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情報メモ4「日経新聞情報散歩」

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18.05.06

〇 米朝会談へ調整大詰め 米韓首脳会談、22日に協議(1面)

  • 朝鮮半島に利害を有する6ヵ国(日本、米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮)は、6月初旬の米朝首脳会談を前に、泥縄式で応急にそれぞれの利害を確保・担保すべく公式・非公式に調整中。6ヵ国のうち、2国間関係だけでも15通り(6×(6−1)÷2=15)もあるわけだから、すべての国の利害を円満に調整するのはけだし不可能。日本の拉致問題は、他の5か国にとっては「どうでもよいこと」と考えているのだろう。ただし、皮肉なことに、北朝鮮の非核化問題に始まる半島問題の最終解決時点では、「日本からの賠償金」が重要な価値を持つようになる。このことは、各国とも重々承知のこと。日本には「口は出すな。金は出せ!」ということか。
  • 北朝鮮の非核化は、それが「引き金」となって、65年間も「休戦状態まま凍結されていた冷戦の遺構」を一挙に解凍することに繋がる可能性。「北朝鮮の非核化」は、いわば氷山の一角で、水面下に隠れた諸問題は膨大なもの。
  • 朝鮮半島の地政学(筆者の仮説)は、①「中国の影響・支配下の地」、②「海洋国家(米国・日本)と大陸国家(中国・ロシア)の係争の地」、さらには③「ユーラシア大陸最強の中国とロシアの係争の地」である。世界でも希に見る超大国の利害が直接衝突する地域である。特に、現在は、太平洋に生命線(シーレーン)を拡張しようとする中国とそれを抑え込もうとする米国の利害がガチンコする地域である。かかる地政学の朝鮮半島問題を「戦争抜きに解決」するのは至難であろう。無論、戦争を歓迎する愚者はいないが。

〇 非核化期限・査察焦点に 米国と北朝鮮、なお隔たり(3面)

  • IAEAなどの半端な能力では、北朝鮮の「牙を抜く」ことは至難の業。けだし不可能では。
  • 100パーセント確実な方法は、米軍を(平和裏に)投入し、北朝鮮を完全占領し、支配下に入れた後に調査・査察を行い、米軍の強権をもって破壊・押収することだろう。しかし、敗戦国でもない北朝鮮がそんなやり方を許すはずがない。
  • 優秀な米国の諜報機関といえども、鎖国状態・地底王国状態にある北朝鮮の核に関する情報の完全取得は限界があろう。嘘つきの北朝鮮が正直に申告する可能性はゼロ。
  • 北朝鮮はいくらでも隠し・騙しおおせる方法があるだろう。アメリカもそのことを承知のうえで、核心的なターゲット「ICBM」やウラン濃縮施設などを重点にして、妥協せざるを得ないのでは(日本を射程にする中距離核は不問)。
  • 本来、中露に比べマイナーな北朝鮮の核ミサイルは、アメリカにとって左程の脅威ではないはず。問題は、アメリカのポチ(同盟国)である日本がそれを口実――アメリカの核の傘は“破れ傘”になった――にアメリカ離れを開始し、核武装に走る恐れがあること。それに加え、トランプが当選直後から、一旦北朝鮮に向かって振り上げた拳をうまく納めなければ、世界とアメリカ国民――中間選挙――にメンツが立たない、というのが真相では。
  • 万一、北朝鮮の完全非核化を果たすことができても、北は既に核ミサイル開発のノウハウを取得しており、その研究開発・技術者を抱えておれば、必要時には、核ミサイルを短時間に開発装備化できるのでは。
  • 北朝鮮に対する疑問。金正恩は、米朝国交正常化の後、鎖国状態から改革開放に移行できると本気で考えているのか。韓国の反政府運動を見ればわかるように、朝鮮民族は半端な弾圧では抑えきれないのでは。すなわち、改革開放をすれば、確実に金王朝の倒壊に繋がるということ。そのリスクを金正恩は受け入れられるのか、疑問。
  • 金王朝成立以来、王朝の存立・生存を支えてきたのは、皮肉にもアメリカではないのか。70年間近くも「反米」のスローガンで、人民を引き締め、弾圧を正当化してきたのでは。それゆえ、「アメリカという敵」が存在しなくなれば、金王朝は生き残れなくなるのではないか。これこそが本当の「イソップ物語」の筋書になるのでは。金大中・廬武鉉時代の韓国の力では、「太陽政策」は限界。しかし、アメリカが南風を送ればその効果は絶大では。

〇 「米国第一」が呼び込むクルマの逆転劇(8面)

  • 要旨:米国の自動車産業は「産業の中の産業」(ピータードラッカー)。その自動車分野で、米中の技術逆転劇が起ころうとしている。原因は、トランプがパリ協定を離脱し、燃料規制緩和により、「ライトトラック」と呼ばれるガソリンを“がぶ飲み”する大型車が売れ、電動自動車(EV)技術の開発が進まないからだ。一方、大気汚染に悩み、原油を海外に頼る中国は、16年に「パリ協定」を批准し、EVを「製造強国2025」の中核に位置付け、開発を推進している。「中国は電動化という最も重要な領域ですでに世界をリードしている」とさえ言われるほど。
  • 中国にとってピンチはチャンスを生み出したことになる。一方、トランプは目先の繁栄・利益を優先し、次世代に起こる技術劣化を無視しているのだ。
  • 現在、世界は米・中・露の三極構造といっていいだろう。これら三国により、あらゆる分野で競争が深刻化している。それを勝ち抜くには、政策をクイックに決定する必要性から、専制・独裁化する傾向がみられる。プーチンに続き、習近平も長期独裁体制の道を開いた。共和国のはずの米国も、トランプの登場により、帝国の色彩が強まりつつある。

日本では、森友問題などで「コップの中の嵐」状態で、中長期に備える国家戦略的な思考・判断ができない状態。

米中露の競合を軸に、今後は、世界的な趨勢として、「共和国から帝国へのシフト現象」が強まっていくのかもしれない。

〇 北朝鮮、韓国と標準時統一(5日紙面)

  • 北朝鮮は、ソ連と中国の「頸木」から脱し、王朝体制を強化するために独自のイデオロギーである「主体思想」を確立した。「主体思想」を形のあるものにする一つとして、北朝鮮の参謀達は「北朝鮮独自の標準時」をでっち上げたのだろう。
  • 北朝鮮は、トランプが米朝首脳会談をボイコットしないように、手を替え品を替えて、歓心を買う目的で、何と、折角設定した「“主体”標準時の変更」までも持ち出してきたわけだ。
  • 金正恩は、トランプとの会談から延々と続く米朝交渉こそが、アメリカによる斬首作戦を回避し、北朝鮮を核保有国として認知させる“戦術”と心得ていることだろう。「主体標準時の変更」は、いじらしいほどこの“戦術”に拘る北朝鮮の下心が透けて見えるようだ。金正恩は、決して従順に完全非核化などやるつもりはないのだ。

 

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