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中国経済はどちらに向かっているのか

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中国共産党政府発表の経済統計に対する疑問はすべての人が持っている、信頼性はないが風がどちらに吹いているのか教えてくれると言うのが一般的な認識であろう。1/22発表の中国の実質成長率は6.6%で28年ぶりの低水準だが、それでも高すぎると言うのが皆の見方であろう。

「経済の成長」+「社会の安定」=中国共産党の統治維持が共産党政権の維持発展の公式になっている。社会保障、教育、環境問題などに対応するには経済が成長し歳入が確実に増えないと難しいので中国共産党は経済を最優先とせざるを得ないのが現実だ。従来安い労働力を武器に高度成長を実現した経済モデルから労働生産性を高め、消費中心の内需型モデルへの移行ができないと中国の成長は難しい。

一方ルイスの転換点の法則どおり中国は構造転換を進めなければ先進国入りする前に中進国の罠にはまってしまう。経済に対する負担を軽減すべきところ習政権は今日までの経済成長がいかに見事なものであったかを国民にも宣伝し、中華民族の優位性を吹聴している。世界経済に占める中国のシェアーが2%未満から15%以上に飛躍した40年間を「奇跡」とし、党の指導があったからこそ成功したと力説し、さらなる奇跡を実現すると決意を表明した。実際には産業構造の転換が必要で産業の生産性を高める。または生産性の高い新産業を育成する、これらの根幹は科学技術力だ。そこで科学技術の高度化を「外資」を使って実現すべく画策中だ。短期間で実現するには日本を利用するのが一番早い。合弁などで中国に進出している企業は日本が一番多いが地方政府は許可の条件交渉で知財権の譲渡を義務付けているケースも多い。必ずしも義務付けてはない場合も多いが、進出企業の方はそれほど専門家がいるわけでもなく、政府と良い関係を保ちたいと知財を中国側に与えてしまうケースが多い。米中貿易戦争は一因に過ぎない。国家統計局は1月に18年の実質成長率を6.6%と発表したが、だれも信じる人はいない。エコノミスト誌に昨年末「中国経済は思ったよりもソヴィエト的」とのコラムが載った。中国の全要素生産性(TFP)の伸びが近年マイナスになっているという推論だ。生産年齢人口がピークアウトした中国で生産性の伸びがマイナスでは潜在成長率が相当落ちているはずだ。成長率を押し上げるべく資本を投入すれば非効率なインフラや不良債権の山を築きかねない。中国経済のmoney game化に警鐘を鳴らす人も多い。バブルの崩壊点ともいえる段階にある。いずれにしても中国の奇跡は終わったとみるべきであろう。

米国の対中強硬路線は日本にプラスの面もある。日本企業も中国による知的財産権の侵害や技術移転の強要などで大きな被害を受けてきた、不当な経済慣行を止めさせられれば大きな進歩だ。問題は米中対立がどのような形となるかにある。中国の場合誰でもまねできるビジネスに多数の企業が参入し過当競争が過剰投資を生み出している。上海で24時間無人コンビニが出現したが棚やケースが撤去された店舗はゴミの山となってしまった。成功の裏には失敗の山がある。シェアリング・エコノミーの先買いともいえるシェアー自転車に流れ込んだ資金は数千億円とも言われているが、その資金は自転車の墓場=上海市内の空き地には数多くの自転車が積み上げられ自転車の墓場となっている。まさにバブルだ。中国ビジネス関係者の最近のはやり言葉は「中国にはもう頼れない」。自動車が好例だがグローバル企業が中国の急成長にたよれる時代は終わりに近付いている、VW,GMなど最近まで中国販売が絶好調であったが、今は中国の景気減速もあり両社とも苦戦している。

問題は中国の過剰生産や過剰在庫が解消されない中で景気下降のリスクが強まる可能性がある。即ち一種のデフレ圧力だ。具体的には産業資材への値下がり圧力がかかっている。家電や建材の材料になる広幅帯鋼のアジア向け輸出価格はトン550ドル程だが2018年秋には600ドル以上したので1割り安い。高炉大手の担当者はいつ下げ止まるか見通せないと困惑している。この問題は中国製熱延コイルの値下がりが背後にある。輸出価格は一年前と比べ2割は安い、これは貿易戦争のため関税が25%追加されたためだ。景気悪化の不安から中国内で設備投資も減り、内需も息切れしている。中国の過剰の廃棄や資産価格の下落などで需給ギャップは一旦縮まったものの中国の一部では引き続き増産に走ったところもある。ナイロン繊維原料の国内最大手宇部興産では1912年以来の減産が必死との観測が出ている。繊維原料カプロラクタムのアジア向け輸出価格が急落したためだ。ナイロン繊維の工場が集中する中国は世界の原料需要の半分を占める。米中摩擦で中国メーカ-は景気の冷え込みに最低限の原料在庫しか持たない。今の所、マスコミが騒ぐほどの混乱が起きているわけではないが、いずれにしても中国の過剰生産や過剰在庫が解消されない限り景気の下降リスクは強まる可能性がある。貿易制限の長期化は更に供給過剰をもたらしデフレ圧力を強める。いずれにしてもマスコミもいろいろ書くには事欠かない状況が続くし、株屋にしても貿易戦争のいろいろな局面で株が大きく動くのは歓迎するところだ。共産党政権としては中国共産党が「改革開放」政策を選択してから約40年たった。国際社会は世界の経済成長の牽引役として大きな期待を中国経済によせてきた。中国がどのような統治(Global Governance)の改革に積極的に加わり牽引する意欲をしめしてきたことに注目したが、東シナ海や、南シナ海での力による現状変更は中国の潜在的秩序観が映し出されていると考え問題視されている。中国はこれからどの方向に向なっているのか不明だが、統治の形の模索は今後も続くということだ。日本は中国の40年の歩みに深く関与してきた。ODAをはじめ様々な経済協力を行なってきた。孤立した中国を国際社会に迎え入れ近代化を促すことが世界の平和と繁栄に貢献するという期待があった。しかし東・南シナ海での暴挙などがあり、この期待は消えてしまった。

