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‘非核化’ 騒動を巡る世界、そして問われる「戦後日本」の総括

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はじめに ‘非核化’を巡る国際情勢, 二題
― 米朝首脳会談と、イラン核合意問題の現状

・米朝首脳会談取りやめ
5月24日、トランプ米大統領は、6月12日に予定されていた史上初となる米朝首脳会談は「今は不適切」として、中止すると表明、そしてその旨、北朝鮮金正恩委員長あて書簡を送った由、報じられたのです。北朝鮮の非核化と北東アジアの平和構築への大きな一歩かと世界が注目する会談でしたが、当該発表は米朝間に横たわる溝の深さを印象付けた処です。

そもそも、米朝首脳会談は北朝鮮の非核化と北東アジアの平和構築を目指す会談とされ、従ってトランプ米国は会談に臨むに当たっては「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を短期間で実現するよう求め、その結果の見返りとして北朝鮮が求める「体制の保証」等に応えていかんとするシナリオかと観測されていました。この点、トランプ政権は「過去20年の北朝鮮政策の失敗を繰り返さない」と強調するところでしたが、それこそは、相手に派手なデイールを仕掛け注目を引き、そして、過去の政権の政策を徹底的に否定し、更に、迅速な結果を求めると云う、まさにトランプ流、行動様式を鮮明とする処です。一方、北朝鮮はこの米側の考えに対して、一括放棄は受け入れられずとし、非核化に向けて段階的な措置をとるたびに見返りを受ける方式を主張していたのです。

果せるかな、米朝会談は中止、その理由として、トランプ氏は北朝鮮による「直近の声明に表れた激しい怒りと露わな敵意」を挙げていましたが、北朝鮮が本気で核を放棄するという確信が持てなかったと云う事だったのでしょうか。ただトランプ氏は金委員長あて書簡で会談の実現を非常に楽しみにしているとし、「究極的に重要なのは対話だけ」と綴っていたと由ですが、その後のインタビュ-でもトランプ氏は会談の可能性を繰り返す処です。

要は、トランプ氏はなお将来の会談に意欲を示している様相ですが、どこまで可能か、元より読み切れるものではありません。ただ、本稿では、これまでの米朝会談を巡る関係国の動向を整理し、次の舞台に備えることとしたいと思います。

・イラン核合意問題
もう一つはイラン核合意に係る問題です、5月8日、トランプ大統領は、2015年、米英独仏中ロの6か国とイランの核を巡る合意「包括的共同作業計画」、通常云うイラン核合意からの離脱を決定、イランの核開発に関連した経済制裁を再開する大統領令に署名したのです。そして5月21日、米国は当該合意に代わる国際的な対イラン網づくりを狙った「対イラン政策」を発表しましたが、これが米欧の亀裂を深める一方で、結果としてイラン国内の強硬派を勢いづけ、中東の対立や混迷を深める様相にある処です。序でながら5月14日トランプ政権はイスラエル米大使館をエルサレムに移転させましたが、これが中東の混迷に火を注ぐ状況です。

勿論、この二つの共通テーマは「非核化」です。言い換えれば、この非核化をどのように進め、実現していくかですが、それはとりもなおさず世界の安全保障体制を如何に担保していくか、でしょうが、この点は世界が知恵を出し合っていかねばならない処です。

なお、そうした環境にあって日本の姿勢が見えてこないという事がもう一つの問題と映る処です。中東問題もさることながら、日本にとって喫緊のテーマは何といっても米朝会談に在りましたし、何よりも、その結果が齎すであろう日本へのインパクトにあり、今も尚、重要な問題として映る処です。 因みに、安倍首相は、米朝会談の話が具体的に俎上に乗るや、日朝間の最大の問題は拉致問題とし、この際はトランプ大統領に早期解決への橋渡しをと、協力要請に走っていました。勿論、日本にとり重大な問題です。トランプ大統領に協力要請をすることを否定するものではありません。然しなぜに、小泉元首相が実行したように、自ら北朝鮮に乗り込むぐらいの努力をしてこなかったのか、理屈はともかく、ここに至っては、まさに‘トランプ’頼みの政治‘に不安は募る処です。(注)

(注)2002年9月、日朝平壌宣言(小泉純一郎首相、金正日委員長)には拉致問題の解決が盛り
込まれているが、同年10月、米国が北朝鮮の核開発疑惑を指摘、翌03年には北朝鮮はNPTか
らの脱退、一方、日本は経済制裁を強化したことで、当該宣言は実践課程には入っていない。

全て事態は今尚、流動的であり、それら行方については、言うなればnobody knowsと云う処です。ですがこの際はメデイア情報をベースに事態の推移をレビューし、その結果が日本に突きつける日本のあるべき姿、言い換えれば「戦後日本の総括」について併せて考察してみたいと思います。(2018/5/26)

目 次

第1章 取りやめとなった米朝首脳会談      ・・・ P.4

1.米朝首脳会談     ・・・ P.4

(1)米朝首脳会談は中止
・トランプ大統領vs金委員長
(2)米朝首脳会談の今後に備えて
[資料] 米朝首脳会議に備えた関係国首脳会議
① 中朝首脳会談 ② 南北朝鮮首脳会談
③ 日中韓首脳会談
(3)米朝首脳会談の可能性と課題
・可能性を測る条件
・米朝首脳会談のイメージ

2.米朝首脳会談が突きつける‘戦後日本’の総括 ・・・ P.7

(1) 日米同盟のdecoupling
(2) 日本の安全保障体制とはー多国間連携の強化

第2章 米国のイラン核合意からの離脱 ・・・ P.10
・イラン核合意
・米大使館のエルサレム移転

おわりに:トランプ氏一人にかき回される世界 ・・・ P.12
・Denuclearization means the US too
– Professor. Jeffrey Sachs
・米中貿易摩擦
・保護主義のギアを引き上げるトランプ政権

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