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厚労省・千葉県による言論抑圧 ―安房10万人計画と亀田総合病院事件-

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千葉県安房地域(房総半島南端)は人口減少が著しい。私たちは、2012年以来、医療・介護を中心としたまちづくり活動「安房10万人計画」に取り組んできた。
これを進めるうえで、公益性を担保するために活動のハブ(中核)として、NPO法人ソシノフを設立した。この計画に2013年、千葉県の補助事業「亀田総合病院地域医療学講座」を組み込んだ。以後、地域包括ケアについての映像シリーズ、書籍、規格の作成を進め、市民による活動で社会課題を解決する道を切り拓いた。成果物はソシノフのウェブサイトhttp://www.socinnov.org/に公表している。

ところが2015年、千葉県の担当者が違法な虚偽通告によって、講座の予算要求を阻止しようとした。私がこれを批判したところ、厚労省の医系技官が「行政への批判を止めさせないと、今後、病院に対する補助金を配分しない」と病院経営者を脅した。
さらに、ソシノフに対する不快感を示し、亀田グループにソシノフとの関係を絶つよう指示したのである。
それにより亀田グループはソシノフから脱退し、ソシノフは財政基盤と組織基盤を失った。私が、これらの言論抑圧に対し、厚労大臣に調査と厳正処分を求めるべく文書を提出したところ、その文書が千葉県の医療整備課長を介して、病院経営者にメールされた。

「既にお耳に入っているかもしれませんが、別添情報提供させていただきます。補足のご説明でお電話いたします」

このメールの3週間後、私は、亀田総合病院を懲戒解雇になった。

処分通知書には、「厚労省に大臣宛書面を提出し、同省職員の実名をあげ、調査と厳正対処を求める旨の申し入れを行った」ことが懲戒処分の理由として明記されていた。
私は従来、言論人として活動し、厚労省の強権的な政策とその背後にある考え方を批判してきた。亀田病院もこれを利用してきた。私の活動は、「自主路線を貫く誇り高き病院」としてのイメージアップに役立った。

具体的批判の中に、千葉県が進めてきた東千葉メディカルセンター計画があった。千葉県は、2008年、山武郡市※1を、印旛・山武二次医療圏から切り離し、地域の医療事情と乖離した山武・長生・夷隅二次医療圏(※2)を作って、多額の補助金を投入し、計画を強引に進めた。計画に無理があったため、事前に危惧された通り赤字が膨らみ、東金市民が東金市の財政破綻を心配する事態になった。件の医系技官は、この計画が本格始動した当時、千葉県庁に在職し、医療行政の要の立場にあった。

2014年、医療介護総合確保推進法が成立した。
「地域医療構想」によって、行政が病床の機能ごとに需要を計算し、強制力を背景に病床を配分する。行政の裁量権の大きい補助金、「地域医療介護総合確保基金」、で投資をコントロールする。全体として、旧共産圏の計画経済を思わせる。

旧共産圏では専制と腐敗がはびこり、経済は停滞した。批判がなければ専制が強まる。専制は民間活動を抑圧する。医療介護を含めたまちづくり活動も、言論の自由がなければ成果は期待できない。

言論封殺は、医療に限らず民主主義の根幹を揺るがす重大事である。よって、その一端をご紹介した次第である。

※1 山武郡市(さんぶぐんし)千葉県東部3市3町の総称。(東金市、山武市、大網白里市、九十九里町、芝山町、横芝光町)

※2 山武・長生・夷隅医療圏: 茂原市、東金市、勝浦市、山武市、いすみ市、大網白里市、九十九里町、芝山町、横芝光町、一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、長南町、大多喜町、御宿町

 

(本稿は構想日本メルマガ(NO.7552016年5月5日)からの転載です。)

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