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知的障害者施設の鴨川への受入れと今後の課題

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3月28日、朝日新聞に掲載された避難中の知的障害者を、4月5、7、11日の3日間で、「鴨川青年の家」に無事迎え入れることができました。
現時点(4月13日)で、利用者270名(内4名は鴨川で入院中)、職員93名です。職員の2家族は、家族ごと鴨川に移住されました。これまで通り、鴨川 で施設として事業を継続していただくことになっています。日常業務ですのでボランティアだけに頼るより、はるかに安定した運営が可能です。
利用者は、福島県内を転々と避難。通常の避難所には一般の避難者と同居できませんでした。最後は、田村市で200平方メートルの通所施設に、利用者と職員 約260名がひしめき合って生活していました。鴨川に来られた利用者が、もう帰りたくないとおっしゃられたと伝え聞き、うれしく思いました。
鴨川市の長谷川孝夫教育長、「鴨川青年の家」の諸岡研所長は大きな貢献をされました。県教育委員会から「鴨川青年の家」の使用許可を鴨川市が得るという、 多少ややこしい形になりました。受け入れに伴い「鴨川青年の家」は、3万を超える予約をキャンセルしてくださいました。
受け入れた障害者は人数が多く、しかも、重度障害の方がたくさん含まれています。鴨川市だけでは、対応しきれないところが出てくるかもしれません。その際は、千葉県にも援助をお願いしたいと思っております。
社会的弱者のために、様々な困難を、多くの人たちの努力で克服していくのを見ていて、この国も捨てたものではないと改めて思いました。

鴨川に来られたのは、原発に隣接している富岡町の4施設、南相馬市原町の4施設、川内村の1施設で合計9施設。いずれも、施設が壊れて使えなくなったわけ ではなく、原発事故のために避難を余儀なくされました。原発が落ち着くまでは元の施設に帰れる見込みはありません。特に、富岡町の4施設は福島第一原発か ら10km以内のところなので、戻るのは難しいでしょう。新たな施設を建設せざるを得ないのではないかと予想されます。
このため、鴨川市、施設の関係者、我々受け入れの調整役の間では、2年以上の長期滞在になるとの共通認識がありました。

これは舛添要一氏のブログにある通りです。

http://ameblo.jp/shintomasuzoe/entry-10851385678.html

舛添氏はさらに、以下のように支援の決意と、国民連帯の精神を訴えておられます。
「今後、受け入れ側にも多くの課題が出てくると思いますが、全力をあげて支援したいと思います。」
「国民連帯の精神を忘れずに被災者を助けていきましょう。」

さて、今後です。厚労省には、今後の大まかな構想を明らかにしていただきたいと思っています。本来なら、福島県でしょうが、福島県はあまりに大変な状況になっています。
私は、障害者がやっと落ち着けた鴨川の地で、現在の組織を維持することが、利用者にとっても、職員にとっても、さらには、福島県や国にとっても、よいこと だと考えています。利用者の幸福、職員の幸福の総量が最大になることが、もっとも大きい点です。さらに、福島県や国にとっても、組織が壊れると、新たに作 るのは容易なことではありません。費用も余計にかかるはずです。

職員を安心させるために、細川厚労大臣には、以下のような声明を出していただきたく、お願い申し上げます。
「原発が落ち着き次第、国の責任で、施設を再建する。多少長くなるかもしれないが、鴨川の地で、これまで通り、事業を継続していただきたい。国はあなたがたを支える。」

職員の福利厚生はなにより重要です。職員が不幸なら、利用者は幸せになれるはずがありません。この事態について利用者と職員には一切責任がないこと、原発 事故に巻き込まれてひどい目にあったこと、我々は原発の電気のお世話になっていたこと、いわば我々の身代わりとして避難を余議なくされていることをしっか り噛みしめておく必要があります。

鴨川青年の家は、地元の小中学生を中心に利用されてきました。これまで通り利用するために、障害者に一時的な施設にこれ以上移動してもらうことには反対で す。障害者と施設の職員にとってよくないのは当然ですが、教育の観点からも、よく考える必要があります。自分たちの課外活動のために、困っている人たちを 移動させることになります。
私は、この状況を教育に利用すればよいと思います。日本では、障害者は一般人の目に触れにくいところに追いやられています。小中学生は、社会的弱者の存在 と大震災の救援活動、知的障害者がどのような目にあってきたのか、救済すべくどれだけの人がかかわったのか、その結果として「鴨川青年の家」を利用できな くなったことなどを学習すべきです。さらに、可能な範囲で(訪れるのは10名までか)、施設と交流することが、日本の将来につながる大きな教育になると思 うのです。

(2011年4月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会)

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