いま、英米を覆う民主主義の危機
はじめに:On September 24th, in New York
9月24日、国連総会に出席のためにNYに居合わせた二人、英国首相 ジョンソン氏、と米大統領 トランプ氏の二人は同じタイミングで、それも、自国の法律に違う行為を行ったとの事由で問われる‘屈辱の瞬間’を共にしたのです。
まずジョンソン氏。この7月 、‘何が何でも10月末に英国はEUから離脱する’ を公約とし、メイ前首相の後継として英国首相に就任。爾来、公約達成のためと強攻的な議会運営を進める中、議会でのBREXIT議論の進捗に苛立った彼は、そこでエリザベス女王に助言をし、9月10日から10月13日まで「議会閉会」を決めたのです。BREXITに係る議論の棚上げを狙うものでしたが9月24日、これが「違法」と最高裁は裁定したのです。(注:本訴訟はEU残留派のスコットランドの議員や弁護士らが起こしたもの)
つまり、「下院は国民の代表として、この大きな変化について意見を云う権利がある。この国への民主主義への影響は甚大だ」(ヘイル裁判長)として議会の停止は違法で、無効とするものでした。違法性が確定したことで、ジョンソン氏の政治的立場が一段と厳しくなるのは必至の処、ジョンソン氏は裁判結果には強く失望したとコメントしたものの、英議会は最高裁判決を受け、25日には再開。今回の判決で司法までが強権的な政権運営に待ったをかけたわけで、まさに‘Britain’s constitutional guardians strike back ’(Nicholas Reed Langen ,Sept. 26)、最高裁は英国の民主主義を守ったとされる処です。 一方のトランプ氏。9月24日、ペロシ米下院議長が、トランプ大統領の弾劾に向けた調査を開始すると公表したのです。理由は、7月下旬にトランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議し、米国の軍事支援の見返りに、ウクライナのガス会社で幹部を務めていたバイデン前副大統領の息子について調査するよう要請した事、そして、当該会話内容が安全保障に悪影響をもたらすと判断した情報当局者が監察官に内部告発した事で、疑惑が一気に浮上したと云うものですが、ペロシ氏が問題視したのは、国家情報長官代行が内部告発の内容について報告を拒否した点(日経9/25)とするものでした。更に、ペロシ氏は報告拒否を「法律違反」と断じると共に、「誰も法を超越できない」とする処です…