中国共産党は未だ統治の形の模索を続けている。中国は依然改革開放の40年史の中にいる。中国はGlobal Governanceの姿をまだ書き切れていないことを意味する、この意味では国際社会がGlobal Governanceに関わる規範の改善に努めながら中国を既存の国際秩序の中で誘導する余地は十分ある。最近Dongguan(東ガン)視察から帰った人の話を聞いた。広東省では深センに次いで内陸部のDongguanが改革開放のシンボルとなっていた。ところが今ではかっては玩具の生産では世界のバービー人形の1/3を作っていたが人件費の高騰で東南アジアに生産拠点が移動し工場の多くは廃業に追い込まれた。いまでは右も左も工場の廃墟だらけだ。最大の国営玩具工場も15年間北米、中南米、東欧向けに人形を生産してきたが米中貿易戦争もあり昨年夏に倒産した。セーターなどのニットの生産で有名な同市東部地区も困難な時期を迎えている。中国政府による環境関連の規制や罰則が強化され新たな環境基準にあった設備を導入する経費を捻出できず、撤退が続いていたところに貿易戦争の影響が及んだ。Dongguanは死んだ街だとの声もある。40年以上も前,見渡す限りの農地から世界有数の工業都市へと急成長を遂げたが、今は労働集約型の製造業からハイテク拠点への転換を模索している。ハイテク産業は中国が先端産業を育てる国家プロジェクト「中国製造2025」の優先分野のなかにある。ハイテク摩擦の対象分野でもある。Dongguanは中国経済の最前線に再び躍り出ることができるのか改革開放から40年たったが、習近平が選んだ統治の形は従来型とは異なり、現政権は強いリーダーシップが必要との認識で共産党の指導の強化を選択した。大国意識を強めた政権はより主体的、積極的に自己主張的な対外行動を選択した。統治の形の模索はこれからも続くであろう。日本も世界各国も孤立した中国を国際社会に迎え入れ近代化を促すことが世界の平和と繁栄に貢献するという期待があった。その後、東、南シナ海での暴挙を招きこの期待も失せてしまった。中国は依然改革開放の40年史の中にいる。要するに中国がグローバルガバナンスの姿をまだ描き切れていないことを示している。

2008年のリーマン・ショック直後の4兆元投資から始まった投資ブームから10年たったが、この間の固定資産投資額の合計は446兆元約7,200兆円だ。これだけ投資を増やせば優良な投資案件はなくなり残るは不採算な案件ばかりになる。低効率な投資に投じられた借金は償還に時間がかかり借り換えのための新たな借金が必要となる。このような負債を積み重ねた結果、金融機関向けを除く負債残高のGDP比率は2008年の141%から18年3月には261%に急膨張した(国際決済銀行調べ)一方国全体のバランスシートは劣化している。容易に返せない借金は潜在的な不良債権だ。潜在的不良債権は20%もあるといわれ、不良債権を償却処理しない限りこの負担は半永久的に続き額も増大してゆく。投資バブルの後には必ずバランスシート調整が起きる。政府の強大な経済力で金融リスクを抑えてきた中国だがその時期が到来しつつある。バブル崩壊で中国も崩壊とはならないかもしれぬが、債務の大半は国有企業の債務だから政府の債務と考えてよい。三重苦の2番目は民営企業の苦境だ。中国では民営企業は税収の半分、GDPの6割、都市雇用の8割と経済フロウの大半を占めるが富の分配面では不遇となっている。国は土地資源を握っているが上場企業時価総額の3分の2は約5千万ある株式取引口座のうち1万2千口座を保有している中央直轄大企業など「官」に富や資源が集中している。一方中国を中所得国のわなから救うには改革開放を再起動して資源配分の権限を共産党や政府市場にゆだねるしかない。中国の台頭で世界秩序が書き換えられると言った大げさな警戒感が過剰な反応を呼んでいる。いずれにしても中国当局も債務の拡大による経済の不調に対すべく財政・金融政策がカギとなることは認識しているが習指導部とどのように協調してゆくかが鍵となろう。いずれにしても3月5日開幕の全人大の直前に追加関税が引き上げられる最悪の事態は回避した。一方国有企業への補助金などについては中国側も譲歩の気配はない。もし関税引き上げがこの時期あれば習指導部のメンツはつぶれかねなかった。中国側は長期戦に持ち込みを考えているのであろう。いずれにしても歩み寄りの余地はなく、このまま膠着状態が続くとみるべきであろう。官僚も習個人を頼りにするか別の人物を担ぐかこれからが見物だ。

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