持するのは難しくなると言わざるを得ません。やはり一定の名目GDPを増やしていかねば、膨らむ社会保障費を賄う為の税収は得られず、財政の安定すら難しくなるのではと危惧される処です。実際、実体経済は、2016年に入ってからというもの、景気のもたつきが、ひときわ目立つ様相にあり、その思いは尚更というものです…..