地政学とは

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これまで二回にわたり、情報分析における地政学の重要性を指摘したが、今回は地政学について説明したい。

 地政学でニュースの“深読み”ができる
「これから朝鮮半島情勢はどのように展開するだろうか?」、「日本と韓国の関係は益々悪化するのか?」、「米韓関係は崩壊するのか?」あるいは「中朝関係はどのように推移するのか?」などについて情勢分析する際には、現在の「日々起こる出来事」を収集・分析して、将来を展望するだけでは不十分だと思う。私の考えとしては、情勢分析の土台として地政学と歴史についての認識・洞察が不可欠だと思う。これらの関係を海に例えれば、「日々起こる出来事」は「水面上の波」であり、海面下を流れる「海流」に相当するのが「地政学と歴史」だと思う。

 地政学とは
世界大百科事典によれば、地政学とは「地理的諸条件を基軸におき、一国の政治的発展や膨張を合理化する国家戦略論である」と解説している。筆者は、地政学は「国家の風水」だと思う。風水は、古代中国の思想で、これによれば、都市、住居、建物、墓などの位置が吉凶禍福を決定するという考え方だ。
この考え方は常識的にも理解しやすい。家の位置を例に取れば、山の南斜面で日当たりが良い所と、山の裏側の日陰のところでは、おのずと差があるのは当然だ。日当たりの良い山の南斜面の方が住人の健康には良いに決まっている。また、都市についても、その位置が交通や経済発展などに決定的な影響を与えるのは当然だ。都市発生・発展の歴史から、宿場町、門前町、商港町、軍港町、鉱山町などに区分されるが、その位置的要素が都市を性格付ける大きなファクターであることが頷ける。
風水同様に「地球上に占める国家の位置がその吉凶禍福を決定する」という考え方についても、読者の方々には違和感なく受け入れていただけるだろう。筆者が考える地政学とは、「『国家それぞれが、丸い地球の上のいずれの場所に位置するか――地理的条件――によって、その吉凶禍福が大きく左右される』という考え方」、だと理解して頂きたい。国家の吉凶禍福とは、経済発展上の利不利や安全保障上の利不利などのことである。

 地政学の具体例――米国の地政学
具体例として、米国の地政学について見てみよう。私は、一昨年2月15日付の本紙で、米国の地政学について次のように論じた。
宇宙船から俯瞰した米国土の姿を最も簡潔に表現すれば、「二つの大陸と二つの海洋がクロスする『十字架』の中心に位置する国」と言えるのではないだろうか。縦方向(南北)に伸びる「南北米大陸」が「十字架の『縦の棒』」に相当する。また、「横の棒」は、米国を中心にアジアとヨーロッパに伸びる太平洋と大西洋の海原(シーレーン)である。即ち、米国は南・北米大陸の中枢を占め、太平洋と大西洋にアクセスできる位置に存在する。
第一の特色は、「十字架の『縦の棒』」に由来するものである。即ち、米国は、「縦の棒」に相当する「南米大陸と北米大陸」により隔絶され、大西洋と太平洋との往来が極めて困難である。両大洋を往来するためには、北はベーリング海峡を、南はホーン岬を越えなければならない。しかも、ベーリング海峡は、7月から10月以外の間は結氷状態になる。両大洋を往来するためには、マハンの時代の蒸気船の速度では、膨大な時間を要した。1898年に米国とスペインの間で起きた米西戦争当時、米太平洋艦隊所属の戦艦オレゴンを南米のホーン岬経由でカリブ海正面へ派遣した際には、2ヶ月以上を要した。
米国の地政学上の第二の特色は、前述の「十字架の『横の棒』」に由来するもので、「広大無辺の太平洋と大西洋を隔てて、アジアとヨーロッパの両正面に対面すること」である。これにより、米国はアジア・ヨーロッパと往来・通商するためには太平洋と大西洋を越えなければならない。大西洋と太平洋は世界で最も広大な海洋で、例えばサンフランシスコから東京までの距離は8270km、また、ニューヨークとロンドンの距離は約5500kmもある。従って、米国が旧大陸諸国家と通商を行い、覇権を争うためには広大無辺の二つの海洋を克服する必要がある。
上記二つの地勢学上の特色から導かれることは、「米国発展のためには大西洋と太平洋を克服してユーラシア大陸と通商する商船隊及びそれを防衛する海軍と中継基地が両大洋に不可欠である」という事実である。

 今なぜ朝鮮半島の地政学か――半島経由の中国脅威の高まり
我が国の安全保障に大きな影響を及ぼす朝鮮半島の情勢がダイナミックに動きつつある。朴槿恵政権になって、従軍慰安婦問題などを言い募り、日韓関係が極度に悪化しつつある。これは、中国の策謀に乗せられているように見える。中国はアメリカと覇権を争う上で、先ずは日韓分断策を仕掛けている。それと並行して、韓国を唆せて日米離間を図る役目を振付けているようだ。韓国は、中国の巧みな策謀に乗り、経済のみならず軍事・国防面においても中国に取り込まれつつある。このことにより、米韓同盟は揺らぎ、結果として中国の朝鮮半島への影響力が大きくなる傾向にある。日本に対する中国の脅威は、南西諸島方向からだけではなく、今後は朝鮮半島経由で日本に指向される可能性が高まりつつあるのだ。
読者の皆様が、新聞やテレビで朝鮮半島に因むニュースを見られる際、半島の地政学と併せて考察して頂ければ、更に“深読み”に役立つものと思う。

(おやばと掲載記事)

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