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日本企業の中国内での動き:

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中国から撤退、国内回帰の動き
人件費の高騰など従来のcheap laborを使っての生産方式も限界が来た。ロボットの活用とかAI, IoTの活用などで中国からの撤退とか国内回帰の動きが盛んだ。一方産業としては小規模だが食品産業などが中国での再投資に動きつつある。今回はこれらの動きを見てみよう。

#中国政府は中国経済復調を盛んに宣伝するが
工作機械、建設機械などが牽引役となって自動車とか半導体関連機器の増産や自動化投資が増加、道路や鉄道などのインフラ投資の増加などで中国事業の比重が大きい日本企業の業績は順調だ。但し全ては共産党大会前の需要が急膨張しているためで共産党大会後の落ち込みがすでに話題となっている。

#4~6月期の中国事業で純利益の大きな企業は
コマツ:建機の売り上げが倍増。
ファナック:数値制御装置の売り上げ増
安川電機:産業用ロボットの売り上げ急増
ルネサス:エアコンなどの産業機器向け半導体の好調
日立金属:鉄道車両用電線の売り上げ急増
などだが、ここでも地方政府が高成長の実績を残すべく投資を前倒ししているとされ大会後の反動減を警戒する声は強い。一般的にはメーカーの中国からの撤退と国内回帰が増えているが、これは日本だけの現象ではなく先進国は何れも国内回帰を進めている。一方巨大企業同士の再編も有り、たとえばダウとデユポンの統合により売り上げ8兆円の巨大企業が生まれている。(三菱ケミカルは約3兆4千億円)世界的に工場の適地とか企業サイズが再検討される時期にある。このような動きの後押しをしているのがロボットの導入だ。中国でもこれから人手不足が深刻となるので政府の補助金の後押しも有り産業用ロボットの導入が盛んだ。2015年すでに6万7千台と世界市場の3割の導入をしたと言われているが今後も続くと思う。

#中国事業の拡大を目指す企業
2011年から中国向け投資はむしろ減少していた。一方食品などは日本産始め海外主要国産の方が高品質であることが一般人にも分かってきたのでたとえば日清食品は浙江省に約57億円を投じ新設工場を稼働させるとしている。即席ラーメンの場合面白いことに台湾勢が一時圧倒的に強かった。特に康師傅は台湾最大手の食品企業、頂新グループとサンヨー、伊藤忠と合弁を組み本土に展開していたが廃油ラード不正事件で解散を余儀なくされた。更に台湾の名門企業の統一も即席麺では強かった。一方即席麺の開発者である日清の安藤百福氏も生まれは台湾だ。日清も中国以外の欧米各国については各地で即席麺の展開を行っていたが、中国については上記2社が先行したため広東省、香港で地域的に活動していた。今回浙江省から中国本土全体に攻め込もうという戦略だと思う。
ハウス食品がカレールーの新工場をこれも浙江省に建設中だ。一方身近な生活上必要な機器についても高性能の日本製品が注目されだした。リンナイはガス機器の新工場を上海市内に開設した。同社の給湯器は地場メーカーに比べ値段は倍近いが高品質が注目されるようになり上海で新工場を稼働、安川電機は産業用ロボットの上海・瀋陽工場を増強、自動車関連では、パナソニックが自動車用電池工場を稼働させ,武漢で新工場を建設中だ。ここ数年シチズンやソニーが中国から撤退するなど,撤退、縮小の動きが盛んであったが,ここで一段落したとも言えるが撤退を念頭に置いて事業展開が行われているとみるのが正解であろう。

