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中国紙インタビュー抄録――「中日海戦中国必敗」

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 インタビューの概要

「中国の香港明報という新聞から福山さんにインタビュー・録画したいとの電話がありました。応じますか」と、潮書房光人社の担当部長から昨年の7月半ばに電話があった。
その電話によれば、先方は、5月に上梓した拙著「日本離島防衛論―島嶼国家日本の新国防戦略」を読んで、企画を立てたとのこと。質問の中には「中国の民間では『日中戦争が不可避である』という認識もあります。福山先生はどう思いますか。多くの日本人もこの論調を信じますか」など、挑発的な内容があると言う。ならば、「挑戦は受けずばなるまい」と承諾した。
早速先方からメールがあり、8月22日、某ホテルで実施することとなった。ホテルロビーで待っていると、予期に反してバドミントン選手の潮田玲子に似たジャジャという名の若い女性が中年の録画担当の男性を伴って現れた。彼女は早稲田の出身だというだけあって、日本語は極めて流暢だった。
「今日はインタビューに応じていただき有難うございます。先生の『日本離島防衛論』や『尖閣を奪え』は中国では有名です」と開口一番、私を持ち上げてきた。
私もこれに応じ、「今日は、中年のオジサン記者との対談かと思いきや、若い美女のジャジャさんが相手とは驚いた」と切り替えした。
そうしたらいきなり、ジャジャ嬢が「中国海空軍と海空自衛隊が戦ったらどうなるか」と聞くので、「1期先輩の元海自提督の話では、『1週間で中国海空軍を撃滅できる』と言ってた」と答えた。
すると、顔色が変わり、「意外なことを聞いた」とばかりに猛然と反論してきた。私はその理由を諄々(じゅんじゅん)と説明したら黙ってしまった。
私は更に「日中の海・空軍の戦いがどのように推移するか、実際にやってみないとわからないが、1つだけはっきりしていることがある。戦争が起これば、中国共産党政権崩壊の引き金になるということだ。それは、日清戦争後に清が滅亡した歴史と同じ推移を辿るだろう。中国共産党は、滅亡したくなかったら、日本に挑発しないことだ」と付け加えた。
ジャジャ嬢は、「中国海軍には空母『遼寧』がある。日本はこれを脅威だとは思わないか」と更に切り込んできた。
私は、「空母の技術・運用の両面を米国並みにするには長い年月を要する。『遼寧』は西側のレベルから見れば“ポンコツ”だとの評がある。また、運用面から言えば、1隻ではどうにもならない。ハーバード大学の教授は、『中国が巨費を投じて建造した空母は開戦劈頭(へきとう)に撃沈する“生贄”(いけにえ)に過ぎない』と言っていた」といささか揶揄する口調で応じた。
ジャジャ嬢は憤然として「自衛隊は、尖閣ではどうするつもりか」と来た。
「日本政府が決断し、命令を下せば、自衛隊は毅然として戦うだろう。それにしても、習近平政権は、中国軍機を自衛隊機に接近させたり、公船による領海侵犯をさせるなど、尖閣近海でよく日本を挑発しているが、私は、あれは自分の政権維持に自信がない証左だと見ている。習近平が反日的言動をするのは、内政をコントロールできる自信がないからだ。中国共産党は爆発寸前の中国人民の不満を逸らせるために、四苦八苦してのたうち回っていると、冷笑している」と答えた。
ジャジャ嬢は、「福山先生は日中協力についてどうあるべきだと思いますか」と話題を変えてアプローチしてきた。
「私は、今こそ『中国革命の父』である孫文が1925年12月の講演で唱えた『大アジア主義』の時代が到来したと信じている。日中の協力こそが新しいアジアの時代を開く鍵である。中国は対日姿勢を180度変えるべきだ」と自説を述べた。

 「中国必敗」の記事掲載

取材受け(8月22日)から2ヶ月以上も過ぎた11月5日、ジャジャ記者からメールで記事が送られてきた。
私の他に、夏川元統幕議長と齋藤元統合幕僚長が取材を受けていた。記事の見出しは、全く意外にも「中日海戦中国必敗」だった。
私の発言については、「『弾道ミサイルを考慮しなければ、日本は1週間以内に中国艦隊を壊滅できる』との考えを示した」と報じていた。
何故インタビューから2ヶ月以上も経ったこの時期に、こんな内容の記事を出したのだろうか。
この記事が出た直後の11月10日、日中首脳会談が実現した。このような、日中外交のエポックに制服自衛官OBのインタビュー記事を出した目的が「日中宥和」だったのか、「日中対決を煽ること」だったのか、現時点では定かではない。

 中国の対日政策(私見)

マキャベリは、『君主論』の中で、「君主にとっての脅威は『敵国の侵略』と『人民の反乱』だ」と述べている。
さらに『政略論』の中で、「人民をコントロールする術」として「国内において自己の失政から人民の関心をそらせようとしたり、人民の派閥抗争をおさめるために、わざと外国と事を構える(敵を作る)ことがある」とも述べている。
中国では目下、習近平が格差拡大・政治腐敗などへの人民の不満緩和、さらには江沢民や胡錦濤などの派閥との権力闘争に腐心している。
マキャベリは、500年も前に、今日の中国が内政強化のために「日本を敵に仕立てる」戦略を予言していたのだ。
中国の「日本敵視政策」が緩和されるためには、習政権が強化されるのを待たねばなるまい。それとても、10年間の国家主席任期が終れば、新政権は再び「日本敵視政策」を掲げるだろう。厄介なことだ。

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