アメリカGPOの実態とオバマ政権の医療改革について
2013年6月14日に国際医療福祉大学大学院乃木坂スクール「医療材料マネジメント講座・2013」で「アメリカGPOの実態とオバマ政権の医療改革について」と題して講演をしました。
当日の講演で資料として配布しましたスライドのPDFを添付します。
スライドに沿った講演に加えて、昨年、日本医療流通改善研究会の依頼でGPOの実態調査のために訪米した際に印象に残った次の3点にについて詳しく説明しました。
○ 一つは、同じ事態についての見方が、立場の違いで180度違うといったことはよくありますが、米国では、これが極端に分かれていて、実際のところはどうなのか、よほど時間を掛けて双方の意見をよく聞かないと調査にならないと言う点です。たとえば、GPOがイノベーションに強い中小の医療機器メーカーからの購入を阻害しているか否か。従来は阻害していないと言う病院とGPO側の話しか聞いていないので、今回はメーカーと中小メーカーの団体を訪ねましたところ、病院側とは真反対の主張に驚いた次第です。GAO(Government Accountability Office)という議会の調査機関が中立の立場で、双方の主張を踏まえたうえで比較的公平な見方をしていました。
○ 第2点は、大病院は機材や薬剤の調達にプロを配して、医師との対話に注力することが共同買購買の大前提になるということです。たとえば、コロンビア大学病院の調達部長Joshi氏の「経費の節減は医療の質とも絡むので、医師との対話は自分自身でやるしかない」という説明が印象的でした(スライド20;塩飽氏の要約を借用)。プロという点では、医療保険にしても、GEなどの大会社は自家保険(Captive Insurance)で行ない、管理事務のみを保険会社に委ねています。大病院の医療過誤保険も同様に自家保険で行なっていました。GPOの積極利用は中小の病院などが中心といった感じです。
○ 第3点は、MDMA(医療機器の業界団体)トップのEdo氏から聞いた「以前は日本に頻繁に行っていたが、最近は日本に行けなくなって寂しい」という発言でした。医療機器に関する限り、米国では“JapanNothing”といった状況になっています。中南米向けはFDA、欧州向けはEUの指定認証機関の承認が取得できれば数億人のマーケットに販売できるので、僅か1億人強で手間暇のかかる日本に売り込む必要はないということです。EU規格は33カ国で一斉に通用します。わが国も相互認証協定の締結を急ぐなど医療機器の審査承認は根本から見直す要があることを痛感しました。
(岡部陽二のホームページより)