#好調な半導体
2015年の地域別半導体の生産能力は台湾が首位であった。台湾の場合2011年に日本を抜き2015年には韓国を抜いた。(韓国半導体は業界自体が支配的地位を失いつつある。)3位は1980年代トップであった日本、4位米国、5位中国(爆発的な投資を進めている)と半導体関連業界が活況を呈している。データ保存に必要な半導体の需要も拡大する構造的な変化が生じている。日本の半導体製造装置メーカーも各社(東京エレクトロン、日立ハイテクノロジーズ、SCREEN HDGSなど)とも最高益を狙っている。日本製半導体製造装置の受注はリーマンショックで激減したが,その後スマホ向けが伸びると共に受注額も右肩上がりで伸びた。更に日本の電子部品各社(京セラ、日本電産、TDK,など)も増益となっている。蛇足だが、Sonyが10年ぶりに最高益と報じられたが,これも半導体の好調によるものだ。
需要増に対応して大手半導体メーカーは巨額の設備投資を行っている。韓国のサムスン電子、台湾のTSMC,米インテルなどは年1兆円相当の設備投資を行っているという。半導体の需要変動の波はシリコンサイクルと言われ数年おきに変動を繰り返してきたが証券会社などは半導体需要は右肩上がりが続くと言っている。一般にはアジアの半導体2強、台湾のTSMC,韓国のサムスンの動きに注目が集まっているがこの動きを虎視眈々と狙っているのが中国政府だ。半導体を基幹産業とするため国内外のメーカーに関連設備への投資を促している。今年6月以降前年対比50%増と大幅に国外メーカーを中心に投資が増えている。中国政府は製造業育成の重点分野の一つに半導体を入れている。(中国製造2025によると次世代情報技術機器、航空宇宙設備、工作機械とロボット、先端軌道交通設備、省エネ、新エネ自動車、電力設備、新素材、バイオ医薬と高性能医療器、農業の機械設備)
そこで,スマホ向け需要増を背景に中国内及び海外各社とも中国での投資に力を入れている。国内では紫光集団は武漢の半導体受託製造会社を傘下にいれ、その後政府系ファンドによる買収によって半導体大手となった。紫光集団は巨大メモリー工場建設など10ヶ所で新増設の計画があり2020年までの5年間の総投資額は過去5年の2倍以上の5兆円に達するとも言われている。但し,中国政府の強力な援助にもかかわらず国内各社とも従来の外国技術の盗用の域を超えることはできず、既に半導体では中国勢の敗退は明らかで中国政府も半導体育成は無理と認めたようだ。
一方外資メーカーも中国での投資に積極的で米インテルは大連市のメモリー工場の生産能力の引き上げを企画し。韓国サムスン電子も追加投資を宣言した。何れも新興国などのスマホの普及で半導体需要は成長が続くとみている。外資では重慶(米グローバルファンドリース)、西安(韓国サムスン電子)、大連(米インテル)、南京(台湾TSMC),無錫(韓国SKハイニックス)これに加え中国内のメーカーが各地での展開を狙っている。このような世界的な増産計画が続々と出てくるが(中国取引の特徴でもあるが)何れ半導体の需給悪化は避けられないと思う。すでに台湾のメデイアテックなどはスマホ向け半導体の不振が深刻化しておりアップルも中国現地勢の安値攻勢により中国事業はむしろ減収となっている。何れはシリコンサイクルの荒波にもまれるのだろうか。

#半導体投資を主導する機関投資家
本論から外れるが90年代には50%以上のshareをとり世界市場を制覇したように見えた日本半導体産業だが、基本特許を米国に押さえられた日本勢は韓国・台湾勢との価格競争に敗れ撤退を余儀なくされた。この件については又別項で記述したい。
所謂新興株に人気が集中し10月に入ると日経ジャスダック平均株価は1990年以来27年ぶりの高値をつけた。あらゆるものがネットにつながるIoTや,工場の自動化で需要が伸びる半導体製造関連などの分野で強みを持つ銘柄が多い。ジャスダック上場のトリケミカルは半導体絶縁膜材料などで世界シェアーを伸ばし時価総額は4年間で20倍となった。同社の場合は順調に伸びてきた例だが株価が業績の実態と無関係に機関投資家の資金が注入されているケースが目立つ。
8月には車と半導体関連が好調で鉱工業生産が前月比2.1%上昇し、好調な輸出が牽引し自動車、半導体製造装置など国内の設備投資向けも好調であった。工場内の運搬用クレーンや半導体製造装置など国内の設備投資も好調であった。円安の恩恵もあるがこの様な傾向が続けば日本企業の国内回帰も本格化するであろう。

#一斉に動き出したIT関連業界
海外進出から国内回帰に向かっている日本企業も多いがこの動きに連動してchanceをと狙っているのがIT関連業界だ。人手不足もあるが,技術者でも電気、機械関係はすぐ就職先が決まるが、IT関連でもsystem engineer(SE)は誰でも簡単に資格が取れるので(大きな駅の周辺にはSEの専門学校が群がっている)国内でもあまり重用されなかった。彼らの一部がAI, IoTを掲げ大規模なpresentationを行っている。但し、メデイア、大企業内でIoTなどの認識が高まればこの動きも消滅すると思われる。
何れにしても、中国内でもECが順調に伸び優れた海外産品がいつでも手に入るようになれば現地生産の必要もなくなるので一部の特殊品を除き国内回帰は当分続くとみるべきであろう。

 

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矢野 義昭 軍事研究家、元陸上自衛隊小平学校副校長、陸将補

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