Home»オピニオン»もり・かけ・PKO日報問題での政府広報対応に思うこと

もり・かけ・PKO日報問題での政府広報対応に思うこと

0
Shares
Pinterest Google+

振り返ってみると、2017年前半の政府・官邸広報対応は、森友学園、加計学園や自衛隊のPKO日報問題等の連続的な危機管理に明け暮れた感がある。官房長官や大臣の記者会見を主軸とする本来の政府・官邸広報は、巨大な政府活動の中でも特に重要な事案に関し、ネガティブな事実も含めフェアに、分かりやすくタイムリーに国民に説明する責任を負っている。その本来の役割に照らして言えば、局所的な一連の事案対応にこれだけ時間を割いている(あるいは割かざるを得ない)状況はやはり、広報対応上のどこかに大きな問題があったと言わざるを得ない。

私自身が一連の事案に関する政権の内情を知っている訳ではないので、政権判断自体に対する軽々しい論評は控えるが、危機管理広報専門家の視点で少し考察してみたい。

まず、一連の対応では、政府・官邸広報の危機管理コミュニケーションに2つの問題があったと見ている。1つ目は、政権サイドの自己中心的な目線(=自己防衛視点)だけで対応シナリオを描いてしまったのではないかという点。2つ目は、内部リークを含め新事実が次から次へと発覚する最悪のシナリオを想定せず、「この程度の対応をしておけば、あっという間に国民は忘れてしまうであろう」と甘く見ていたのではないかという点。いずれも、政府・官邸にとっての最重要ステークホルダーである国民の目線や感情との乖離が見られた。

その結果として、いずれの問題でも、危機対応に最も重要な「初動対応」に政府は失敗し、新事実が発覚するたびに対応が後手後手に回った。そして、終始窮屈な説明を余儀なくされ、過去の説明との整合性にも疑問を持たれてしまうという悪循環に陥った印象が強い。

私は、危機管理広報に関し常々、知人のジャーナリスト氏の言葉を借りて「広報機能は常に社内野党たれ!」と言っている。これは、組織外の重要なステークホルダーの本音や意見を、耳の痛いものほど組織トップにタイムリーに直言し、正すべきものは正してもらう役割のことを指す。私は、この役割の実現のために広報機能には2つの権限が必要と考えている。具体的には、①組織内情報の対外発信機能に加え「広聴機能」を併せ持ち、有用な広聴情報を組織の意思決定に反映させる権限、並びに、②コミュニケーション戦略に関しては独自の視点でのアドバイスを組織トップに実施し、トップの情報発信をも正しくコントロールする権限である。

私は、政府広報の一連の危機管理問題では、それら2つの権限がもし十分に機能していればここまで長引かなかったのではないかと見ている。政府組織は特別なもので通常組織の危機管理広報戦略は馴染まないということではなく、この機会に、政府の広報機能や組織体制の在り方を根本的に見直してみることを専門家として提言したい。

2017年08月18日 (金)

Previous post

中国企業による海外投資

Next post

財務省の無能と邪心