自由への逃避
元旦0時から14時過ぎまでBSで一挙に再放送されていた『映像の世紀』。
今から20年以上前に放映された時も見たのですが、今回も録画して少しずつ見ました。
【第4集 ヒトラーの野望】
ヒトラーは大規模な公共事業を行い、600万人の失業者を、たちまち50万人に激減させました。
(以下、ドイツの元社会民主党員の手記より)
『人々はナチスに対し、全く無批判でした。
「精神の自由」など大多数の人々にとっては、価値のある概念では全くありませんでした。
ナチスに疑いを差し挟むと、次のように反論されました。
「ヒトラーが成し遂げたことをぜひ見て欲しい。
我々は今ではまた、以前と同じように大したものになっているのだから」
ヒトラーが失業問題を解決したことこそ、私達にとって重要な点だったのです』
* * * *
【第8集「恐怖の中の平和」】では、ネバダ核実験場で行われた原爆を使った軍事演習の場面が出てきます。
(原爆演習参加した兵士の回想)
『爆発の瞬間、辺りは真空状態の様に感じられた。
全てが死に絶えたように静まり返った。
そして猛烈に明るい光。
僕はとっさに手で目を覆った。
だがまるでX線を浴びた様に指の骨が白く透けて見えた。
・・・原爆を知るまで僕は健康的で無邪気な17歳の若者だった。
しかし爆発の瞬間、僕は悪魔の存在を想い以前の自分では無くなってしまった。
この世は死の世界と幸福の世界からできている。
それらは薄い膜で隔てられている。
僕はその膜を突き破り、死の世界を覗いてしまったのだ。
僕達は爆発の後前進し、強い放射能の中に入っていった。
この演習からまもなくして、僕の髪は抜け始めた』
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アメリカの核実験に参加した兵士は25~50万人。
現在もその多くは被ばくによる健康問題を抱えていると言います。
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【第9集「ベトナムの衝撃 アメリカ社会が揺らぎ始めた」】における米軍兵士の回想。
『不注意に頭を上げれば弾がひゅっと耳を掠める。
だけど、敵が見えない。
奴らはどこかにいて俺たちを見ている。
奴らは俺たちがどこに行くのかさえもちゃんとわかっている。
俺たちは常に敵の仕掛けた罠で犠牲を払っていたんだ。
作戦に出るときは長い列になって歩いていくんだ。
自分の足が踏もうとする地面を見つめながら、今日は誰が罠にかかるだろうか、やられるのは誰だろう、と思っている』
地雷を探すアメリカ兵の回想。
『誰が敵で、誰が味方なのか、見分けられない。
みんな同じように見えた。
着る物も同じだった。
みんなベトナム人だ。
その中にベトコンがいた。
村人は地雷が埋めてあることを知っていても、注意もしてくれない。
地雷を埋めたのは彼ら自身だったかもしれない。
フットボールの試合と違って、敵と味方が区別出来ないのだ。
周囲は敵だらけだった』
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映像を際立たせているのは、加古隆さんの音楽と山根基世さんのナレーション。
(『こちら』 の予告動画(2分間)で音楽やナレーションを聞くことが出来ます)
番組を見逃された方は、『こちら』 でDVDやブルーレイを入手することが出来ます。
NHKは数多くの秀逸な番組を作ってきましたが、なかでも 『映像の世紀』 は群を抜いているように思います。
(Hidetoshi Iwasaki’s Blog)