明光証券㈱会長就任時のインタビュー ~「証券会社で働けることを幸せに思っています。」
インタビューを通じて岡部新会長の人物像に迫ってみたい。
Q; 海外での経験が豊富ですが、海外勤務を通して学んだことについてお聞かせください。
A; 日本と欧米では各々の経済、文化などはもちろんのこと、習慣やものの考え方が大きく異なります。たとえば”画一的””没個性的””横並び重視”の日本に対し、欧米では”多種多様””個性的””独自性重視”といった具合です。海外在勤中は常に、こうした違いを日本の本社やお客様に理解してもらうのがいかに難しいかを痛感してきました。しかし、日本に帰ってしばらく暮らしていると、こういった違いもすぐに忘れてしまいます。この忘れっぽさも日本人の特性かもしれませんね。(笑)
Q; 日本人が欧米人に学ぶべき点とはどのようなことでしょうか?
A; 一概には言えませんが、アメリカ流の生き方のほうがフェアであると思いますね。日本では商売をするにもしきたりや規制が多く、対等なレベルで競争するのが難しい。それでも金融とか証券の分野はフェアな業界の方ですよ。
フェアというのとは少し違うかもしれませんが、若い頃にアメリカでビジネスをしていて一番感心したのは、面談の用件さえはっきりと示せば、肩書きに関係なく大企業の偉い方と会うことができた点です。アポイントをとるには相当時間がかかりましたが、日本ではこうはいかないですよね。
Q; 手数料自由化など証券業界の課題についてはいかがでしょうか。
A; 幸いにして明光証券の取引対象は8割近くが個人のお客様です。このコア・ビジネスの分野は自由化になってもビクともしないでしょう。現にイギリスではビックバン(手数料自由化)を行って何が起きたかというと、大口取引の手数料は下がっても、逆に個人取引の手数料は上がっているのです。サービス相応のコミッションを頂戴するということでね。自由化してもサービスの質さえ良ければ、それほど恐れることはないと思います。
Q; サービスの質ということで、今お考えのアイデアで何かありますか。
A; 要は「よそ様とは一味違ったサービスを提供する」ということ。そのためには他人がやっていることに惑わされないことですね。以前から、「明光らしさ」と言われているのですが、「らしさ」と言っても抽象的なことではなく、具体的に明光証券の”サービスの良さ”を打ち出していくことが必要ではないかと思います。
Q; 当社に入社して感じたことは?
A; 厳しい環境にもかかわらず、役職員一同大変明るく前向きで、風通しのよい社風ができあがっていると感じました。もっとも当面の課題は、営業の第一線での活力を一段と高めることでしょうね。ここ3年間は証券不況で、営業マンの方も元気を打出そうと言ってもなかなか出せなかったと思いますが、今は少しずつ環境が変化しつつあります。もうひとつ感心しましたのは、女子社員の方々の応対マナーです。電話の応対やしつけのレベルが高いのが印象的です。
Q; いま、証券業界は厳しい環境にありますが、このような状況をどのように受け止めていらっしゃいますか?
A; バブル時代に水膨れした経費の削減、その他物質的な面でのリストラはほぼ完了し、今後は収入面の増強に注力しなければならないでしょう。しかしながら、”心のリストラ”はまさにこれからが正念場であると思います。というのも、一日平均の東証売買高が4千億円強であったバブル前の昭和60年に、当社は40億円の経常利益をあげていました。その頃と比べると経費は増えている一方で、手数料率の低下により取引一単位あたりの収益性が低下しています。われわれの商売は人と人とのふれあいだけで行なっているわけですから、サービスのクオリティをアップさせて、一人ひとりの生産性を高める以外に途はないでしょうね。
Q; 今後明光証券をどのようにしていきたいと考えていますか?
A; 自由闊達で風通しがよく、常に新しいものを創造していくという活力に溢れた職場の気風を一段と高め、営業力、商品力、情報力においてどこにも負けない強い明光証券になってほしいと思います。私もひとりでも多くのお客様とお会いして、愛される明光証券づくりにわずかでもお役に立てればと思っています。このような会社で働かせてもらえることを大変幸せに思っています。
Q; 社員に期待することは?
A; 一人ひとりがお客様に可愛がっていただける営業マンになってほしい。そのためには常に新しい創造性豊かなアイデアを提供し、同時に嫌なことも労を厭わずに積極的に取り組んでいく、人間的魅力のある人材に育ってほしいと思います。
Q; 今年、44名の新入社員を迎えましたが、彼らにアドバイスをするとしたら?
A; 日々惹起するあらゆる物事に”飽くなき好奇心”を持ち、難事に挑戦して活路をひらいていくという、進取の気魄と不屈の闘志に裏打ちされた、逞しい行動力を養ってほしいと思います。私自身心がけてきたことは、孔子様ほど達観はしておりませんが(笑)、「日に三度自らを顧みる」即ち、「不作為の罪」「不勉強の罪」「不親切の罪」を犯さなかったかを反省してみることです。
<PROFILE>
●生い立ち/生まれは東京都中野区。小学校から大学まで、途中満州で過ごした二年間を除き、京都育ち。
●血液型/B型
●性格分析/好奇心に富む。強情(これは他人様の評価でありご自身は極めて柔軟・フレキシブルで、他人様の意見にも素直に耳を傾ける性格と確信している)
●モットー/欹(そば)だつ者は行かず(無理をして背伸びをしても長続きはしない、自然体でいくべし)
●趣味/鉱物採集、切手収集、囲碁
●休日の過こし方/ゴルフ、読書、散策
●家族構成/妻と二人(子供三人は成人し結婚、全員が米国在住。孫二人)
●愛読書/一冊あげるのは難しい。最近読んだものでは、塚本哲也著「エリザベート」
●好きな音楽/ミュージカル曲と演歌、ただし聞くだけ。
岡部陽二氏略歴
昭和9年8月16日生
昭和32年3月 京都大学法学部卒業
昭和32年4月 住友銀行入行
昭和51年8月 住友ファイナンスインターナショナル社長
昭和55年11月 国際投資部長
昭和57年6月 取締役
昭和59年1月 取締役 ロンドン支店長
昭和60年10月 常務取締綬
昭和62年4月 欧州駐在役員
平成元年4月 専務取締綬
平成5年3月 専務取締役退任
平成5年4月 当社入社 顧問、 6月29日 代表取締役会長就任
(1993年7月30日刊行明光証券社内報「ほうゆう」1993年夏号「 MEIKO NEWS」所収)