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朝鮮半島の地政学32  未来予測の手法

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 王様は“占い師”がお好き
人生、オギャーと誕生した瞬間から様々な脅威・リスクと向き合うことになる。人生は不確実性に満ち、不安で一杯だ。これは人間個人についてもいえるが、家族、会社、社会、更には国家においても同じだ。歴史に登場する王様や大統領などはいずれも国家や民族を指導していく上で、不安に苛まれてきた。「一寸先は闇」の喩えどおり、人間は一寸先さえも確実には読めない。もしも将来に起こることが、確実に分かれば、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の高校生マクフライと科学者のブラウン博士(通称ドク)――タイムマシンで30年前にタイムスリップ――のように、競馬で万馬券を当てることができる。大統領は何の不安もなく先手・先手で問題を解決できる。
タイムマシンに代わるのが、“占い師”だ。最近有名なものとしては、レーガン大統領夫人ナンシーの例がある。ナンシーは、1981年の大統領暗殺未遂事件以後、夫レーガンの安全を守るためとして占星家を重用するようになったという。この占星家は、「よい」日、「普通の」日、「避けるべき日」を示した。一方、このことがホワイトハウスのスケジュール決定に影響を及ぼすようになり、重大なトラブルの原因となったという。これが原因でホワイトハウス首席補佐官のドナルド・リーガンはナンシーと対立することとなり、最終的にリーガンは辞職した。

 現代の王様の“占い師”は情報機関
米国のオバマ大統領やロシアのプーチン大統領のような現在の国家元首の将来予測は“占い師”ではなく、情報機関がその役目を果たしている。米国には国家情報長官統括のもと、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)など15の情報機関が存在する。また、ロシアでは、連邦保安庁 (FSB) やロシア連邦軍参謀本部の情報総局 (GRU)など5つの情報機関がある。各国とも、それぞれの情報機関が国家の存亡を賭けてしのぎを削っている。
日本の情報能力はどうだろう。私は、日本の情報能力の例えとして「目のない鷹、耳の短い兎」と表現している。本来鋭い視力を持っているはずの鷹だが、日本という鷹は“弱視”であり、日本を兎に例えればその耳は“短耳”なのだ。「日本丸」は文字通り「一寸先は闇」の状態で、荒れ狂う海原を航海しているのだ。安部総理が決断を迫られるTPP問題などで、総理はアメリカの情報をほとんど持っていない。一方のオバマ大統領はCIAによる日本外交官の抱きこみや国家安全保障局(NSA)による盗聴などにより、日本政府が考えていることは手に取るように知っている可能性が高い。日米の情報能力格差は、たとえて言えば、「日本は米国を望遠鏡で見ているが、米国は日本を電子顕微鏡・内視鏡で覗いている」と言えるのではないだろうか。

 情報分析の手法
情報機関は集めた情報(インフォーメーション)を分析して、外交・国防戦略を策定し、それを実行に移すために必要なレベルの知識に精製する。こうして案出された知識をインテリジェンスと呼ぶ。これを、料理に例えればこうだ。インフォーメーションは「食材」にあたる。分析とは、いわば「調理」することだ。食材を調理して作り出す「料理」に相当するのがインテリジェンスである。
インフォーメーションを使って、インテリジェンスを作る手法は世界の情報機関がそれぞれ開発しているものと思われる。いずれにせよ、得られるインフォーメーションを分析して真実を見出すことが情報分析の真髄である。
「地政学」と「歴史」をベースに、収集したインフォーメーションを分析して将来予測(その内容がインテリジェンスと呼ばれる)に加工するというものだ。分析する際は、「分析して導き出すインテリジェンス(これには明確な使用目的がある)」を念頭に、様々な情報を組み合わせて、論理性、客観性、妥当性などの観点から整合を図りながら、まるでジグソーパズルを組み立てるように行う。この際、分析者の経験と勘もフルに活用する。この作業は、犯罪捜査の場面で、犯人に関する様々な情報を分析して真犯人を見つけ出す手法をイメージして頂ければよい。

 歴史は繰り返す
注目して頂きたいのは、情報分析に「歴史」と「地政学」を反映させていることだ。次回に「地政学とは」という題で説明する予定であるが、情報分析においては歴史と地政学は絶対に無視できない要素であると確信している。
「歴史は繰り返す」という箴言がある。この箴言は、古代ローマの歴史家クルティウス・ルフスのものである。その意味は、人間の本質に変わりないため、過去にあったことは、また後の時代にも繰り返して起きるというものだ。情報分析において、未来を予測する際にはルフスの言葉は生きてくるものと思う。ロシアの極東進出や中国の領土拡張などは、まさしく「歴史的に繰り返している」と言わざるを得ない。
情報を分析する上では、このように歴史的な傾向を踏まえておけば、大きく誤ることは少ないと思う。同様に地政学も将来を占う上では、極めて重要な要素となる。このことについては、次号で説明する。

(おやばと掲載記事)

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