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崩れ出した米中関係の基盤、問われる日本の今後

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はじめに The west’s greatest gift to China

 

Financial Times(3/8)掲載の同紙commentator, Edward Luce氏の` The west is doing its best to help China.’ は、今日の中国と西側、とりわけ米国との関係を追う者にとって極めて興味深く映るものでした。

 

その内容は、2000年に入ってからの西側が進めてきた政治的、経済的行動が、結果として中国に大きな恩恵を与えてきたと云うのです。その一つは2003年のイラク戦争。これが結果として欧州の分断を誘ったこと。二つに、2008年の金融危機で、その後の景気後退で欧米諸国が途上国への開発融資を削ると、その分を中国が穴埋めしてきたこと。更に三つ目は、Geopolitical gift to China つまり英国でのEU離脱の国民投票に見た、或いはトランプ氏の大統領選の勝利に映る、欧米に於けるポピュリズムの台頭を挙げ、それは西側の制度や主要機関への信頼低下を映す処、結果として中国に有利に効果していると、云うのです。つまり、21世紀に入って僅か20年、西側は中国に大きな恩恵を与えてきた、つまり形勢が中国に有利になってしまったと語るものです。

そして、今次のトランプ政権の鉄鋼・アルミの輸入関税の引き上げという、輸入制限措置の発動は同盟国を巻き添えにすることで、今回、中国の「終身皇帝」ともなった習近平中国主席には、西側勢力を分断しやすくなったというのです。そこで今、西側から中国への4つ目となる贈り物があるとすれば、それはまさにトランプ大統領 `the west’s greatest gift to China’ ではと、するのでしたが、云えて妙というものです。実際、目の当たりとするトランプ大統領の政策判断は益々、America first、つまり独自主義に向かう方向にあり、それは間違いなく中国に有利に働く事になるものと思料する処です。

 

それにしても最大のリスクは、今や世界経済をけん引する中国が、米国に対抗して保護主義に向かう連鎖が起こる事です。実際、3月23日、米国が鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動するほか、それに先立ち中国の知的財産侵害への制裁措置を表明した事で、中国政府は米国からの輸入品128品目に関税の上乗せをするという対抗措置を公表したのですが、さながら「報復合戦」の様相を呈し、「米中共倒れ」の懸念も強まろうと云う状況となってきています。米国発の保護主義がドミノ的に世界へと広がれば、自由貿易体制は揺らぎかねないというものです。

 

そこで、この際は習中国が強権政治に向いだしたその実状と、トランプ米国の保護主義政策が齎す世界経済への影響にフォーカスする形で、時を同じくする形で発表された米朝首脳会談開催、そして今次成立みたTPP協定も含め、論述することとしたいと思います。(2018/3/26)

 

 

目 次

第1章 中国国家主席の任期撤廃   ・・・P.3

(1)憲法改正で強権的独裁政治に転じた中国

―from Autocracy into Dictatorship

(2)中国の民主化に賭けた西側政策の失敗               ① ‘What the West got wrong’  (The Economist:2018/3/3)

-It bet that China would head towards democracy

and market economy. The gamble has failed.

② Kurt Campbell 氏と「対中関与政策」

・protectionist and nationalist America vs Assertive and nationalist China

第2章 トランプ米国の保護主義政策、そして米朝首脳会談・・・P.7

・UCLA  Jon Michaels 教授

(1)実行段階に入ったトランプ政権の保護主義的政策と、安全保障対応

・「ブロードコム」による「クアルコム」買収と安全保障上の脅威

・習中国に‘塩送る’トランプ保護主義政策

・リチャード・ボールドウイン

(2)米朝首脳会談と、日本の外交戦略の今後

・トランプ氏の米朝首脳会談応諾

・ポスト米朝会談の日本の外交戦略

・TPP11協定

(3)トランプ政権の政策スタッ

おわりに 今、極まる日本の政治 ・・・ P.12     

 

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