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成長軌道に乗せるには

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アベノミクスとは為替を円安にして株価を高め、その間に構造改革を進めて経済成長を図る政策である。

最初の1~2年(13年、14年)は上手く行ったが、15年夏以降に失速してしまった。

構造改革が思うように進まなかったからである。

何度か書いてきたが、民間部門の消費支出(個人消費)が一向に改善しない。

アベノミクスが始まる前の民間最終消費支出(2012年暦年)が308兆円。

昨年1年間の民間最終消費支出(2015年暦年)が306兆円。

むしろ悪くなっている。

なぜか。

若い、働く世代の年収が低いままだから、消費したくても消費できない。

もっと言うと結婚したくても結婚できないから人口も増えない。

20代後半の男性の非正規率は22%。

そもそも非正規社員の年収平均は230万円でしかない。

これではユニクロでさえ贅沢品になってしまう(だからGUが流行っている)。

30歳~34歳男性が結婚している率は、正社員の場合は57%。

非正規は(同じ年齢区分で)たったの25%。

なぜ企業は正社員を積極的に雇わないのか。

企業経営者に聞くと「不況時に非正規の方が人員整理しやすいから」という。

日本の場合、解雇に関する明確なルールがない。

いきおい追い出し部屋に入れるとか陰惨な形で、社員が(自発的に?)辞めると言い出すまで、「いじめる」、「追い込む」といった陰湿・残酷なことが行われてしまう。

解雇に関する明確なルールがないから、解雇して訴えられるのが怖い、だからこうした非合理的な対応がとられてしまうのだ。

そして解雇に関する明確なルールがないから、企業は本当はもっと正社員を雇いたいのにもかかわらず雇えない。

非正規に頼ってしまう。

その結果、正社員が中途で入社してくるという「中途入社市場」が一向に拡大せず、労働力が流動化しない。

筆者の高校時代のアメリカの友人の多くは比較的簡単な理由で会社を辞める人が多かった。

「変な上司がやってきた。こいつとは合わない」と思うと、さっさっと辞めて別の会社で正社員として雇われる。

中途入社の市場がしっかり機能しているからだ。

昨日のブログで、現在のアベノミクスの労働市場改革について書いたが、実はこれは抵抗する勢力があまりない分野での政策である。

本当に必要な改革については、最初から諦めてしまっているようにも思える。

労働市場改革でいま一番望まれるのは(あくまでも筆者の私見であるが)、

①解雇に関する明確なルールを設けて、企業が正社員を雇いやすくする

②中途入社市場を拡充し、正社員が中途で退職し別な会社で正社員として雇ってもらえるようにする(これは米国では普通に行われていることだ)~なお上記の①が実現することで②が進む

③正社員であれば組合の保護を受けられ、非正規であれば保護がないといった差別的対応をなくす

④同じ仕事であれば、正規と非正規で待遇の差別をつけない

⑤ホワイトカラー・エグゼンプションを導入する(サービス残業を押し付けられている現制度よりも余程合理的だ)

以上はいずれも実現するのに高いハードルが予想される分野だ。

しかし、この辺にメスを入れないと、日本は成長軌道に乗れないように思う。

金融政策と財政政策だけでは限界があるのだ。

* * *

こんなことを昨日の「日経ヴェリタストーク」で話しました。

『こちら』 でご覧になれます。

* * *

ところで昨日発表されたサラリーマン川柳。

大賞は「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」でしたが、過去の入選作にはこんなものもありました。

「クレームも 社員じゃわからん パート出せ」

「何になる? 子供の答えは 正社員」

「お見合いの 決め手になった 正社員」

世の中にこれほどまでに正規と非正規の差別が浸透している、そして実力のある非正規やパートが差別的待遇にあえでいるのを、川柳が見透かしているように思いました。

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