日本の安全保障を巡る二つの論理 ― 日米同盟の論理、日韓対立の論理
今、日本は国の安全保障を巡っての、二つの大きな問題に直面しています。
・日米安全保障条約は不公平?
まずその一つは日米安全保障に係るトランプ批判です。先のG20大阪サミットを前後して彼は日米安全保障条約は片務協定だ、「米国が攻撃されても日本は必ずしも助けてくれない」、日米安保は「不公平」だと(日経6月30日)、同じフレーズを繰り返し非難する処です。更にこれが「日本防衛のために米国の若者が死ぬことはあるが、逆がないのはおかしい」との発言となると米国民には「極めて当然の話」と映る処、2020年の大統領選対策も有之、これが繰り返されるとなると日本は窮地に追い込まれること必定と思料する処です。
実際、日本は「自国の防衛はひたすら米国依存」以外の選択肢を持ち合せない事情からは、遠からずトランプ氏の云い分を受け入れざるを得ないことになるのではと思料するのですが、彼のこの批判は日米同盟の今日的意味合いを問い質す契機ともなる処です。 つまり、戦後、日本の安全保障体制は日米同盟という名の下に語られ、その体制を担保するのが日米安全保障条約にほかならず、従ってトランプ氏の批判にどう応えていくかは、日米同盟の在り方を見直す一大政治プロジェクトにもなろうかというものです。
・日韓対立は韓国政府による日韓軍事協定破棄で
もう一つは深刻さ増す日韓の対立です。日本政府が韓国向け輸出に実施した規制の厳格化と更に8月2日には韓国をホワイト国対象から外したことで、文韓国大統領は、後述するように、この一連の対韓措置は、元徴用工訴訟の韓国大法院(最高裁)判決に対する安倍政権主導の「経済報復」と日本批判を繰り返す一方、文大統領主導型の反日運動が勢いづき、日韓関係は「政冷経冷」の状況すら呈する処、8月22日、韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことで、日韓対立は東アジアの安全保障問題にシフトされる処です。
― 目次 -
第1章 日米同盟の論理と、その行方 —-P. 3.
1. 日米同盟という名の日本の安全保障体制
(1)日米安保条約成立の経緯とその特異性
(2)日本の安全保障は米政権の政策選択の函数
2. 日米同盟を揺るがすトランプ政権
(1)「適正な防衛の対価」要求
(2)トランプ政権による拡大抑止の信頼性
3. 多国間連携強化こそ最大の安保戦略
・人口減少を見据えて
・TPP11の経験を踏まえて
第2章 日韓対立の論理と,その行方 —–P.8
1. 日韓対立の構図
(1)朝鮮日報が伝える日韓対立の真相
(2)‘安倍晋三vs 文在寅’が齎す日韓「政冷経冷」の危機
2.揺れる日米韓の安保連携
(1)日米韓の安保連携から逸脱(?)目指す文政権
(2)日韓関係の行方を占う三つのポイント
おわりに 参院選後の日本の政治 —-P. 13
-MMTとアベノミクス
そこで今回はこの2題に集中し、これまでの論考で触れてきたことのフォローアップを兼ね、以下の要領にて、論述することとします。まず、第1章ではトランプ氏の日米安保条約批判への対抗準備として、日米安保条約の成立の経緯と特異性、そして安全保障と米政権の政策選択との関係をレビューし、併せてトランプ氏の台頭が日米同盟を揺るがし出している現実をレビューすると共に、過半入手の防衛大教授の武田康弘氏の近著「日米同盟のコスト」を背に、グローバルな視点から今後の日本の安全保障の方向を探ることとします。第2章では、上述、日韓対立の構造を現地のメデイア情報にも照らしレビューし、今や韓国政府のGSOMIAの破棄決定で、日米韓の三角連携による安保体制が崩れかねない事態にある処、今後の推移について考察する事とします。処で8月1日、参院選後の国会が開催されました。安倍政権は如何なる責任ある政治を目指すのか、改めて問う事とします。