投機の裏に実需有り
円高になるたびに「マーケットがリスクオフとなり(リスクを嫌うようになり)、安全資産である円が買われた」との解説が載ります。
これは実は解説であって解説ではない、というのはなぜリスクオフとなったかの説明がないからです。
さて、今年の初め、1月6日付の日経新聞記事。
ここ(上記記事の左側)で、モルガンの佐々木氏が述べていたのは、一言でいうと、原油がこれだけ安くなっているのだから、日本が必要とするドル(=原油の支払いのために必要となるドル)は減るはず、というものです。
つまり(日本にとって)ドルの需要は減るというもの。
為替は金利差、購買力平価などいろいろな要因で動くのですが、売りと買いによって決まる以上、実需は無視できません。
ところで、一昨年6月から急速に下落してきた原油価格(下記)ですが、これはあくまでも先物価格であったりスポット価格であったりします。
実際に日本の石油精製会社や電力会社などが支払う原油やLNGの代金は長契の場合、これを前提としたフォーミュラ(算式)で(支払うべき)油価が決められています。
すなわちWTIの急速下落は、時間をおいて貿易収支の改善(赤字縮小)の効果を示すようになります(下記)。
(出所:時事ドットコム;『こちら』)
ということで、実際に貿易面で必要とされたドルは、2014年をピークに15年に入って減ってきたということが分かります。
(出所:時事ドットコム;『こちら』)
余談ですが、2月5日の第3四半期決算説明会でトヨタは、「16年1月以降の前提為替レート:米ドル115円」として、2016年3月期見通しを説明しました(『こちら』)。
従来は保守的と考えられていたトヨタの為替前提さえも上回るほどの円高が進み、トヨタの株価は下落。
2月1日には7300円を付けていたものが、現在5900円です。
PERは8倍になっています(日経平均のPERは14倍;『こちら』)。